氷の上司に、好きがバレたら終わりや

naomikoryo

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特別編5話「孫はひとり。愛はふたり分!」

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▶1. 父、東京上陸す。
千代が上京してから約3週間。
舞子と悠真の生活も、ようやく夜泣きに慣れはじめていた――頃。

「舞子、明日お父ちゃん東京来るで」

「え、マジで? あの“筋金入りの昭和おじさん”が?東京嫌いちゃうかったっけ?」

「孫の力ってのはな、コンクリートも動かすんやで」

「じいじじゃなくて工事車両やん」

 

千代の夫・**宮本徹(とおる/60歳)**は、
無口で実直、昔ながらの職人気質。
スマホも「電話機」としてしか使っていないレベルのアナログ派。

そんな彼が――「孫に会いたい」と口にした。

それだけで、千代は大騒ぎ。

「ほら、掃除!洗濯!悠真の服!誠くん、ひげ剃って!なんやしらんけどお祝いっぽくして!」

舞子:「お母ちゃん、あんたの旦那やろ」

千代:「せやけど“じいじ”モードのあの人は別人やねん!気ぃつけや!」

 

▶2. ご対面!男たちの沈黙
翌日、正午。

東京駅の改札に現れたのは――
中肉中背、作業服風のシャツにハンチング帽という、どこか“昭和の大工”な佇まいの徹だった。

舞子:「ほんまに来た……!」

誠:「まさか新幹線、自由席で来られましたか?」

徹:「指定や。ワシかて年齢的に腰きつい」

千代:「孫の話になったら“年やから”とか急に言い出すから要注意やで」

 

病院以来、舞子の家に初めて足を踏み入れた徹は、
リビングに置かれたベビーベッドを見て、ぴたりと動きを止めた。

悠真、スヤスヤ。

その寝顔をじっと見つめ、
しばらく無言だった徹が、ぽつりと。

「……なんや。ちっこいな……」

千代:「当たり前やろ!まだ1ヶ月や!おにぎりちゃうで!」

徹:「ちがう、そうやなくて……こいつが、舞子の……ほぉ……」

目尻が少し、下がった。

「……目元、舞子やな。ほれ、鼻もや。耳も。あれか、骨格までワシに似とるか」

千代:「いや、そこは誠くんに似とるとこや!うちの婿やで!見てわかるやろ!」

徹:「ワシにも似とる!これは確実にワシの血や!」

千代:「孫は私のもんや!あんたはまだ“孫ビギナー”やろ!」

徹:「孫にビギナーとかプロとかあるかい!」

舞子:「どっちでもええわ!!!うちの子や!!!」

誠:(静かにスマホで録音ボタンを押す)

 

▶3. 張り合いが止まらない
午後。リビングにて。

千代:「悠真、おばあちゃんが抱っこしよな~~♪はい、おいで~♡」

徹:「おいおい、ちょっと貸してみ?男の抱っこも必要やろ。社会勉強や」

千代:「なんの社会や!!?」

徹:「ワシの抱っこのが、背筋ピンとしてて男の子向きや!ほれ見てみ、あったかいやろ」

千代:「あんた、まだミルクも作られへんやん!!哺乳瓶の洗い方知らんやん!!昨日“乳首”って言うの恥ずかしがってたやん!!」

徹:「“乳首”言わすな!ほれ、悠真~。じいじが来たで~。覚えてな~、この顔~」

悠真:「……ふぇっ(泣きそう)」

千代:「ほら言わんこっちゃない!!!返しぃ!!」

徹:「千代、それは言いがかりや!!」

舞子:「ちょっと!!悠真を“取り合うな”!育児は争奪戦ちゃうぞ!!」

誠:「今のところ勝者、いないですね」

 

▶4. 夜。じいじの涙
夕食後。
千代が片付けをしている間、舞子と誠は洗濯物。
リビングに残されたのは――悠真を抱っこする徹だけだった。

赤ん坊の体は軽くて、小さくて、でも手足はムズムズと動いている。

徹は、低い声で、ぽつりと話しかけた。

「……おまえのママな、昔から泣き虫でな。
でもな、大事なときは絶対に踏ん張る子やったんや」

悠真は、ふにゃ、と小さく声を上げて、手をぎゅっと握った。

「そやから……おまえもな、しっかり泣いて、しっかり生きろ。
じいじが、守ったるさかいにな」

その瞬間。

千代:「……なに感動タイム勝手にしとんねん。
こっち泣いてまうやろがい……!」

舞子:「うちも泣くわ、もう……!」

誠:「これ録音して正解ですね……家宝にします」

徹:「え、録音て……!?おい!消せ!ワシの昭和魂が……!」

千代:「あんたの魂、意外と情緒型やん!」
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