25歳差の恋愛指南、それは人生最大の不覚でした

naomikoryo

文字の大きさ
74 / 75

第七十四話:「“誰に何を言われても、私は彼を選ぶ”と、やっと口にできた日」

しおりを挟む
SNSがざわついている――
そんな空気は、社内にも確実に伝播していた。

“社長と新人作家が親密らしい”
“昇進や抜擢に私情が絡んでいるのでは”
“年の差恋愛? それって倫理的に大丈夫なの?”

直接名指しされているわけではない。
でも、噂の輪郭があまりにも明確で、
逃げ場なんて最初からなかった。

けれど不思議と、怖くはなかった。

なぜなら、
“何があっても、隣にいる”と誓ってくれた人が――
あの子が、そこにいるから。

**

「……社長、あの噂について、何かお話が?」

昼休み前、役員の一人が控えめに口を開いた。
周囲の空気が凍りつく。
誰もが、私がどう答えるかを見つめていた。

少しだけ息を吸って、私は微笑む。

「ええ、もちろん」

そして、言った。

「私は、作家・新田純の成長を、心から信じています」
「彼がこの業界に与える影響と、言葉にかける誠実さは、誰よりも真っ直ぐです」
「その彼と、私は――恋人関係にあります」

社内が一瞬、静まり返った。

でも、その沈黙を、私は恐れなかった。

「年齢差も、立場も承知の上です」
「だからこそ、私はこれからも彼を“仕事のパートナー”として、誠意を持って向き合います」
「そして、同時に“人生のパートナー”としても、彼と歩んでいく覚悟があります」

一文字ずつ、
かみしめるように話した。

それは、私自身がようやくたどり着いた、
“私の言葉”だった。

**

話が終わったあと、
社内はしばらく静かなままだった。

でも、
その沈黙を破ったのは――凜華だった。

「……理奈さん、カッコいいっすね」

彼女は笑っていた。
目元が少しだけ潤んでいたけれど、
まっすぐな笑顔だった。

そして、清美が続いた。

「私、やっぱり理奈さんが好きです」
「純くんも、すごく真剣だってわかってたし……それを信じてる理奈さん、めちゃくちゃカッコいいです」

みんな、笑っていた。
あのざわついた噂なんかより、
“言葉で向き合った私”を、
ちゃんと見てくれていた。

(そう……これで、よかったのよね)

**

夜、オフィスで一人。
誰もいない会議室で、私はスマホを開いた。

彼からのメッセージは、もう届いていた。

『報告、見ました。……涙が出ました。』

『あなたが僕を選んでくれたこと、
僕の人生で、いちばんの誇りです。』

私は返信を打ちながら、
ふと、
彼の言葉をそのまま返したくなった。

『私も、あなたを選んだことを、誇りに思います。』

**

誰かに反対されても、
誰かの噂に傷ついても、
もう立ち止まらない。

私の人生は、私が決める。

そしてその中に、
彼がいることを、
私はもう誰にも否定させない。

**

明日から、また新しい一日が始まる。
けれど、それは“彼と共に歩く一日”だ。

“誰に何を言われても、私は彼を選ぶ”

それをようやく、
言葉にできた私がいる。

あの日から、ずっと――
“答え”を探していた自分に、
ようやく終止符を打てた気がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

紙の上の空

中谷ととこ
ライト文芸
小学六年生の夏、父が突然、兄を連れてきた。 容姿に恵まれて才色兼備、誰もが憧れてしまう女性でありながら、裏表のない竹を割ったような性格の八重嶋碧(31)は、幼い頃からどこにいても注目され、男女問わず人気がある。 欲しいものは何でも手に入りそうな彼女だが、本当に欲しいものは自分のものにはならない。欲しいすら言えない。長い長い片想いは成就する見込みはなく半分腐りかけているのだが、なかなか捨てることができずにいた。 血の繋がりはない、兄の八重嶋公亮(33)は、未婚だがとっくに独立し家を出ている。 公亮の親友で、碧とは幼い頃からの顔見知りでもある、斎木丈太郎(33)は、碧の会社の近くのフレンチ店で料理人をしている。お互いに好き勝手言える気心の知れた仲だが、こちらはこちらで本心は隠したまま碧の動向を見守っていた。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~

椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」 私を脅して、別れを決断させた彼の両親。 彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。 私とは住む世界が違った…… 別れを命じられ、私の恋が終わった。 叶わない身分差の恋だったはずが―― ※R-15くらいなので※マークはありません。 ※視点切り替えあり。 ※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。

✿ 私は夫のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい 

設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀ 結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。 結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。 それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて しなかった。 呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。 それなのに、私と別れたくないなんて信じられない 世迷言を言ってくる夫。 だめだめ、信用できないからね~。 さようなら。 *******.✿..✿.******* ◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才   会社員 ◇ 日比野ひまり 32才 ◇ 石田唯    29才          滉星の同僚 ◇新堂冬也    25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社) 2025.4.11 完結 25649字 

🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。

設楽理沙
ライト文芸
2026.1.4 73話見直した際、瑛士の台詞《本音/懺悔》を加筆しました。😇 ☘ 累計ポイント/ 200万pt 超えました。ありがとうございます。 ―― 備忘録 ――    第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。  最高 57,392 pt      〃     24h/pt-1位ではじまり2位で終了。  最高 89,034 pt                    ◇ ◇ ◇ ◇ 紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる 素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。 隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が 始まる。 苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・ 消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように 大きな声で泣いた。 泣きながらも、よろけながらも、気がつけば 大地をしっかりと踏みしめていた。 そう、立ち止まってなんていられない。 ☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★ 2025.4.19☑~

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

処理中です...