25歳差の恋愛指南、それは人生最大の不覚でした

naomikoryo

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第七十二話:「こんなに好き同士なら、ちゃんと幸せになってください」

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昔から、恋愛は苦手だった。
友達の話に合わせて「それで? キュン?」なんて笑ってたけど、
本当は、好きになること自体が、よくわからなかった。

でも――
最近の理奈さんと純くんを見ていると、
その“わからなさ”が、少しだけほどける気がする。

なんだろう。
派手じゃないのに、胸があったかくなる。
触れてないのに、想い合ってるのが伝わる。

あれが、
「恋してる人の目」ってやつなんだと思う。

**

それに気づいたのは、
純くんがインタビューに答えたあたりからだった。

編集部でも話題になった。
「誰かを支えてもらってるって、いいなあ」なんて、
他の先輩たちがワイワイ話してる中で――
理奈さんだけが、
静かにモニターを見つめて、
何度も何度も、記事をスクロールしていた。

(その人のこと、大事なんだろうな)

そう思った。
というか、確信した。

あのときから、
理奈さんの“声”が変わった。

優しいとか、やわらかいとか、そういうんじゃない。
ちゃんと誰かに届く声になった、って感じ。

それはきっと、
“ひとりじゃなくなった人の声”。

**

そのあとも、ふたりの間に流れる空気は変わっていった。

ある日、
純くんが理奈さんの資料を受け取ったあと、
彼女がふっと目を伏せて、微笑んだのを見た。

「(……あ、この人、今“嬉しい”んだ)」

そう思った瞬間、なぜかこっちまで泣きそうになった。

(なんで私が泣きそうなんだ……?)

わかんない。
でも、
“誰かが誰かを大切にしてる”って、
こんなにも人の胸を震わせるものなんだって、
初めて知った。

**

社内で二人きりになる時間は少ない。
でも、
会話の少ないやりとりの中に、
何十通分の手紙みたいな感情がこもってる。

純くんが何も言わずに頷いたとき。
理奈さんが少しだけ視線を外したとき。
その全部が、“会話”になっている気がする。

(これが……恋なのかな)

私にはまだ、こんなふうに人を想ったことはない。

でも、
いつか恋をするときは、
こんなふうに“静かで優しい”ものがいいな、と思った。

**

それでも、ふたりはきっと、
“自分たちはまだ誰にも気づかれてない”と思ってる。
いや、思いたいんだと思う。

でもね。
理奈さん。純くん。

あなたたち、バレてますよ。完全に。

**

ランチのあと、
偶然、理奈さんと廊下ですれ違ったとき。
小さな声で、私は言った。

「……理奈さん」

「え?」

「私、応援してますから」

彼女は一瞬だけ戸惑って、
でもすぐに、ふわりと微笑んだ。

「……ありがとう」

たったそれだけ。
でも、その笑顔に、全部詰まっていた。

(ああ、もう。
この人、ほんとに誰かを好きなんだな)

そう思ったら、
ちょっとだけ、誇らしくなった。

**

夜、デスクに戻って、
ふと、スマホのメモを開いた。

《もしも私が恋をしたら、
 その人の隣で、黙って笑える人になりたい》

(……よし)

そのままそっと保存する。

理奈さんと純くんみたいな恋、
すぐには無理かもしれないけど、
いつか、ちゃんと“私の番”が来たときは――
ちゃんと、目を逸らさずに向き合ってみたい。

そのときはきっと、
今日見たあの二人みたいに、
誰かの心を、あったかくする人になりたい。
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