自称25歳、実年齢は250歳の魔女

naomikoryo

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第13話「ルーナ、配達中の快と偶然出会い、彼の落書きを見て青ざめる」

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昼下がり。
風はやや強め。空は晴れ。アパートの住人たちはそれぞれの用事に出かけていた。

ルーナは、街のドラッグストアの帰り道だった。
手にはセールのキッチンペーパーと猫砂。

「……重い……地味に重い……あと地味にデカい……」

 

すでに右腕は悲鳴を上げかけている。

──と、交差点の角で、何かと何かがドンッ!とぶつかった。

 

「あべっ!? す、すいませんっ!! って、あれ? 藤原さーん!?」

「おわっ!? お前か!!びっくりしたわ筋肉バイク!!」

「バイクじゃないっす!生足駆動っす!!」

 

汗だくで巨大なリュックを背負った大山快(配達中)と、
抱えてた荷物が崩れ落ちた藤原ルーナ(買い出し帰り)。

荷物を拾いながら、快がふとポケットからノートを落とした。

 

「あー!それオレの筋トレメモっす!」

「ほう。どれどれ、何書いてんの。『火曜日:肩トレ+坂道ダッシュ』……ふむふむ……『夜:プロテイン風呂』……風呂ォ!?ていうかそれ飲むもんじゃ……」

「まぁ読まれて恥ずかしい内容は……」

パラ……とノートのページが風にめくられた。

その次のページに、ルーナの目が吸い寄せられた。

 

「……え?」

 

「……あっ、それただのラクガ──」

 

「……待って」

 

ルーナの声が、低くなる。

そこには──剣のスケッチ。

長く、美しい。
柄には装飾があり、刃には波紋のような魔力のライン。
そして、横に書かれていた一行。

 

《エス=ルディア》

 

ルーナの手がピタリと止まった。

その名前──その剣の名は、彼女の中で“最も深い記憶のひとつ”だった。

昔、まだ世界が幾重にも別れていたころ。

ある戦場で、彼女はひとりの剣士と背中を預けて戦っていた。

彼が掲げた剣──それが、「エス=ルディア」。

そして、その剣士の名は──

(カイ……)

(勇者……カイ・ディアノス)

 

──目の前の筋肉バカの顔が、フラッシュバックの残像とぴたりと重なる。

 

「…………」

 

「……藤原さん?」

 

「お前……この剣、どこで……?」

 

「え? いや、なんか無意識に描いてたんすよね。
しかも名前も勝手に思い浮かんで……ははっ、変っすよね~?俺、昔の漫画でも読んでたかな?」

 

「それ……創作じゃない。本当に存在してた剣よ」

 

「──え?」

 

ルーナは、落書き帳を閉じて返す。

その手は、微かに震えていた。

 

「……お前、マジで思い出してないの?」

 

「え……? 何を?」

 

「戦ってたこと。剣を振るってたこと。あの世界で、私と──背中合わせで」

 

「…………えっ?」

 

快は、笑いかけて──固まった。

頭の中で、パキン、と何かが割れる音がした。

 

一瞬だけ、記憶の波が押し寄せる。

──闇の中。
──剣を掲げた。
──あの時、隣にいた“魔女”。

彼女は、叫んでいた。

 

『──カイ!! あんたが斬らなきゃ、終わらないのよ!!』

 

──そして世界は、白く爆ぜた。

 

 

「っ……!」

快は頭を押さえ、膝をつく。

 

「お、おい!? 大丈夫!? ちょっと、深呼吸して!ほら、スーハー!スーハー!!」

 

「藤原さ……俺……知ってる……その声……その目……」

 

「……!!」

 

「でも……なんで……なんで俺……何も……」

 

「──まだ全部は思い出さなくていい」

 

ルーナは、落ち着いた声で言った。

 

「ただ、知っておきなさい。
その剣は、“世界を救った剣”。
そして、お前はその“剣の持ち主”。」

 

快は震えた手でノートを受け取る。

まだ半信半疑。
でも、心の奥で何かが、確実に──目覚めかけていた。

 

「……これ、夢じゃないんすよね?」

 

「夢だったら、あたしがコタツから出るわけないでしょ」

 

「……つまり、現実……っすね」

 

彼らの間に、確かな空気の変化が生まれていた。

“知ってしまった者”同士の、絶妙な距離感と重み。

 

「とりあえず、お前さ──」

 

「はい?」

 

「ノートの端っこに書いてる“腹筋で地球救える説”は、マジで一回やめろ。記憶以上に恥ずかしい」

 

「えっ!? そこピックアップされるんすか!?」

 

「世界より羞恥を先に救え!!」

 

「ひどくないっすか!?」

 

──こうして、初めての“明確な正体バレ”が、
爆発も涙もなく、筋肉とツッコミの中で成立した。

だが──ここから物語は、確実に加速していく。

 

記憶は、リンクした。

次は、他の誰かの番だった。

 

(続く)
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