54 / 85
第54話『誰が置いた?証拠は粘土にあり!?』
しおりを挟む
文化祭2日目――放課後。
イベントでにぎわった校舎も、だんだんと静かさを取り戻していく。
舞台の片付けや教室展示の撤収が進む中。
「――今だ」
マコトとことりは、保健室の前に立っていた。
ことり:「放課後の見回りが始まる前、ここが一番静かになる」
「誰もいないうちに、入るわよ」
マコト:「ちょっとドキドキしてきた……!」
ことり:「文化祭で一番“非文化的”な活動してる自覚はある?」
「ぐぬぬ……!」
2人はそっと保健室のドアを開け、中に滑り込んだ。
◆【保健室:夜の潜入調査】
普段は静かで落ち着いた空間も、
薄暗い照明の中では、なにやら妙に緊張感が漂う。
ベッドが並ぶ奥、薬品棚、冷蔵庫。
そして、その隅――
ことり:「あった」
彼女が指さしたのは、使用済みの粘土のかけらが詰まったビニール袋だった。
中には、茶色と灰色が混ざったような油粘土の破片。
そして――その下に、教頭先生の顔写真が切り取られたプリント紙!
マコト:「うわあぁぁああああッ!? 完全に証拠じゃん!!」
ことり:「あとこれも」
引き出しの中から取り出されたのは、
小学生用の粘土ベラ、彫刻用のカッター、そして“紙で作られた型取りの土台”。
ことり:「……使い慣れてない手付きで、
頑張って“顔”を成形しようとした跡がある」
マコト:「ここが――教頭お面の制作現場……!!」
さらに奥の棚に、名前入りの紙袋があった。
【◯◯先生 私物:開けるな】
→ 書かれていた名前は――
「佐伯 ほのか(保健の先生)」
マコト:「……せ、せ、先生……!?」
ことり:「これは……もう、ほぼ確定ね」
◆【謎の動機を追う】
ことり:「でも、ひとつ問題がある」
「――“なぜ保健の先生が、教頭の顔を作るの?”って話よ」
マコト:「確かに。いたずらにしては真剣すぎるし、嫌がらせにしては完成度が優しすぎる……」
ふと、机の上に置かれたメモ帳に目が留まる。
中には、保健室でのちょっとした出来事が書き留められていた。
『文化祭……生徒たちがキラキラしていて眩しい』
『教頭先生、あの人ほんとはすごく優しい。もっと目立っていい人だと思う』
『ワタシにできることって、何だろう』
マコト:「……え?」
ことり:「……これって」
マコト:「もしかして――応援?」
ことり:「……“目立たせてあげたかった”ってこと?」
◆【静かな気づき】
ことり:「本気で人の顔を作るって、普通じゃないわ。
でもこれは……“誰かのことを一生懸命観察した”人にしかできない」
マコト:「たしかに……最初は怖かったけど、あの粘土の顔、
ちゃんと“似てる”んだよな……。それって、想いがなきゃできないよ」
ことり:「……動機は“いたずら”じゃない。
きっと、ちょっと不器用な“好意”よ」
マコトは、名探偵ノートを開く。
【犯人】:保健の佐伯先生
【動機】:教頭先生を目立たせたいという、善意……というか謎の情熱
【凶器(?)】:粘土、写真、彫刻ヘラ
【被害者】:教頭(驚いたけど、ちょっと嬉しそうだった)
マコト:「芸術って、深い……!」
ことり:「今回は“事件”っていうより、“心の解剖”って感じね」
マコト:「名言出たぁぁぁああ!!!」
◆【教頭、展示を見つめながら】
後日、展示が片付けられる直前。
教頭先生が一人、その粘土面を静かに見つめていた。
「……こんなふうに思ってくれてた人がいたのね。
なんだか、ちょっと照れるわね」
その目は、すこし潤んでいた。
そして、粘土面はそっと段ボールに入れられ――
教頭室の奥、ひっそりと保管されることになったという。
(つづく)
イベントでにぎわった校舎も、だんだんと静かさを取り戻していく。
舞台の片付けや教室展示の撤収が進む中。
「――今だ」
マコトとことりは、保健室の前に立っていた。
ことり:「放課後の見回りが始まる前、ここが一番静かになる」
「誰もいないうちに、入るわよ」
マコト:「ちょっとドキドキしてきた……!」
ことり:「文化祭で一番“非文化的”な活動してる自覚はある?」
「ぐぬぬ……!」
2人はそっと保健室のドアを開け、中に滑り込んだ。
◆【保健室:夜の潜入調査】
普段は静かで落ち着いた空間も、
薄暗い照明の中では、なにやら妙に緊張感が漂う。
ベッドが並ぶ奥、薬品棚、冷蔵庫。
そして、その隅――
ことり:「あった」
彼女が指さしたのは、使用済みの粘土のかけらが詰まったビニール袋だった。
中には、茶色と灰色が混ざったような油粘土の破片。
そして――その下に、教頭先生の顔写真が切り取られたプリント紙!
