65 / 85
第65話『パンが日常に溶けてきた頃、ルバン家のさらなる謎』
しおりを挟む
2年2組、朝。
「チーン♪」
今日も鳴り響く、オーブンの音。
マコト:「……もう誰もツッコまねぇな」
隣の男子:「クロワッサン、カリッとしてて神」
隣の女子:「チョコのやつマジ最高。毎朝ありがとう、ことりん」
ことり:「“ことりん”……新しい称号ですね。悪くないです」
マコト:「そこ乗るなよ!てか誰も止めねぇのおかしいでしょ!?
先生も黙認だし、クラスの空気もうパン屋支部じゃん!?」
増渕先生:「うふふ♡“パンと共にある学級”ってステキよねぇ♡」
「次は“道徳とブリオッシュ”なんてどうかしら~♡」
マコト:「授業内容の方向性まで焼き立てパン寄りになってるゥゥ!!」
◆【そして、パンと共にある昼休み】
この日のお昼休み。
ことりが“ルバン家の家系資料”をまとめてきたというので、
マコトと早紀、美穂が家庭科室(空いてた)に集められる。
ことり:「見てください、これが祖父の残した家系ノートの最後のページです」
早紀:「……あっ、またルバンって書いてある」
マコト:「もう確定だろ。“ルパン”じゃなくて“ルバン”って。
読み間違いだったんだよ、やっぱ」
ことり:「はい、それは認めます。私の10年間に渡る大いなる勘違いでした」
マコト:「なんで逆に堂々としてんだよ!」
ことり:「ですが――ここ、注目してください」
ことりが指をさしたその行には、こう書かれていた。
『ルバン家第十二代当主・アデル・ルバン
パリ郊外にて“情報をパンに隠し届ける”暗号伝達術を完成』
全員:「……えっ!?」
美穂:「情報を……パンに?」
ことり:「そう。どうやら本当に、“怪盗”ではないけれど、
密偵的なことをしていたらしいです。戦時中、パンの中に情報を隠してたとか」
マコト:「つまり……“情報パン屋”だったのか!?」
早紀:「もうなんなのその職業!!!」
◆【マコト、覚醒しかける】
マコト:「でもそれって、ある意味“探偵の先祖”って感じじゃないか……!?」
ことり:「ええ、私、パンを焼いて伝える者の末裔だったんです」
マコト:「つまり俺は――
そのパンのメッセージを読み解くパン探偵……!?」
早紀:「落ち着け」
美穂:「ていうか“パン探偵”ってなに……」
ことり:「ふふ、先輩……今朝お渡ししたあのパン、ちゃんと断面見ました?」
マコト:「えっ!?あのベーグル!?普通にうまかったけど!?」
ことり:「“M”って文字が浮かぶように焼いておきました」
マコト:「うおおおお!?そんな伏線が!?オレ、完全にスルーしてた!!」
早紀:「……というか、“M”って……自分の名前のイニシャルじゃないの?」
ことり:「ええ、“名探偵マコト”のMですから」
マコト:「……ちょっと感動してる自分が悔しいッ!!」
◆【そして放課後】
マコトは校庭で空を見上げながら、
さっき食べたベーグルの最後の一口をかみしめていた。
マコト:「怪盗じゃなくても……
パン屋の末裔でも……
ことりは、やっぱすげーな」
隣にはことり。
彼女はパンの匂いをまといながら、微笑んでいた。
ことり:「……先輩も、すごいですよ。“焼きたてのパン”より、ちゃんとあったかい」
マコト:「お、お前なに言ってんだ!?恥ずかしいだろ!?」
ことり:「じゃあ、パンと一緒に焼かれてください」
マコト:「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!」
そしてまた、パンと謎とツッコミに包まれながら――
次の“事件”の香りが、ふわりと教室にただよい始めていた。
(つづく)
「チーン♪」
今日も鳴り響く、オーブンの音。
マコト:「……もう誰もツッコまねぇな」
隣の男子:「クロワッサン、カリッとしてて神」
隣の女子:「チョコのやつマジ最高。毎朝ありがとう、ことりん」
ことり:「“ことりん”……新しい称号ですね。悪くないです」
マコト:「そこ乗るなよ!てか誰も止めねぇのおかしいでしょ!?
先生も黙認だし、クラスの空気もうパン屋支部じゃん!?」
増渕先生:「うふふ♡“パンと共にある学級”ってステキよねぇ♡」
「次は“道徳とブリオッシュ”なんてどうかしら~♡」
マコト:「授業内容の方向性まで焼き立てパン寄りになってるゥゥ!!」
◆【そして、パンと共にある昼休み】
この日のお昼休み。
ことりが“ルバン家の家系資料”をまとめてきたというので、
マコトと早紀、美穂が家庭科室(空いてた)に集められる。
ことり:「見てください、これが祖父の残した家系ノートの最後のページです」
早紀:「……あっ、またルバンって書いてある」
マコト:「もう確定だろ。“ルパン”じゃなくて“ルバン”って。
読み間違いだったんだよ、やっぱ」
ことり:「はい、それは認めます。私の10年間に渡る大いなる勘違いでした」
マコト:「なんで逆に堂々としてんだよ!」
ことり:「ですが――ここ、注目してください」
ことりが指をさしたその行には、こう書かれていた。
『ルバン家第十二代当主・アデル・ルバン
パリ郊外にて“情報をパンに隠し届ける”暗号伝達術を完成』
全員:「……えっ!?」
美穂:「情報を……パンに?」
ことり:「そう。どうやら本当に、“怪盗”ではないけれど、
密偵的なことをしていたらしいです。戦時中、パンの中に情報を隠してたとか」
マコト:「つまり……“情報パン屋”だったのか!?」
早紀:「もうなんなのその職業!!!」
◆【マコト、覚醒しかける】
マコト:「でもそれって、ある意味“探偵の先祖”って感じじゃないか……!?」
ことり:「ええ、私、パンを焼いて伝える者の末裔だったんです」
マコト:「つまり俺は――
そのパンのメッセージを読み解くパン探偵……!?」
早紀:「落ち着け」
美穂:「ていうか“パン探偵”ってなに……」
ことり:「ふふ、先輩……今朝お渡ししたあのパン、ちゃんと断面見ました?」
マコト:「えっ!?あのベーグル!?普通にうまかったけど!?」
ことり:「“M”って文字が浮かぶように焼いておきました」
マコト:「うおおおお!?そんな伏線が!?オレ、完全にスルーしてた!!」
早紀:「……というか、“M”って……自分の名前のイニシャルじゃないの?」
ことり:「ええ、“名探偵マコト”のMですから」
マコト:「……ちょっと感動してる自分が悔しいッ!!」
◆【そして放課後】
マコトは校庭で空を見上げながら、
さっき食べたベーグルの最後の一口をかみしめていた。
マコト:「怪盗じゃなくても……
パン屋の末裔でも……
ことりは、やっぱすげーな」
隣にはことり。
彼女はパンの匂いをまといながら、微笑んでいた。
ことり:「……先輩も、すごいですよ。“焼きたてのパン”より、ちゃんとあったかい」
マコト:「お、お前なに言ってんだ!?恥ずかしいだろ!?」
ことり:「じゃあ、パンと一緒に焼かれてください」
マコト:「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!」
そしてまた、パンと謎とツッコミに包まれながら――
次の“事件”の香りが、ふわりと教室にただよい始めていた。
(つづく)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる