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篠宮綾の奪還⑭
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佐原信道が消されてから数日が経った。
奉行所に持ち込まれた証拠の書状と三条屋の抜け荷に関する記録は、幕府内でも問題視されることになった。
「だが……妙だな。」
悠介は、平次親分の長屋の一角で腕を組みながら呟いた。
「妙?」
お美代が首をかしげる。
「佐原は、確かに幕府内で抜け荷を取り仕切ってた奴だった。
でも、あいつは単なる“手駒”だったんじゃねぇか?」
「……つまり?」
「黒幕は、まだ別にいる。」
悠介は、真剣な目つきで言った。
「それに……黒ずくめの奴ら、ただの手練れじゃなかったな。」
「確かに……あの統率の取れた動き、普通の浪人崩れじゃねぇ。」
鏑木もキセルを咥えながら、険しい表情で頷いた。
「佐原を消したのは、幕府の中でもかなりの地位にいる奴の命令だろうな。」
「ってことは、そいつが本当の黒幕ってことか?」
お美代が眉をひそめる。
「だが、誰がそれに関わっているのかまでは分かってねぇ。」
悠介は、スマホを取り出して画面を見た。
「使用回数: 残り2回」
(この回数も、慎重に使わねぇとな……。)
悠介は、拳を握りしめた。
「……もう少し調べる必要があるな。」
「それなら、江戸城の中にいる知り合いに探らせるって手もあるぜ。」
鏑木が低く呟いた。
「知り合い?」
悠介が目を向けると、鏑木は渋い顔で頷いた。
「俺がかつて仕えていた上司の中で、まだまともな奴が一人だけいる。」
「そいつが、城の中の情報を探ってくれるのか?」
「可能性はある。」
鏑木はキセルを叩きながら、真剣な表情を見せた。
「だが、危険な賭けだ。そいつが黒幕側に寝返ってたら、こっちが殺される。」
「……それでも、やるしかねぇな。」
悠介は、強く頷いた。
「綾の手配も、幕府の黒幕が消さねぇ限り解かれることはねぇ。」
「よし……じゃあ、城へ向かうか。」
悠介と鏑木は、江戸城の門の前に立った。
「……城の中に入るのは、緊張するな。」
悠介は、額の汗を拭った。
「お前が忍び込んだことは内緒にしておいてやる。」
鏑木がニヤリと笑う。
「ったく……余計なことを思い出させんな。」
悠介は苦笑しながら城門をくぐった。
(ここに、黒幕がいるのか……。)
悠介は、城内の空気を肌で感じながら慎重に歩を進めた。
「俺の知り合いは、町奉行の筆頭与力・樋口重蔵だ。」
鏑木が小声で言った。
「そいつなら、幕府の内部情報を持っている可能性が高い。」
二人は、城の廊下を進みながら樋口の執務室へ向かった。
やがて、静かに襖を開けると——
「おや、珍しい客だな。」
机に座って書状を見ていた男が、悠然と微笑んだ。
「久しいな、鏑木。」
「おう、樋口。」
鏑木は、静かに座ると悠介を紹介した。
「こいつは悠介。俺と一緒に事件を追ってる男だ。」
「……あの“スマホ岡っ引き”と噂の?」
「な……?」
悠介は驚いた。
「お前、俺のこと知ってんのか?」
「江戸の町で、妙な小道具を使って捜査をしている男がいるという話は、幕府の中でも噂になっている。」
樋口は静かに言った。
「……で、俺たちに何の用だ?」
鏑木が切り出すと、樋口は少し目を細めた。
「佐原の件だろう?」
「……!!」
悠介と鏑木は、目を見開いた。
「やはり、知っていたか。」
「それくらいは、当然だ。」
樋口は、ゆっくりと茶を啜った。
「幕府の内部で、抜け荷の件が問題になっているのも事実だ。
しかし……それを止めようとする勢力と、見逃そうとする勢力がある。」
「そりゃ、どっちが黒幕かわかりやすいな。」
悠介が皮肉っぽく言うと、樋口は苦笑した。
「私が言いたいのは、“簡単には決着がつかない”ということだ。」
「……つまり?」
「黒幕は、佐原だけではない。」
樋口は、厳しい表情で続けた。
「この事件の背後には、もっと大きな力が動いている。」
「もっと大きな力……?」
悠介は、少し身を乗り出した。
「幕府の老中、大谷重隆。」
「……!!!」
鏑木が息をのんだ。
「老中……!?」
悠介も驚愕した。
「若年寄の一人が抜け荷を仕切ってるのかと思ってたが……
そのさらに上の権力者が絡んでいるってことか?」
「その可能性が高い。」
樋口は、静かに頷いた。
「大谷重隆は、江戸の経済を握る大物であり、阿片の流通に関しても黙認している可能性がある。」
「つまり……綾の手配も、この老中が握ってるってことか?」
「……おそらく、そうだ。」
悠介は、深く息を吐いた。
(これは……とんでもねぇ相手を敵に回したな。)
「で? どうする?」
鏑木が腕を組みながら言った。
「……やるしかねぇだろ。」
悠介は、スマホを取り出した。
「使用回数: 残り2回」
「証拠が必要だ。」
悠介は、スマホを見つめながら呟いた。
「大谷が関与している証拠を掴まなきゃ、綾の手配も消せねぇ。」
「……そのためには?」
「大谷の屋敷に潜入するしかねぇ。」
悠介は、決意を込めた眼差しで言った。
「……また忍び込むのかよ。」
鏑木が呆れたようにため息をつく。
「こいつ……本当に岡っ引きなのか?」
「まぁ、今さらだろ。」
悠介は苦笑しながら立ち上がった。
