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第七十五話:「未来に約束を――指輪を交わす日」
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――結城理奈
午前10時、
秋の陽だまりが優しく差し込む小さなギャラリーで、
私は静かに、その時を待っていた。
純くんが選んだ場所だった。
彼が初めて小説を書き終えたとき、
「いつかここでイベントがしたい」と言っていた、あの場所。
貸し切りの空間には、
彼の手書きの原稿と、
私が編集した初稿の束が展示されていた。
そしてその中央に、
小さなリングボックスが置かれていた。
**
“結婚”という言葉は、
今もまだ、どこか遠いものに感じる。
けれど私は今、
その“遠さ”さえも愛おしいと思える。
人はそれぞれの速度で、
それぞれの形で、
心を重ねていくのだと、
この歳になってようやく知った。
私たちは“恋人”という言葉の向こうにある、
“味方”であり、
“伴走者”としての在り方を、選び取ったのだ。
**
純くんが、入口に現れた。
彼は、いつものように少し緊張した面持ちで、
けれど確かな足取りでこちらへ歩いてくる。
私は、笑った。
「緊張してる?」
「……してます。たぶん、人生でいちばん」
「そう。じゃあ、私はその次くらいかしら」
私たちは、お互いを見つめて、
ゆっくりと、リングボックスに手を伸ばした。
**
――新田純
この日が来るなんて、思っていなかった。
最初に彼女と出会ったときの自分は、
ただの新人作家で、
ただの恋愛初心者だった。
でも――
彼女は、僕の“人生そのもの”を育ててくれた。
言葉の選び方、
人との向き合い方、
愛するということの、重みとやさしさ。
全部、彼女が教えてくれた。
**
「この指輪は、約束のためのものです」
僕の声が、静かな空間に落ちる。
「結婚じゃなくていい。
名前が変わらなくても、形がなくても――
僕は、これから先も、ずっと理奈さんの味方です」
彼女が、微笑んだ。
「ありがとう。……私もよ」
リングを、お互いの薬指にゆっくりと通す。
形だけの指輪じゃない。
それは、人生のなかでようやく見つけた、“伴う”という感情の証だった。
**
ギャラリーを出ると、
陽だまりが私たちを迎えてくれた。
もう隠さなくてもいい。
怯えなくてもいい。
誰かにどう言われても、
私たちは、自分たちで選んだ“幸せ”を歩いていく。
**
――結城理奈(心の声)
(ありがとう、純くん。
あなたがくれた愛が、
私の人生に“光”を取り戻してくれた)
(もう私は、過去ではなく、あなたと生きる“これから”を選びたい)
**
――新田純(心の声)
(理奈さん。
あなたの隣を歩けることが、
僕の人生の誇りです)
(ずっと味方でいます。
ずっと、そばにいます)
**
ふたりは並んで歩く。
その手には、
静かに光る指輪がある。
約束の言葉はいらなかった。
ただ、その温もりだけがすべてだった。
そして、物語は幕を下ろす。
静かに、穏やかに、
けれど確かに――
未来へと続く、はじまりのように。
午前10時、
秋の陽だまりが優しく差し込む小さなギャラリーで、
私は静かに、その時を待っていた。
純くんが選んだ場所だった。
彼が初めて小説を書き終えたとき、
「いつかここでイベントがしたい」と言っていた、あの場所。
貸し切りの空間には、
彼の手書きの原稿と、
私が編集した初稿の束が展示されていた。
そしてその中央に、
小さなリングボックスが置かれていた。
**
“結婚”という言葉は、
今もまだ、どこか遠いものに感じる。
けれど私は今、
その“遠さ”さえも愛おしいと思える。
人はそれぞれの速度で、
それぞれの形で、
心を重ねていくのだと、
この歳になってようやく知った。
私たちは“恋人”という言葉の向こうにある、
“味方”であり、
“伴走者”としての在り方を、選び取ったのだ。
**
純くんが、入口に現れた。
彼は、いつものように少し緊張した面持ちで、
けれど確かな足取りでこちらへ歩いてくる。
私は、笑った。
「緊張してる?」
「……してます。たぶん、人生でいちばん」
「そう。じゃあ、私はその次くらいかしら」
私たちは、お互いを見つめて、
ゆっくりと、リングボックスに手を伸ばした。
**
――新田純
この日が来るなんて、思っていなかった。
最初に彼女と出会ったときの自分は、
ただの新人作家で、
ただの恋愛初心者だった。
でも――
彼女は、僕の“人生そのもの”を育ててくれた。
言葉の選び方、
人との向き合い方、
愛するということの、重みとやさしさ。
全部、彼女が教えてくれた。
**
「この指輪は、約束のためのものです」
僕の声が、静かな空間に落ちる。
「結婚じゃなくていい。
名前が変わらなくても、形がなくても――
僕は、これから先も、ずっと理奈さんの味方です」
彼女が、微笑んだ。
「ありがとう。……私もよ」
リングを、お互いの薬指にゆっくりと通す。
形だけの指輪じゃない。
それは、人生のなかでようやく見つけた、“伴う”という感情の証だった。
**
ギャラリーを出ると、
陽だまりが私たちを迎えてくれた。
もう隠さなくてもいい。
怯えなくてもいい。
誰かにどう言われても、
私たちは、自分たちで選んだ“幸せ”を歩いていく。
**
――結城理奈(心の声)
(ありがとう、純くん。
あなたがくれた愛が、
私の人生に“光”を取り戻してくれた)
(もう私は、過去ではなく、あなたと生きる“これから”を選びたい)
**
――新田純(心の声)
(理奈さん。
あなたの隣を歩けることが、
僕の人生の誇りです)
(ずっと味方でいます。
ずっと、そばにいます)
**
ふたりは並んで歩く。
その手には、
静かに光る指輪がある。
約束の言葉はいらなかった。
ただ、その温もりだけがすべてだった。
そして、物語は幕を下ろす。
静かに、穏やかに、
けれど確かに――
未来へと続く、はじまりのように。
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