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第14話『犯人は…この中にいない!?』
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昼休みが終わっても――
青木真人のテンションは終わらなかった。
「よーし、捜査開始だッ!!まずは聞き込みからだな!」
教室中に響き渡る声。
彼の手には“名探偵ノート”(※相変わらずの自由帳)。
その表紙には、さっそく今日の日付と事件名が記されている。
【事件名】
怪盗ルパンの末裔による校内放送ジャック事件
【容疑者】
全校生徒(約600名)
【推理】
声が低かった=男。だが中学生には早すぎるトーン。つまりボイスチェンジャー?
【テンション】
120%
「まずは、昼休みに**“教室にいなかった人間”**から洗い出そう!」
「お前、テンションで捜査進めるのやめな?」
早紀があきれ顔で追いついてくる。
真人は教室中を回って、聞き込みを始めた。
「君、昼休みどこにいた!? トイレ? 何分間!? タイムカードある!?」
「え、無理、なんで追求されてるの俺!? 唐揚げ食ってただけだし!」
「おまえは!? 隣のクラスとメシ食ってた!? その証人は!? 合法唐揚げだったか!?」
「いや唐揚げの合法性いらんだろ!!」
しかし――調べてみると、どうも違和感がある。
「……ほとんどの生徒、教室にいたって言ってる……」
「当たり前でしょ、給食中なんだから」
「じゃあ犯人は、**教室にいなかった“唯一の人物”**ってことだ!」
「だから給食当番とかトイレとか保健室とか普通にあるでしょ」
「うぅ……なんかこう、もっと派手な証言が欲しい……」
そして、ふと思いつく。
「そうだ! 放送部だ!!」
「えっ、そこ行く? まさか、ほんとに放送部が……?」
「校内放送のことは“現場のプロ”に聞くのが基本だろ! よし、放送室に突入する!」
「いや許可取れよ」
放課後。
放送室の前。真人と早紀は、放送部の女子部長・佐野さんに話を聞くことに成功した。
「ああ、今日のお昼のあれね……こっちもびっくりしたのよ」
「ということは、やっぱり……放送部の仕業じゃないのか?」
「うん。実はあれ、放送部のマイクからは流れてないのよ」
「え?」
「いつものお昼の放送は、部室からここのパネルで流すんだけど……あの怪盗ルパンの声、別系統のマイクから勝手に割り込まれた感じだったの」
「なにぃぃぃぃ!?!? ってことは、これは……ハッキング!!」
「いやアナログ接続だから、そういうんじゃないと思うけど……」
佐野さんはちょっと苦笑しながら、続けた。
「おそらく“どこかの教室にある旧放送端末”とか、非常用マイクを使ったんじゃないかな。そういうの、音楽室とか資料室にあるやつ」
「つまり……あの放送、“裏ルート”から流された”ってことか……!」
真人の脳内には、BGMが流れ始めた。
ちゃららら~ん(某怪盗風)
「“怪盗”、マジで名乗るだけのことはあるな……」
「演出にこだわりすぎだろ……」
「もはや俺へのラブレターかもしれんな」
「ちがう」
教室に戻る途中、真人は真剣な表情でつぶやいた。
「今までのイタズラとは、レベルが違う……これは本気だ。俺という“名探偵”を名指ししてきた挑戦状。しかも堂々と校内放送を使って……!」
「でもちょっとだけ気になるわね」
早紀が珍しく、少しだけ眉をひそめて言った。
「何が?」
「“名探偵くん”って言ったでしょ、犯人」
「うん、言ってたな」
「……それ、あんたのこと、知ってるってことよね? 単なるイタズラじゃなくて、**“あんたを知ってる誰か”が仕掛けた”**ってことになる」
「っ!!」
青木真人、初めて静かになる。
「……もしかして……この学年じゃない……?」
「その可能性、出てきたわね。だって昼休み、同学年の生徒ほぼ全員が教室にいた」
「じゃあ犯人は……他の学年!? え、待って、全校調査!?」
「やめろ、死ぬぞ」
そのとき――
「えええ!? 真人くん、もしかして……“学年を越えた恋の始まり”ですか!?」
唐突に増渕先生が現れて、どこから聞いてたのか謎のテンションで参戦。
「ちがう!怪盗だってば! 犯人は“怪盗ルパンの末裔”だってば!」
「え~!?でもなんか素敵じゃないですかぁ♡ “ルパン”って響きが! 先生も“怪盗ますぶち”って名乗っていいですかぁ~?」
「だめです!!!」
──こうして、青木真人は事件のスケールが“同学年”を越えたことを認識する。
名探偵の火は、ますます燃え上がっていた。
「犯人は……俺を名指しで挑発してきた。これはただの遊びじゃない」
そして彼は静かにノートに書き記した。
【怪盗の正体は、同学年にはいない】
【放送部は無関係】
【声はボイスチェンジャーの可能性あり】
【つまり、犯人は“放送設備に詳しい者”+“俺を知ってる誰か”】
その時、廊下の奥。図書室の前。
ひとりの小柄な女子生徒が、廊下の影からその様子をじっと見つめていた。
制服の袖からちらりと見えるのは――自作らしき小型の音声機器。
その子はそっと、口元で微笑んだ。
「やっぱり面白いな、“名探偵くん”って」
(つづく)
青木真人のテンションは終わらなかった。
「よーし、捜査開始だッ!!まずは聞き込みからだな!」
教室中に響き渡る声。
彼の手には“名探偵ノート”(※相変わらずの自由帳)。
その表紙には、さっそく今日の日付と事件名が記されている。
【事件名】
怪盗ルパンの末裔による校内放送ジャック事件
【容疑者】
全校生徒(約600名)
【推理】
声が低かった=男。だが中学生には早すぎるトーン。つまりボイスチェンジャー?
