面白ミステリー『名探偵マコトの事件簿2』

naomikoryo

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第54話『誰が置いた?証拠は粘土にあり!?』

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文化祭2日目――放課後。

イベントでにぎわった校舎も、だんだんと静かさを取り戻していく。
舞台の片付けや教室展示の撤収が進む中。

 
「――今だ」

 
マコトとことりは、保健室の前に立っていた。

 
ことり:「放課後の見回りが始まる前、ここが一番静かになる」
「誰もいないうちに、入るわよ」

 
マコト:「ちょっとドキドキしてきた……!」
 

ことり:「文化祭で一番“非文化的”な活動してる自覚はある?」
 

「ぐぬぬ……!」
 

2人はそっと保健室のドアを開け、中に滑り込んだ。

◆【保健室:夜の潜入調査】

普段は静かで落ち着いた空間も、
薄暗い照明の中では、なにやら妙に緊張感が漂う。

ベッドが並ぶ奥、薬品棚、冷蔵庫。
そして、その隅――

 
ことり:「あった」

 
彼女が指さしたのは、使用済みの粘土のかけらが詰まったビニール袋だった。

中には、茶色と灰色が混ざったような油粘土の破片。
そして――その下に、教頭先生の顔写真が切り取られたプリント紙!

 
マコト:「うわあぁぁああああッ!? 完全に証拠じゃん!!」

 
ことり:「あとこれも」
 

引き出しの中から取り出されたのは、
小学生用の粘土ベラ、彫刻用のカッター、そして“紙で作られた型取りの土台”。
 

ことり:「……使い慣れてない手付きで、
頑張って“顔”を成形しようとした跡がある」
 

マコト:「ここが――教頭お面の制作現場……!!」

 
さらに奥の棚に、名前入りの紙袋があった。

【◯◯先生 私物:開けるな】

→ 書かれていた名前は――

 
「佐伯 ほのか(保健の先生)」
 

マコト:「……せ、せ、先生……!?」

 
ことり:「これは……もう、ほぼ確定ね」

◆【謎の動機を追う】

ことり:「でも、ひとつ問題がある」
 

「――“なぜ保健の先生が、教頭の顔を作るの?”って話よ」

 
マコト:「確かに。いたずらにしては真剣すぎるし、嫌がらせにしては完成度が優しすぎる……」
 

ふと、机の上に置かれたメモ帳に目が留まる。

 
中には、保健室でのちょっとした出来事が書き留められていた。

 
『文化祭……生徒たちがキラキラしていて眩しい』
『教頭先生、あの人ほんとはすごく優しい。もっと目立っていい人だと思う』
『ワタシにできることって、何だろう』
 

マコト:「……え?」

 
ことり:「……これって」

 
マコト:「もしかして――応援?」

 

ことり:「……“目立たせてあげたかった”ってこと?」

◆【静かな気づき】

ことり:「本気で人の顔を作るって、普通じゃないわ。
でもこれは……“誰かのことを一生懸命観察した”人にしかできない」
 

マコト:「たしかに……最初は怖かったけど、あの粘土の顔、
ちゃんと“似てる”んだよな……。それって、想いがなきゃできないよ」

 
ことり:「……動機は“いたずら”じゃない。
きっと、ちょっと不器用な“好意”よ」
 

マコトは、名探偵ノートを開く。

【犯人】:保健の佐伯先生
【動機】:教頭先生を目立たせたいという、善意……というか謎の情熱
【凶器(?)】:粘土、写真、彫刻ヘラ
【被害者】:教頭(驚いたけど、ちょっと嬉しそうだった)

 
マコト:「芸術って、深い……!」

 
ことり:「今回は“事件”っていうより、“心の解剖”って感じね」

 
マコト:「名言出たぁぁぁああ!!!」

◆【教頭、展示を見つめながら】

後日、展示が片付けられる直前。
教頭先生が一人、その粘土面を静かに見つめていた。
 

「……こんなふうに思ってくれてた人がいたのね。
なんだか、ちょっと照れるわね」
 

その目は、すこし潤んでいた。

 
そして、粘土面はそっと段ボールに入れられ――
教頭室の奥、ひっそりと保管されることになったという。 

(つづく)
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