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第3章:「二つの戦場」
第7話「甦る過去と、剣に宿る声」
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星が揺れていた。
夜のアリステリア王国。
タケルは、王都の北にある神殿跡地――**「セフィルの碑」**と呼ばれる古代の封印地にいた。
かつて、星の門の発生源となった地。
王国建国よりも遥か昔、まだ人と星とが区別される以前に“扉”が開かれたとされる、伝説の遺構だった。
数日前、黒炎の騎士団との戦いのさなかに敵が使った“石板”には、この地の座標が記されていた。
そして、王宮の魔導研究会による解析の結果、かつてタケルが使った勇者の剣、《竜喰いの剣》とこの場所に“共鳴反応”があることが判明した。
だから今、彼はここに来ていた。
剣と、記憶と、過去を確かめるために。
「静かだな……」
タケルは、夜風に髪を揺らしながら呟いた。
周囲にはリアと数名の警戒兵が控えているが、タケルが封印の中心部に立った時点で、誰一人として声を発していなかった。
それほどまでに、この空間は“ただならぬ気配”を放っていた。
タケルは剣を抜く。
青銀の刃が月明かりを弾き、静かに唸るように震える。
そして――地面の中心にある封印石へ、そっとその剣先を触れさせた。
次の瞬間。
――ズンッ!!
空間が震えた。
まるで鼓動のような揺れが足元から全身に響き、空気が圧縮されるように変化する。
周囲の兵士たちは一斉に剣を抜いたが、リアは目を見開いて叫んだ。
「やめて! 剣が……反応してるだけ!」
封印石の中心に、淡い光が浮かび上がった。
それはまるで幻のような、あるいは記憶のような、微かで美しい光――
そして、その光はゆっくりと、人の姿を形作っていく。
それは、騎士だった。
ただの幻影ではない。
意志を持ち、明確な存在として、そこに立つ“記憶の残滓”。
彼の名は――レイヴ=アークライト。
初代勇者にして、剣に“記憶の種”を宿した存在。
その名は歴史からもほとんど消され、今や封印文献にしか残されていない。
「ようやく……お前に会えたか。後継の勇者よ」
その声に、タケルは無意識に剣を強く握りしめた。
「……レイヴ……。お前が、この剣に……?」
「ああ。我が記憶はこの《竜喰い》に封じられ、お前という後継者が目覚めるその日を待っていた」
幻影のレイヴは、ゆっくりと目を閉じて続ける。
「タケル。この地には“星の門”が眠っている。正確には、その“残骸”だ。
そして、ここで起きたのが――魔王の“第一覚醒”だ」
「第一……?」
「かつて我らは、星の門を開いた。好奇心と、技術の誇りによって。
だが、そのとき、“向こう”の世界から流れ込んできた力に、ある者が触れた」
「それが、“魔王”の起源となった。魔王とは、この世界の者ではない。地球から流れた“記憶”そのものなのだ」
「地球から……?」
「ああ。お前が来た世界。かつて、かの世界で滅びた文明の“怨念と残響”が、この門を通じて魔素と融合し、一つの意志となった」
「それこそが、“魔王”の核」
タケルの背筋に、冷たい戦慄が走った。
「じゃあ……魔王ってのは、地球と無関係じゃなかったってことか」
「まったくの無関係ではない。おそらく、地球にも“同じ力”が今も眠っている。
ガルダス星人が求めているのは、その“核の一部”。魔王の完全復活には、それが必要なのだ」
タケルは、剛との念話を思い出す。
(向こうに“鍵”がある……)
それは、かつてこの地で目覚めた力のもう片割れ――
「もし、ガルダス星人がその核を手に入れて、魔王と共鳴したら?」
「災厄が現実になる。二つの世界の破滅が、同時に始まる」
レイヴの声は、静かだった。
だが、その内容は、あまりに重かった。
「だが……道はある。タケル。
お前と、お前の“影”――西条剛。二人が別々の世界で同時に立ち、同時に“核の力”を制することができれば――」
「門は、封じられる」
その言葉に、タケルは剣を見つめた。
その刃は、今も微かに震えている。
まるで、この世界の命運が、自分の中にあることを告げているかのように。
「わかった。俺がやる。……剛も、きっとやる」
「ならば最後に……剣を通して、お前に“我が技”を託そう」
レイヴが剣に手をかざした瞬間、青白い光が《竜喰いの剣》に吸い込まれていく。
その瞬間――
タケルの脳裏に、**剣術と魔法が融合した“記憶の戦技”**が流れ込んだ。
名前は、《星煌連斬(セイコウレンザン)》――
星の力を剣に宿し、連続する閃光の斬撃で時空すら裂く究極の技。
タケルは息を整え、剣を握り直した。
「……これが、過去から託されたものか」
レイヴの幻影が、微かに笑う。
「我が記憶は、ここで終わる。あとは……お前の時代だ」
そして、光はゆっくりと消えていった。
静寂が戻る。
だが、タケルの心は燃えていた。
剣を腰に戻し、リアのもとへと戻る。
「……タケル。剣、何か変わった?」
「ああ。“星の記憶”を受け取った。……これで、戦える。向こうと、こっちの両方で」
夜空を見上げる。
その先に、もう一人の自分――剛がいる。
そして、彼もまた、自分の“記憶”と戦っている。
(次に会うときは、剣を掲げて言おう)
(――“俺たちが、世界を守った”って)
夜のアリステリア王国。
タケルは、王都の北にある神殿跡地――**「セフィルの碑」**と呼ばれる古代の封印地にいた。
かつて、星の門の発生源となった地。
王国建国よりも遥か昔、まだ人と星とが区別される以前に“扉”が開かれたとされる、伝説の遺構だった。
数日前、黒炎の騎士団との戦いのさなかに敵が使った“石板”には、この地の座標が記されていた。
そして、王宮の魔導研究会による解析の結果、かつてタケルが使った勇者の剣、《竜喰いの剣》とこの場所に“共鳴反応”があることが判明した。
だから今、彼はここに来ていた。
剣と、記憶と、過去を確かめるために。
「静かだな……」
タケルは、夜風に髪を揺らしながら呟いた。
周囲にはリアと数名の警戒兵が控えているが、タケルが封印の中心部に立った時点で、誰一人として声を発していなかった。
それほどまでに、この空間は“ただならぬ気配”を放っていた。
タケルは剣を抜く。
青銀の刃が月明かりを弾き、静かに唸るように震える。
そして――地面の中心にある封印石へ、そっとその剣先を触れさせた。
次の瞬間。
――ズンッ!!