【テンション】
120%
「まずは、昼休みに**“教室にいなかった人間”**から洗い出そう!」
「お前、テンションで捜査進めるのやめな?」
早紀があきれ顔で追いついてくる。
真人は教室中を回って、聞き込みを始めた。
「君、昼休みどこにいた!? トイレ? 何分間!? タイムカードある!?」
「え、無理、なんで追求されてるの俺!? 唐揚げ食ってただけだし!」
「おまえは!? 隣のクラスとメシ食ってた!? その証人は!? 合法唐揚げだったか!?」
「いや唐揚げの合法性いらんだろ!!」
しかし――調べてみると、どうも違和感がある。
「……ほとんどの生徒、教室にいたって言ってる……」
「当たり前でしょ、給食中なんだから」
「じゃあ犯人は、**教室にいなかった“唯一の人物”**ってことだ!」
「だから給食当番とかトイレとか保健室とか普通にあるでしょ」
「うぅ……なんかこう、もっと派手な証言が欲しい……」
そして、ふと思いつく。
「そうだ! 放送部だ!!」
「えっ、そこ行く? まさか、ほんとに放送部が……?」
「校内放送のことは“現場のプロ”に聞くのが基本だろ! よし、放送室に突入する!」
「いや許可取れよ」
放課後。
放送室の前。真人と早紀は、放送部の女子部長・佐野さんに話を聞くことに成功した。
「ああ、今日のお昼のあれね……こっちもびっくりしたのよ」
「ということは、やっぱり……放送部の仕業じゃないのか?」
「うん。実はあれ、放送部のマイクからは流れてないのよ」
「え?」
「いつものお昼の放送は、部室からここのパネルで流すんだけど……あの怪盗ルパンの声、別系統のマイクから勝手に割り込まれた感じだったの」
「なにぃぃぃぃ!?!? ってことは、これは……ハッキング!!」
「いやアナログ接続だから、そういうんじゃないと思うけど……」
佐野さんはちょっと苦笑しながら、続けた。
「おそらく“どこかの教室にある旧放送端末”とか、非常用マイクを使ったんじゃないかな。そういうの、音楽室とか資料室にあるやつ」
「つまり……あの放送、“裏ルート”から流された”ってことか……!」
真人の脳内には、BGMが流れ始めた。
ちゃららら~ん(某怪盗風)
「“怪盗”、マジで名乗るだけのことはあるな……」
「演出にこだわりすぎだろ……」
「もはや俺へのラブレターかもしれんな」
「ちがう」
教室に戻る途中、真人は真剣な表情でつぶやいた。
「今までのイタズラとは、レベルが違う……これは本気だ。俺という“名探偵”を名指ししてきた挑戦状。しかも堂々と校内放送を使って……!」
「でもちょっとだけ気になるわね」
早紀が珍しく、少しだけ眉をひそめて言った。
「何が?」
「“名探偵くん”って言ったでしょ、犯人」
「うん、言ってたな」
「……それ、あんたのこと、知ってるってことよね? 単なるイタズラじゃなくて、**“あんたを知ってる誰か”が仕掛けた”**ってことになる」
「っ!!」
青木真人、初めて静かになる。
「……もしかして……この学年じゃない……?」
「その可能性、出てきたわね。だって昼休み、同学年の生徒ほぼ全員が教室にいた」
「じゃあ犯人は……他の学年!? え、待って、全校調査!?」
「やめろ、死ぬぞ」
そのとき――
「えええ!? 真人くん、もしかして……“学年を越えた恋の始まり”ですか!?」
唐突に増渕先生が現れて、どこから聞いてたのか謎のテンションで参戦。
「ちがう!怪盗だってば! 犯人は“怪盗ルパンの末裔”だってば!」
「え~!?でもなんか素敵じゃないですかぁ♡ “ルパン”って響きが! 先生も“怪盗ますぶち”って名乗っていいですかぁ~?」
「だめです!!!」
──こうして、青木真人は事件のスケールが“同学年”を越えたことを認識する。
名探偵の火は、ますます燃え上がっていた。
「犯人は……俺を名指しで挑発してきた。これはただの遊びじゃない」
そして彼は静かにノートに書き記した。
【怪盗の正体は、同学年にはいない】
【放送部は無関係】
【声はボイスチェンジャーの可能性あり】
【つまり、犯人は“放送設備に詳しい者”+“俺を知ってる誰か”】
その時、廊下の奥。図書室の前。
ひとりの小柄な女子生徒が、廊下の影からその様子をじっと見つめていた。
制服の袖からちらりと見えるのは――自作らしき小型の音声機器。
その子はそっと、口元で微笑んだ。
「やっぱり面白いな、“名探偵くん”って」
(つづく)
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