氷の上司に、好きがバレたら終わりや

naomikoryo

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特別編6話「次のターン、義両親来襲!」

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▶1. 静寂の3日間(※ただし幻)
千代と徹が大阪に帰って、丸3日。

舞子は、久しぶりにリビングで静けさを味わっていた。

「……しんっ……としてるな……」

「まるで、図書館の深夜ですね」

「せやな。ツッコミもボケもない……人の声って、こんなに少なかったっけって思うくらい」

「我が家の日常が“漫才ホール”だったのかもしれませんね」

赤ん坊の悠真は、昼夜の区別が少しずつついてきており、
ようやく1日2~3時間、舞子はまとまって眠れるようになってきた。

(いやぁ……ようやく少し、心が落ち着いてきたわ……)

そう思った矢先――

誠「そういえば、連絡ありました。今週末、うちの両親が来ます」

舞子「……あ?」

誠「母が“孫に会いたい”と。父は“特に行きたいとは言ってないが、行かないとは言っていない”とのことです」

舞子「つまり来るやんか」

誠「はい。来ます」

 

▶2. 誠の両親、それぞれの“静”
当日。

ピンポーン――
玄関チャイムが鳴る。

「こんにちは、舞子さん。おじゃましますね」

「ご無沙汰してます、舞子さん」

本庄誠の両親。
**母・本庄 恵(めぐみ/62歳)**は、物腰柔らかく清楚な人。
**父・本庄 隆志(たかし/64歳)**は、無口で理知的、現役の大学教授。

ふたりとも、まるで音を立てずに家に入ってくるような静けさで、
舞子は思わず背筋を伸ばした。

(なんやろこの空気……お寺の奥の間みたいな……)

舞子「ど、ど、どうぞ!上がってください!お茶……あ、麦茶でええですか!?紅茶もあります!煎茶もあります!」

恵「ありがとうね。じゃあ麦茶、いただこうかしら」

隆志「私は何もいただかなくても大丈夫です」

舞子「えっ、えっ、でも何か飲んでください!あの、誠も飲んでください!」

誠「僕は……炭酸水を」

舞子「誰が炭酸水の話したん!!?」

 

▶3. 初対面:ばあば2号、じいじ2号
恵は、そっと悠真を抱っこした。

「まぁ……なんて穏やかな顔……。舞子さんに似てるわね」

「えっ……!ほんまですか!?」

「誠が赤ちゃんの頃は、あんまり泣かない代わりに、眉間にしわ寄せててね。
この子は……ずっと笑いそうな顔してる。かわいいわぁ……」

舞子はその言葉に、じんと胸が温かくなるのを感じた。

一方、隆志はソファの前に立ったまま、悠真を観察。

「……このサイズが、成人までに180cm近くなるとは、人体とは不思議ですね」

「そこ観察ポイントそこ!?研究者脳すぎる!!」

 

▶4. 本庄家の“静かな衝撃”
恵と千代――あまりにも“ノリ”が違うふたりのばあば。

・千代は「泣いたら即ツッコミ!抱っこ!歌う!」
・恵は「泣いてもまず見守る。表情で“いま何を思ってるか”を想像する」

舞子は戸惑いながらも、静かに受け入れていった。

「舞子さん。産後すぐにあんなに元気に話せるなんて、すごいと思う。
うちなんて、誠産んだあとは3日間ほとんど無言だったのよ」

「えっ……それは逆に心配なるやつでは」

「静かなのが、落ち着くの。
でも、今日こうしてあなたと話せて、楽しいわ」

その一言が、舞子には何より嬉しかった。

(お義母さん……静かな人やけど、めちゃくちゃあったかい人や)

 

▶5. 夜:男ふたり、台所にて
晩ご飯のあと。

舞子が授乳室にこもっている間、
誠と父・隆志がふたりで洗い物をしていた。

「父さん、来てくれてありがとう」

「誠、おまえが“父になる”のを、ちゃんと見たくてな」

「……僕、父親に見えるか?」

「見えるよ。おまえが赤ん坊を抱いたときの手つき、ちゃんと守る人のものになってた」

「……」

「大丈夫。おまえはちゃんと“続けられる男”だ。母さんも安心してる」

誠はふっと微笑んだ。

「ありがとう。……それ、母にも言ってやって」

 

▶6. 翌朝の帰り際:ふたつの家族が、重なるとき
玄関先。
恵が悠真の頬にキスをして、小さな声でささやいた。

「あなたが来てくれて、私たち家族はまた“始まり”ました。ありがとうね」

隆志は、赤ん坊に小さく頭を下げてから、静かに笑った。

「では、また来る。今度は研究室の学生を連れてきてもいいか?」

「いやそれはちょっと待って!?教育実習ちゃうし!」

恵:「あら、舞子さんもツッコミ上手ね」

舞子:「……ああ、うちってやっぱり関西人やわ……」

誠:「静かに騒がしく、ですね。……家族って、こういうものかもしれません」

舞子:「ほんま、それやな」
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