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第七十三話:「“あなたの隣にいる未来を、守れる男でいたい”と、初めて本気で思った日」
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フォロワーが、気づけば一万人を超えていた。
SNSの通知は鳴りっぱなしで、
タグ付きの投稿は“イケメン作家”とか“理想の彼氏像”とか、
本筋と関係のない方向で、どんどん騒がしくなっていった。
自分の顔が切り抜かれ、
誰かが妄想交じりのラブコメ風キャプションを添えて拡散している。
たしかに――
嬉しくないわけじゃない。
でも、画面の向こうでざわつく“誰か”の視線に、
胸の奥がざらりとするのを止められなかった。
(理奈さん、大丈夫だろうか……)
真っ先に思ったのは、
僕のことじゃなく、彼女のことだった。
**
「今週のアクセス、すごい勢いで上がってます」
「社内報にも、“注目の若手作家”として載せませんか?」
「外部の読者イベントにもオファーが来てます」
担当編集からの報告は、ほとんど“ビジネス”の文脈だった。
理奈さんも、普段通りの顔で資料をめくりながら聞いていた。
でもその横顔は、ほんのわずかに強張っていた。
言葉にはならなくても、わかる。
彼女が考えているのは、きっと――
(この盛り上がりが、自分たちの関係に及ぶかもしれない)
(誰かの好奇心が、彼の将来を壊すかもしれない)
**
帰り際、理奈さんとふたりでエレベーターに乗った。
社員が先に降りて、無言の時間。
「……ごめんなさいね。ちょっと、世間が騒がしくて」
理奈さんがぽつりと言った。
「理奈さんが謝ることじゃないです」
「でも……あなたが、傷ついたり困ったりしないかって、それが一番怖いの」
僕は言葉を詰まらせた。
怖いのは、こっちの方だった。
理奈さんが、自分のせいで何かを背負うこと。
僕が“まだ何者でもない”存在であることで、
彼女に負担をかけてしまうこと。
**
その夜、ずっと考えていた。
(俺は……このままでいいんだろうか)
(理奈さんを“愛してる”と言うだけで、本当に彼女を守れる?)
スマホには、数件の取材オファー。
出版社からのプロモーション企画。
そして、エゴサーチで引っかかる、理奈さんの名前がチラつく匿名投稿。
《社長と親密って噂あるけどマジ?》
《あの出版社、若手作家と社長の関係ズブズブって聞いた》
《なんか妙に持ち上げられてて逆に怪しい》
画面を閉じる。
呼吸が乱れた。
(俺が、彼女を傷つけてる?)
否――
違う。
俺が守れていないのが、問題なんだ。
**
翌日、理奈さんのもとへ提出した原稿に、
“あとがき”を添えた。
誰にも見せない、彼女だけへの手紙。
《物語を書くことが、自分のすべてだと思っていました。
でも今は、あなたの隣にいる自分を、物語以上に大事に思っています。》
《誰にも邪魔されたくない。
誰に何を言われても、
“あなたの隣にいる未来”を守れる男でいたいと思っています。》
《だから、もっと強くなります。
書くことでも、言葉でも、
行動でも――》
そのあとがきのあと、
原稿ファイルを閉じた彼女が、静かに立ち上がって、僕の席まで来た。
誰にも気づかれないように、
僕のデスクの下で、そっと指先が触れ合った。
目が合った。
何も言わなかった。
でも、
その瞳が微笑んだとき、
僕は確かに“言葉を交わした”と感じた。
(私は、大丈夫。あなたがいるから)
**
“覚悟”とは、
言葉で宣言することじゃない。
誰かの未来を守ると、心に決めることだ。
理奈さんが、
そうやって僕の中に“愛のかたち”を教えてくれた。
そして今、
僕はようやく、
そのかたちを“行動”に変えていける気がする。
SNSの通知は鳴りっぱなしで、
タグ付きの投稿は“イケメン作家”とか“理想の彼氏像”とか、
本筋と関係のない方向で、どんどん騒がしくなっていった。
自分の顔が切り抜かれ、
誰かが妄想交じりのラブコメ風キャプションを添えて拡散している。
たしかに――
嬉しくないわけじゃない。
でも、画面の向こうでざわつく“誰か”の視線に、
胸の奥がざらりとするのを止められなかった。
(理奈さん、大丈夫だろうか……)
真っ先に思ったのは、
僕のことじゃなく、彼女のことだった。
**
「今週のアクセス、すごい勢いで上がってます」
「社内報にも、“注目の若手作家”として載せませんか?」
「外部の読者イベントにもオファーが来てます」
担当編集からの報告は、ほとんど“ビジネス”の文脈だった。
理奈さんも、普段通りの顔で資料をめくりながら聞いていた。
でもその横顔は、ほんのわずかに強張っていた。
言葉にはならなくても、わかる。
彼女が考えているのは、きっと――
(この盛り上がりが、自分たちの関係に及ぶかもしれない)
(誰かの好奇心が、彼の将来を壊すかもしれない)
**
帰り際、理奈さんとふたりでエレベーターに乗った。
社員が先に降りて、無言の時間。
「……ごめんなさいね。ちょっと、世間が騒がしくて」
理奈さんがぽつりと言った。
「理奈さんが謝ることじゃないです」
「でも……あなたが、傷ついたり困ったりしないかって、それが一番怖いの」
僕は言葉を詰まらせた。
怖いのは、こっちの方だった。
理奈さんが、自分のせいで何かを背負うこと。
僕が“まだ何者でもない”存在であることで、
彼女に負担をかけてしまうこと。
**
その夜、ずっと考えていた。
(俺は……このままでいいんだろうか)
(理奈さんを“愛してる”と言うだけで、本当に彼女を守れる?)
スマホには、数件の取材オファー。
出版社からのプロモーション企画。
そして、エゴサーチで引っかかる、理奈さんの名前がチラつく匿名投稿。
《社長と親密って噂あるけどマジ?》
《あの出版社、若手作家と社長の関係ズブズブって聞いた》
《なんか妙に持ち上げられてて逆に怪しい》
画面を閉じる。
呼吸が乱れた。
(俺が、彼女を傷つけてる?)
否――
違う。
俺が守れていないのが、問題なんだ。
**
翌日、理奈さんのもとへ提出した原稿に、
“あとがき”を添えた。
誰にも見せない、彼女だけへの手紙。
《物語を書くことが、自分のすべてだと思っていました。
でも今は、あなたの隣にいる自分を、物語以上に大事に思っています。》
《誰にも邪魔されたくない。
誰に何を言われても、
“あなたの隣にいる未来”を守れる男でいたいと思っています。》
《だから、もっと強くなります。
書くことでも、言葉でも、
行動でも――》
そのあとがきのあと、
原稿ファイルを閉じた彼女が、静かに立ち上がって、僕の席まで来た。
誰にも気づかれないように、
僕のデスクの下で、そっと指先が触れ合った。
目が合った。
何も言わなかった。
でも、
その瞳が微笑んだとき、
僕は確かに“言葉を交わした”と感じた。
(私は、大丈夫。あなたがいるから)
**
“覚悟”とは、
言葉で宣言することじゃない。
誰かの未来を守ると、心に決めることだ。
理奈さんが、
そうやって僕の中に“愛のかたち”を教えてくれた。
そして今、
僕はようやく、
そのかたちを“行動”に変えていける気がする。
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