ねこまど~猫と人がつなぐ、奇跡のカフェ~

naomikoryo

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38)誤解を解こうとした結果

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1
「いやいやいやいや!!! 全然違うから!!!」

 藤井峰子(ふじい みねこ)は 必死に手を振りながら、目の前の母親を見つめた。

 母は 紅茶を優雅に飲みながら、まるで「もう全てわかってるわよ♪」と言わんばかりの 余裕の笑み。

「でもミネコ、あなた、この子のこと気になってるんでしょ?」

「な、なななななななななな何言ってんのよ!?!?」

「え~? でも昨日の電話では、“気になる人はいる” って言ってたわよね?」

「そ、それは……」

「しかも、特徴を聞いたら、まるでこの子みたいだったし♪」

「うぐっ……!!!」

(言った!!! 私、確かに言った!!!)

 あの時、適当に流そうとして、「年下でちょっと生意気だけど、気がつく人」 とか言ってしまった。

 まさか、それが今、こんな風に完全な現実として降りかかってくるなんて……!!

(いやいや、違うから!!!)

 峰子は なんとかこの誤解を解こうと、言葉を探す。

「ちがうの! 昭人くんはただのバイトの子で!」

「まぁ!! じゃあ職場恋愛なのね!」

「ちがう!!!!!」

 しかし、母の目は完全に 「はいはい、わかってるわよ~」 という目。

 さらに――

「ねぇ、昭人くん?」

 母は 優しく微笑みながら、目の前の昭人(あきと)に話しかけた。

「あなたはミネコのこと、どう思ってるの?」

「えっ!? 俺ですか!?」

「もちろん♪」

「え、えっと……」

(え、俺、何て言えばいいの!?!?)

 戸惑う昭人。

 しかし――

「ねぇ、ちょっと待って!! なんで昭人くんに聞くのよ!!!」

「だって、こういうのは お互いの気持ちが大事でしょ?」

「だから、そういう話じゃ――」

「だってねぇ、この子、とってもいい子そうだもの♪」

「そ、それはまぁ……」

「ねぇ? ミネコのどこが好きなの?」

「ぶっっっ!!!!」

 今度は、昭人が 飲みかけの水を吹き出しそうになる。

2
「えっ!? 俺!? 好きなところ!?!?」

「そうよ?」

 母は にっこり微笑む。

「いやいやいやいや、そんな話、聞いてませんから!!!?」

「だって、あなたもミネコのこと気にしてるんじゃない?」

「そ、それは……!!」

(あれ!? 俺、店長のこと気にしてるって、もうバレてる!?)

 すると――

「ふふっ、照れてる~~!!」

「うわぁ、昭人くん、これはもう隠せないね~!」

「ちょっっ!! 琴葉!!! 真緒!!! 余計なこと言わないの!!!!」

 峰子の 必死の抵抗もむなしく、ニヤニヤが止まらない真緒&琴葉。

 そして、そこに 完全に空気を読んでいない母のさらなる追い打ち。

「でも、昭人くん、ほんとに素敵ねぇ♪」

「は、はぁ……?」

「若いし、しっかりしてるし、きっとミネコを支えてくれるわねぇ♪」

「え、あの……」

「ねぇ、結婚するならどんな式がいい?」

「えぇぇぇぇぇ!?!?!?」

「お母さん!!!! ストップ!!!!」

 峰子は 全力で机をバンと叩く。

「待って!! もう話が100万歩くらい飛んでる!!!!」

「そう?」

「そうじゃない!!!!」

 しかし、母はまるで聞く耳を持たず、紅茶を優雅に飲み続ける。

 さらに――

「ねぇ、でもミネコ、最近この子のことばっかり見てるんでしょ?」

「はっ!?!?」

 今度は、峰子がフリーズする番。

「ねぇ、真緒さん、琴葉さん?」

「はいはい♪」

「うんうん、店長、めっちゃ見てます!」

「ちょぉぉぉぉぉぉぉ!!!???」

(こいつらぁぁぁ!!!!)

3
「ねぇ、ボス、これってどうなると思う?」

「にゃ。(もう決まり)」

「ミルク、どう思う?」

「にゃん!(付き合うべき!)」

「もなかは?」

「にゃぁ~(早くくっつけよ)」

 猫たちまで 完全に「早く付き合え」モード。

 もう、店の中の全員が 「あとは本人たちの自覚待ち」 という空気になっていた。

(いやいやいやいや、違うってば!!!)

 しかし、峰子の必死の抵抗もむなしく、母親は 全てを確信したように微笑む。

「ミネコ、あなたも、もう素直になっちゃいなさい♪」

「……」

「ね?」

「……」

 峰子は 顔を真っ赤にしてうつむく。

(ち、違う……違う……)

(はずなのに、なんで……)

 胸が ドキドキしているのが、自分でもわかってしまった。
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