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第12話「“記憶の揺れ”を感じた快が、無意識に剣を描く」
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「今日も元気に配達っすよぉおおおおお!!」
朝8時。
さくらハイツの303号室から飛び出す筋肉の塊──大山快(元・勇者カイ・ディアノス)。
彼はいつものように元気に、そして理不尽なほど爽やかに玄関を飛び出した。
愛用のママチャリ(改造済)は今日も快調。
今日の目標は、午前中で6件配りきること。
ただ、今日はなんだか様子がおかしかった。
「……なんだろ、肩がムズムズする」
筋肉痛ではない。張りでもない。
どこか、こう……背中の奥の方が、“何かを構えたがってる”ような、そんな妙な感覚。
「昨日、変な夢見たからかな……」
夢──そう、昨夜。
快は夢の中で、炎の中に立っていた。
手には、長く輝く剣。
鋼鉄のごとき風を切り、敵と斬り結んでいた。
そして、横にいた誰かにこう言われたのだ。
「カイ……剣を振るう覚悟は、もうあるか?」
──カイ?
──誰だよそれ?
目が覚めた時、快は妙に汗をかいていて、
しかも枕元にはなぜか新聞紙で折られた剣のような何かが落ちていた。
「……あれ、寝ぼけて俺が折ったのかな……?」
◇ ◇ ◇
そんなわけで、午前の配達を終えた快は、町の公園で休憩中。
ベンチに座って、プロテイン入りの青汁(自作)を飲みながら、
ふと手にした落書き帳をめくった。
元々、思いついた筋トレ法や配達ルートをメモしておく用だが、
今日は無意識にページをめくり、ペンを走らせていた。
シャッ、シャッ……カキッ。
スッ、スッ、グッ……
「……えっ、これ……」
描いていたのは──一本の剣。
長く、少し湾曲し、中央に一本の魔力脈動のようなラインが走っている。
柄には紋章のような模様。
まるで“誰か”の意志を持ったかのような──威厳ある剣。
「……こんなの、いつ見た……?」
思い出せない。
けれど、手が勝手に動いて描いた。
線も迷いがなく、完璧に“知っているもの”を再現したような正確さ。
「……なんか……名前、あったような……」
手が自然にページの余白にこう書いた。
──《エス=ルディア》
「……え、なにこれ」
ペンを置くと同時に、頭がズキッと痛んだ。
──一瞬だけ、頭の中に“剣を振るう自分”の映像が流れる。
風のように走り、光のように切り裂き、
目の前に現れた巨大な影を一刀両断する──そんな“英雄譚”。
「えっ……マジで? え? 俺、何?中二病こじらせてんの?」
周囲には誰もいない。
ただ風がひとすじ、落書き帳のページをパラパラとめくった。
「……まさかな。オレが、剣の勇者だったなんて」
でも──
ページに書いたその剣の名前は、しっかりと手に染みついた記憶のように、彼の脳裏に刻まれていた。
彼はページを閉じて、立ち上がる。
「……いやいやいやいやいや、違う違う!!
オレはただの筋肉配達員っす!!」
空に向かって叫びながら、ママチャリにまたがった。
だが──その背中には、“見えない剣”が背負われたままだった。
◇ ◇ ◇
その夜。
303号室の壁一面に貼られた筋トレポスターのひとつが、
夜風で“ビリッ”と破れた。
剥がれた下には、古いカレンダー。
そこには、なぜか魔法文字でこう書かれていた。
《聖剣の主、目覚めの刻近し》
(続く)
朝8時。
さくらハイツの303号室から飛び出す筋肉の塊──大山快(元・勇者カイ・ディアノス)。
彼はいつものように元気に、そして理不尽なほど爽やかに玄関を飛び出した。
愛用のママチャリ(改造済)は今日も快調。
今日の目標は、午前中で6件配りきること。
ただ、今日はなんだか様子がおかしかった。
「……なんだろ、肩がムズムズする」
筋肉痛ではない。張りでもない。
どこか、こう……背中の奥の方が、“何かを構えたがってる”ような、そんな妙な感覚。
「昨日、変な夢見たからかな……」
夢──そう、昨夜。
快は夢の中で、炎の中に立っていた。
手には、長く輝く剣。
鋼鉄のごとき風を切り、敵と斬り結んでいた。
そして、横にいた誰かにこう言われたのだ。
「カイ……剣を振るう覚悟は、もうあるか?」
──カイ?
──誰だよそれ?
目が覚めた時、快は妙に汗をかいていて、
しかも枕元にはなぜか新聞紙で折られた剣のような何かが落ちていた。
「……あれ、寝ぼけて俺が折ったのかな……?」
◇ ◇ ◇
そんなわけで、午前の配達を終えた快は、町の公園で休憩中。
ベンチに座って、プロテイン入りの青汁(自作)を飲みながら、
ふと手にした落書き帳をめくった。
元々、思いついた筋トレ法や配達ルートをメモしておく用だが、
今日は無意識にページをめくり、ペンを走らせていた。
シャッ、シャッ……カキッ。
スッ、スッ、グッ……
「……えっ、これ……」
描いていたのは──一本の剣。
長く、少し湾曲し、中央に一本の魔力脈動のようなラインが走っている。
柄には紋章のような模様。
まるで“誰か”の意志を持ったかのような──威厳ある剣。
「……こんなの、いつ見た……?」
思い出せない。
けれど、手が勝手に動いて描いた。
線も迷いがなく、完璧に“知っているもの”を再現したような正確さ。
「……なんか……名前、あったような……」
手が自然にページの余白にこう書いた。
──《エス=ルディア》
「……え、なにこれ」
ペンを置くと同時に、頭がズキッと痛んだ。
──一瞬だけ、頭の中に“剣を振るう自分”の映像が流れる。
風のように走り、光のように切り裂き、
目の前に現れた巨大な影を一刀両断する──そんな“英雄譚”。
「えっ……マジで? え? 俺、何?中二病こじらせてんの?」
周囲には誰もいない。
ただ風がひとすじ、落書き帳のページをパラパラとめくった。
「……まさかな。オレが、剣の勇者だったなんて」
でも──
ページに書いたその剣の名前は、しっかりと手に染みついた記憶のように、彼の脳裏に刻まれていた。
彼はページを閉じて、立ち上がる。
「……いやいやいやいやいや、違う違う!!
オレはただの筋肉配達員っす!!」
空に向かって叫びながら、ママチャリにまたがった。
だが──その背中には、“見えない剣”が背負われたままだった。
◇ ◇ ◇
その夜。
303号室の壁一面に貼られた筋トレポスターのひとつが、
夜風で“ビリッ”と破れた。
剥がれた下には、古いカレンダー。
そこには、なぜか魔法文字でこう書かれていた。
《聖剣の主、目覚めの刻近し》
(続く)
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