「次の標的は、大谷重隆だ。」
悠介と鏑木は、新たな敵へと向かって歩き出した——。
奉行所に持ち込まれた証拠の書状と三条屋の抜け荷に関する記録は、幕府内でも問題視されることになった。
「だが……妙だな。」
悠介は、平次親分の長屋の一角で腕を組みながら呟いた。
「妙?」
お美代が首をかしげる。
「佐原は、確かに幕府内で抜け荷を取り仕切ってた奴だった。
でも、あいつは単なる“手駒”だったんじゃねぇか?」
「……つまり?」
「黒幕は、まだ別にいる。」
悠介は、真剣な目つきで言った。
「それに……黒ずくめの奴ら、ただの手練れじゃなかったな。」
「確かに……あの統率の取れた動き、普通の浪人崩れじゃねぇ。」
鏑木もキセルを咥えながら、険しい表情で頷いた。
「佐原を消したのは、幕府の中でもかなりの地位にいる奴の命令だろうな。」
「ってことは、そいつが本当の黒幕ってことか?」
お美代が眉をひそめる。
「だが、誰がそれに関わっているのかまでは分かってねぇ。」
悠介は、スマホを取り出して画面を見た。
「使用回数: 残り2回」
(この回数も、慎重に使わねぇとな……。)
悠介は、拳を握りしめた。
「……もう少し調べる必要があるな。」
「それなら、江戸城の中にいる知り合いに探らせるって手もあるぜ。」
鏑木が低く呟いた。
「知り合い?」
悠介が目を向けると、鏑木は渋い顔で頷いた。
「俺がかつて仕えていた上司の中で、まだまともな奴が一人だけいる。」
「そいつが、城の中の情報を探ってくれるのか?」
「可能性はある。」
鏑木はキセルを叩きながら、真剣な表情を見せた。
「だが、危険な賭けだ。そいつが黒幕側に寝返ってたら、こっちが殺される。」
「……それでも、やるしかねぇな。」
悠介は、強く頷いた。
「綾の手配も、幕府の黒幕が消さねぇ限り解かれることはねぇ。」
「よし……じゃあ、城へ向かうか。」
悠介と鏑木は、江戸城の門の前に立った。
「……城の中に入るのは、緊張するな。」
悠介は、額の汗を拭った。
「お前が忍び込んだことは内緒にしておいてやる。」
鏑木がニヤリと笑う。
「ったく……余計なことを思い出させんな。」
悠介は苦笑しながら城門をくぐった。
(ここに、黒幕がいるのか……。)
悠介は、城内の空気を肌で感じながら慎重に歩を進めた。
「俺の知り合いは、町奉行の筆頭与力・樋口重蔵だ。」
鏑木が小声で言った。
「そいつなら、幕府の内部情報を持っている可能性が高い。」
二人は、城の廊下を進みながら樋口の執務室へ向かった。
やがて、静かに襖を開けると——
「おや、珍しい客だな。」
机に座って書状を見ていた男が、悠然と微笑んだ。
「久しいな、鏑木。」
「おう、樋口。」
鏑木は、静かに座ると悠介を紹介した。
「こいつは悠介。俺と一緒に事件を追ってる男だ。」
「……あの“スマホ岡っ引き”と噂の?」
「な……?」
悠介は驚いた。
「お前、俺のこと知ってんのか?」
「江戸の町で、妙な小道具を使って捜査をしている男がいるという話は、幕府の中でも噂になっている。」
樋口は静かに言った。
「……で、俺たちに何の用だ?」
鏑木が切り出すと、樋口は少し目を細めた。
「佐原の件だろう?」
「……!!」
悠介と鏑木は、目を見開いた。
「やはり、知っていたか。」
「それくらいは、当然だ。」
樋口は、ゆっくりと茶を啜った。
「幕府の内部で、抜け荷の件が問題になっているのも事実だ。
しかし……それを止めようとする勢力と、見逃そうとする勢力がある。」
「そりゃ、どっちが黒幕かわかりやすいな。」
悠介が皮肉っぽく言うと、樋口は苦笑した。
「私が言いたいのは、“簡単には決着がつかない”ということだ。」
「……つまり?」
「黒幕は、佐原だけではない。」
樋口は、厳しい表情で続けた。
「この事件の背後には、もっと大きな力が動いている。」
「もっと大きな力……?」
悠介は、少し身を乗り出した。
「幕府の老中、大谷重隆。」
「……!!!」
鏑木が息をのんだ。
「老中……!?」
悠介も驚愕した。
「若年寄の一人が抜け荷を仕切ってるのかと思ってたが……
そのさらに上の権力者が絡んでいるってことか?」
「その可能性が高い。」
樋口は、静かに頷いた。
「大谷重隆は、江戸の経済を握る大物であり、阿片の流通に関しても黙認している可能性がある。」
「つまり……綾の手配も、この老中が握ってるってことか?」
「……おそらく、そうだ。」
悠介は、深く息を吐いた。
(これは……とんでもねぇ相手を敵に回したな。)
「で? どうする?」
鏑木が腕を組みながら言った。
「……やるしかねぇだろ。」
悠介は、スマホを取り出した。
「使用回数: 残り2回」
「証拠が必要だ。」
悠介は、スマホを見つめながら呟いた。
「大谷が関与している証拠を掴まなきゃ、綾の手配も消せねぇ。」
「……そのためには?」
「大谷の屋敷に潜入するしかねぇ。」
悠介は、決意を込めた眼差しで言った。
「……また忍び込むのかよ。」
鏑木が呆れたようにため息をつく。
「こいつ……本当に岡っ引きなのか?」
「まぁ、今さらだろ。」
悠介は苦笑しながら立ち上がった。
「次の標的は、大谷重隆だ。」
悠介と鏑木は、新たな敵へと向かって歩き出した——。
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