魔女の贈り物 ～僕という奇跡～

番外編 第1章 秘密の約束

放課後、校舎の裏手にあるひっそりとした休憩室。
誰にも気づかれぬよう、薄暗い照明の下で、保健師・赤井静香と生徒会長・高宮琴音は、静かに顔を寄せ合っていた。
二人の視線は、いつしか琢磨先生のことを巡り、心の奥に秘めた想いを確かめ合うように鋭く光っていた。

「琢磨先生は、昔のあの優しい先生としての魅力も、今や人気者としての華やかさも兼ね備えて…」
琴音が、静かに呟くと、静香は微かに笑みを浮かべながら、目を伏せた。
部屋の隅で、二人の手がそっと触れ合う瞬間、その温もりはまるで秘密の契約のように、心に深く刻まれていく。

「でも、私たちは忘れてはいけないわ。
もともと私たちだけが彼の魅力に気付いていたことを…」
琴音の言葉に、静香はしばらくの沈黙を経て、静かな決意を込めた声で返した。
「お互い、どちらが選ばれても恨みっこなしよ。」
その一言が、二人の間に流れる秘密の炎となり、互いに熱い想いを再確認させる合図となった。

静香は、普段の冷静で落ち着いた雰囲気の中にも、内に秘めた情熱とお色気を巧みに表現する。
彼女は、琢磨先生に近づくため、さりげない仕草と共に、魅惑的な微笑みを準備していた。
例えば、朝の健康チェックの際、彼の視線が自分に留まるように、ほんの少しだけ肩を露出させる柔らかなブラウスを選んだり、放課後の面談の合間に、ふと目線を合わせた瞬間に、甘い眼差しとともにそっと微笑んだりと、そのお色気を隠しながらも確実にアピールする戦略を実行していた。

一方、琴音は、静香とは違った控えめながらも確固たる魅力で、琢磨先生の心を狙っていた。
彼女は、学園内での公式な役割を活かし、自然な形で彼との接点を増やす努力を重ね、温かさと誠実さを前面に出して、彼の信頼と好意を得ようとしていた。
しかし、琴音もまた、心の奥底では静香との密かな競争に燃える感情を隠せず、互いに譲らぬ思いを胸に秘めていた。

静香の計らいは、まるで芸術のような洗練されたものだった。
彼女は、琢磨先生がふとした瞬間に目にする小さな雑誌の切り抜きや、手作りのヘルシースイーツに、ほんのりと自分の魅力を添え、彼の心に小さな火種を散らしていった。
彼女の仕草一つひとつには、控えめながらも確実な色気が漂い、琢磨先生が無意識にその存在に惹かれていくのを、静かに確信していた。

こうして、二人は互いに内緒で、しかし共通の目的―かつての優しい琢磨先生を自分たちだけのものにする―
に向け、細やかな策略を練り始めた。
彼女たちの瞳の奥には、嫉妬や競争心、そして何よりも深い愛情が交錯し、その熱は密かに、しかし確実に燃え上がっていった。

休憩室の薄明かりの中、琴音と静香は最後の確認として、そっと手を取り合い、未来への約束を交わした。
どちらが最終的に琢磨先生の心を射止めようとも、互いに恨みを抱くことは決してない――
それが、二人の間に流れる強い絆と、共鳴する恋の炎の証であった。