空間が震えた。
まるで鼓動のような揺れが足元から全身に響き、空気が圧縮されるように変化する。
周囲の兵士たちは一斉に剣を抜いたが、リアは目を見開いて叫んだ。
「やめて! 剣が……反応してるだけ!」
封印石の中心に、淡い光が浮かび上がった。
それはまるで幻のような、あるいは記憶のような、微かで美しい光――
そして、その光はゆっくりと、人の姿を形作っていく。
それは、騎士だった。
ただの幻影ではない。
意志を持ち、明確な存在として、そこに立つ“記憶の残滓”。
彼の名は――レイヴ=アークライト。
初代勇者にして、剣に“記憶の種”を宿した存在。
その名は歴史からもほとんど消され、今や封印文献にしか残されていない。
「ようやく……お前に会えたか。後継の勇者よ」
その声に、タケルは無意識に剣を強く握りしめた。
「……レイヴ……。お前が、この剣に……?」
「ああ。我が記憶はこの《竜喰い》に封じられ、お前という後継者が目覚めるその日を待っていた」
幻影のレイヴは、ゆっくりと目を閉じて続ける。
「タケル。この地には“星の門”が眠っている。正確には、その“残骸”だ。
そして、ここで起きたのが――魔王の“第一覚醒”だ」
「第一……?」
「かつて我らは、星の門を開いた。好奇心と、技術の誇りによって。
だが、そのとき、“向こう”の世界から流れ込んできた力に、ある者が触れた」
「それが、“魔王”の起源となった。魔王とは、この世界の者ではない。地球から流れた“記憶”そのものなのだ」
「地球から……?」
「ああ。お前が来た世界。かつて、かの世界で滅びた文明の“怨念と残響”が、この門を通じて魔素と融合し、一つの意志となった」
「それこそが、“魔王”の核」
タケルの背筋に、冷たい戦慄が走った。
「じゃあ……魔王ってのは、地球と無関係じゃなかったってことか」
「まったくの無関係ではない。おそらく、地球にも“同じ力”が今も眠っている。
ガルダス星人が求めているのは、その“核の一部”。魔王の完全復活には、それが必要なのだ」
タケルは、剛との念話を思い出す。
(向こうに“鍵”がある……)
それは、かつてこの地で目覚めた力のもう片割れ――
「もし、ガルダス星人がその核を手に入れて、魔王と共鳴したら?」
「災厄が現実になる。二つの世界の破滅が、同時に始まる」
レイヴの声は、静かだった。
だが、その内容は、あまりに重かった。
「だが……道はある。タケル。
お前と、お前の“影”――西条剛。二人が別々の世界で同時に立ち、同時に“核の力”を制することができれば――」
「門は、封じられる」
その言葉に、タケルは剣を見つめた。
その刃は、今も微かに震えている。
まるで、この世界の命運が、自分の中にあることを告げているかのように。
「わかった。俺がやる。……剛も、きっとやる」
「ならば最後に……剣を通して、お前に“我が技”を託そう」
レイヴが剣に手をかざした瞬間、青白い光が《竜喰いの剣》に吸い込まれていく。
その瞬間――
タケルの脳裏に、**剣術と魔法が融合した“記憶の戦技”**が流れ込んだ。
名前は、《星煌連斬(セイコウレンザン)》――
星の力を剣に宿し、連続する閃光の斬撃で時空すら裂く究極の技。
タケルは息を整え、剣を握り直した。
「……これが、過去から託されたものか」
レイヴの幻影が、微かに笑う。
「我が記憶は、ここで終わる。あとは……お前の時代だ」
そして、光はゆっくりと消えていった。
静寂が戻る。
だが、タケルの心は燃えていた。
剣を腰に戻し、リアのもとへと戻る。
「……タケル。剣、何か変わった?」
「ああ。“星の記憶”を受け取った。……これで、戦える。向こうと、こっちの両方で」
夜空を見上げる。
その先に、もう一人の自分――剛がいる。
そして、彼もまた、自分の“記憶”と戦っている。
(次に会うときは、剣を掲げて言おう)
(――“俺たちが、世界を守った”って)
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