自称25歳、実年齢は250歳の魔女

naomikoryo

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第29話「勇者、精霊王、魔王、魔女、大賢者──そして“器”の初めての食卓」

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──日曜日、午後5時。

さくらハイツの中庭に、長テーブルが並べられた。

手作りの料理、スーパーの惣菜、誰かが焼いたパン、そしてコンビニの唐揚げ。

住人たちは手分けして、各自“できる範囲”のものを持ち寄った。

 

「すげぇな……この人数で集まるの、初めてじゃね?」

 

快が筋肉Tシャツでサラダを混ぜながら言う。

 

「ええ。全員がテーブルを囲むって、何気に初イベントね」

 

ルーナはマッシュポテトに魔力をちょいと振りかけ、
さりげなく“高カロリー除去魔法”を発動している。

 

「うちのポテサラだけ低カロリー仕様!? ずるい!」

 

「女子の戦場ってやつよ」

 

直也はピザの箱を開きながら苦笑した。

その目は、昨日までの不安が少しだけやわらいで見える。

 

レナは手作りのミネストローネをテーブル中央に置き、
周囲をぐるりと見渡して、つぶやいた。

 

「これが……今の“私たち”」

 

(魔王、勇者、魔女、精霊王、賢者、器──そしてそれ以外の人々。
ここに偶然なんて、もうない)

 

──そして、ライカ。

今日は白いワンピースに小さな麦わら帽。
まるで絵本から出てきたような姿で、テーブルの端にちょこんと座っている。

 

「わたし……ずっと、こういう時間が欲しかったのかも」

 

その呟きを聞いた誰かが、
「次、プリンね」と言いながらデザートを配り始めた。

 



 

テーブルでは、思い思いに会話が交わされる。

・快の“異常なプロテイン知識”にドン引きするレナ
・みりあが“空気で焼いたパン”をふるまい皆が驚く
・直也が自分で焼いたベーコンが焦げていてボヤ寸前
・ルーナがこっそり料理の味を“微調整”して、地味に助けていたり
・クロが器用に箸を使ってポテトサラダを食べていてツッコまれたり

 

笑い声。
風。
夕陽。
手を伸ばせば届きそうな、“平和の幻”のような時間。

 

──でも、全員がわかっている。

この時間は、“永遠ではない”。

誰かの記憶が完全に戻ったとき、
誰かの力が“暴走”したとき、
この空気は、静かに崩れていくかもしれない。

 

それでも。

 

今だけは、笑っていようと決めた。

 

「──じゃあ、次の休みは、誰かの部屋で映画でも見ようよ!」

 

ライカの提案に、全員がうなずいた。

 

「うちプロジェクターあるよ! 天井に映すやつ!」

 

「でた! 快くん、無駄にハイテク!」

 

「いやでもさ、どうせならホラーとかどう?」

 

「やめて。俺、絶対“元魔王のくせにチビる”とか言われるから」

 

「え、元魔王って何?」

 

「うそだよね!?」

 

「うそです」

 

「……?」

 

誰も深追いはしない。
でも、少しずつ“正体”が隠しきれなくなっていることにも、気づき始めていた。

 



 

夜が深まり、テーブルは片付けられた。

残ったプリンを手に、ライカがひとり空を見上げている。

隣には、レナとルーナが立っていた。

 

「ありがとう、ふたりとも。昨日、助けてくれたんでしょ?」

 

「……記憶、戻ってるの?」

 

「ううん。でも……夢の中で、誰かが手を引いてくれた。
怖くなかった。……それだけで、十分だよ」

 

レナが目を細めた。

 

「ライカ、約束して。
“思い出す前に、ちゃんと笑ってて”」

 

「……うん」

 

風が吹き、
小さな麦わら帽子が飛びそうになって、ルーナがそっと手で押さえた。

 

「まったく……世話が焼けるわね、あんたら全員」

 

その声音に、どこか優しさがにじんでいた。


(続く)
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