マコト:「うわあぁぁああああッ!? 完全に証拠じゃん!!」
ことり:「あとこれも」
引き出しの中から取り出されたのは、
小学生用の粘土ベラ、彫刻用のカッター、そして“紙で作られた型取りの土台”。
ことり:「……使い慣れてない手付きで、
頑張って“顔”を成形しようとした跡がある」
マコト:「ここが――教頭お面の制作現場……!!」
さらに奥の棚に、名前入りの紙袋があった。
【◯◯先生 私物:開けるな】
→ 書かれていた名前は――
「佐伯 ほのか(保健の先生)」
マコト:「……せ、せ、先生……!?」
ことり:「これは……もう、ほぼ確定ね」
◆【謎の動機を追う】
ことり:「でも、ひとつ問題がある」
「――“なぜ保健の先生が、教頭の顔を作るの?”って話よ」
マコト:「確かに。いたずらにしては真剣すぎるし、嫌がらせにしては完成度が優しすぎる……」
ふと、机の上に置かれたメモ帳に目が留まる。
中には、保健室でのちょっとした出来事が書き留められていた。
『文化祭……生徒たちがキラキラしていて眩しい』
『教頭先生、あの人ほんとはすごく優しい。もっと目立っていい人だと思う』
『ワタシにできることって、何だろう』
マコト:「……え?」
ことり:「……これって」
マコト:「もしかして――応援?」
ことり:「……“目立たせてあげたかった”ってこと?」
◆【静かな気づき】
ことり:「本気で人の顔を作るって、普通じゃないわ。
でもこれは……“誰かのことを一生懸命観察した”人にしかできない」
マコト:「たしかに……最初は怖かったけど、あの粘土の顔、
ちゃんと“似てる”んだよな……。それって、想いがなきゃできないよ」
ことり:「……動機は“いたずら”じゃない。
きっと、ちょっと不器用な“好意”よ」
マコトは、名探偵ノートを開く。
【犯人】:保健の佐伯先生
【動機】:教頭先生を目立たせたいという、善意……というか謎の情熱
【凶器(?)】:粘土、写真、彫刻ヘラ
【被害者】:教頭(驚いたけど、ちょっと嬉しそうだった)
マコト:「芸術って、深い……!」
ことり:「今回は“事件”っていうより、“心の解剖”って感じね」
マコト:「名言出たぁぁぁああ!!!」
◆【教頭、展示を見つめながら】
後日、展示が片付けられる直前。
教頭先生が一人、その粘土面を静かに見つめていた。
「……こんなふうに思ってくれてた人がいたのね。
なんだか、ちょっと照れるわね」
その目は、すこし潤んでいた。
そして、粘土面はそっと段ボールに入れられ――
教頭室の奥、ひっそりと保管されることになったという。
(つづく)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる