38 / 42
スピンオフ編 《悠真、初彼女疑惑!? 本庄家でクリスマス〈高校1年ver.〉》
しおりを挟む
▶1. 氷の貴公子、本庄悠真(16)
冬の朝。1限目直前の教室。
いつものように誰とも目を合わせず、静かに席に座る少年がいた。
本庄 悠真(ほんじょう・ゆうま)。高校1年生。
整った顔立ち、スラリとした体格、物静かで無駄な会話をしない。
そして頭脳明晰・スポーツ万能。
……結果、クラスではこう呼ばれている。
「氷の貴公子」。
別に本人がツンとしてるわけでも、誰かを冷たくあしらっているわけでもない。
ただ、「興味のないことは話さない」だけ。
しかも、誰にでも親切で、提出物は完璧。
職員室に呼びに行けば先生が逆に恐縮するほどの「ザ・優等生」。
だが、そんな“クール完璧男子”も――
(やばい、今日クリスマスイブやん……)
心の奥では、たったひとりの女の子のことで、朝から心臓が落ち着かないでいた。
▶2. 彼女の名前は――谷川 ひより
クラスメートの谷川 ひより。
同じクラスになったのは、この春が初めてだった。
清楚系美少女。やわらかい髪と、大人しめな目元。
美術部所属。口数は少ないが、周囲への気遣いができる優しい子。
静かな雰囲気が、どこか自分と似ていて――
でも、なぜか一緒にいると、落ち着く。
唯一、ひよりとは、ふたりきりでも会話が自然に続く。
だが、だからこそ――
悠真は彼女の前では、どうしてもツンデレ気味になってしまう。
(……なんか、こう、ちゃんと話したいのに、距離感バグるっちゅうか……)
(それにしても、あの子、俺のことどう思ってんのやろ)
(この前、美術室のスケッチブックに“猫とたこ焼き”描いとったの、まさかうちん家の話ちゃうよな?)
※実家が“伝説のたこ焼き一家”と呼ばれていた過去は、まだ彼女には話していない。
▶3. 放課後、突然のお誘い
放課後。鞄を閉めようとしていた悠真のもとへ、ひよりがそっとやってきた。
ひより:「……あのさ、本庄くん」
悠真:「ん?」
ひより:「今日……家、空いてる?」
悠真:「……は?」
ひより:「いや、その……。明日クリスマスで、今日は家族と過ごす日って感じじゃないかなと思って……。
もし、空いてるなら……話したいこと、あって」
(えっ……え、え、これって何のフラグ?)
(ちょ待て、落ち着け本庄。これはただの話し合いや。美術部的な会話の可能性もある。
そもそも女子が男子の家に突然来るとか、漫画か)
悠真:「……まぁ、別に。空いとるけど」
ひより:「じゃあ……行ってもいい?」
悠真:「あ、ああ……ええよ。来れば……」
(うわっ、語尾関西なりかけた!キープ標準語……!)
▶4. 本庄家・リビングにて
玄関チャイムが鳴ったのは、夕方5時前。
「ピンポーーーン♪」
母・舞子が、全力で出ていった。
舞子:「いらっしゃ~い!よう来てくれたねぇ~!寒かったやろ!?」
ひより:「あ……こんにちは。おじゃまします……」
悠真:「母さん、テンションいつもより2割増しやから気にせんでええからな」
舞子:「ちょ、あんた、制服のボタンちゃんと閉めてる!?
そんなんやったら“氷の貴公子”って呼ばれてる意味なくなるで!」
悠真:「やめろや、その名前で呼ばんといて……」
ひより:「……あっ、本当に呼ばれてるんだ……」
悠真:「ちがっ、それは誰かが勝手に言ってるだけで……」
舞子:「なぁ?なぁ?氷のくせに家ではよう喋るやろ?」
悠真:「だから言うなって!!!」
(うわ~~終わった~~家庭用モードバレた~~)
▶5. ツンデレの壁、崩れる
ひより:「……ふふっ」
悠真:「な、なにが?」
ひより:「ごめん。なんか、想像してたよりずっと……楽しそうな家だなって」
悠真:「いや、別に楽しさとかそんなんちゃうけど。普通やろ、うちん家」
ひより:「ううん。いいな。うち、兄弟もいないし、こんなに笑ってるお母さん見たことないから……」
悠真:「……」
(なんやろ、この子の“ふっ”て笑う顔、ずるい。目ぇ逸らしたくなるくせに、見てまう)
ひより:「でね、今日来たの……ただ話したいだけじゃなくて。
……ちょっと、聞いてほしいことがあって」
悠真:「……なに?」
ひより:「わたし、本庄くんのこと、もっと知りたいなって……思ってる」
悠真:「……」
ひより:「いまの“家での悠真くん”とか、意外で、すごくいいなって思って……。
だから……これからも、もっと話してもいい?」
悠真:「……そんなん、こっちが言いたいぐらいやし」
ひより:「……え?」
悠真:「あーちゃうねん、いや、ちが……あの、
お前のこと、もっと知りたいなって、うちも思っとるって話やんか……」
ひより:「……“うち”?」
悠真:「――はっ!!」
(出た!!大阪弁!!完全に“うち”って言った!!)
ひより:「……関西、出身?」
悠真:「……母さんがな。ほんで、家ん中ではもう、出まくんねん。……バレたな」
ひより:「ふふ……そっちの悠真くんも、好きだよ」
悠真:「……ずるいわ、お前」
冬の朝。1限目直前の教室。
いつものように誰とも目を合わせず、静かに席に座る少年がいた。
本庄 悠真(ほんじょう・ゆうま)。高校1年生。
整った顔立ち、スラリとした体格、物静かで無駄な会話をしない。
そして頭脳明晰・スポーツ万能。
……結果、クラスではこう呼ばれている。
「氷の貴公子」。
別に本人がツンとしてるわけでも、誰かを冷たくあしらっているわけでもない。
ただ、「興味のないことは話さない」だけ。
しかも、誰にでも親切で、提出物は完璧。
職員室に呼びに行けば先生が逆に恐縮するほどの「ザ・優等生」。
だが、そんな“クール完璧男子”も――
(やばい、今日クリスマスイブやん……)
心の奥では、たったひとりの女の子のことで、朝から心臓が落ち着かないでいた。
▶2. 彼女の名前は――谷川 ひより
クラスメートの谷川 ひより。
同じクラスになったのは、この春が初めてだった。
清楚系美少女。やわらかい髪と、大人しめな目元。
美術部所属。口数は少ないが、周囲への気遣いができる優しい子。
静かな雰囲気が、どこか自分と似ていて――
でも、なぜか一緒にいると、落ち着く。
唯一、ひよりとは、ふたりきりでも会話が自然に続く。
だが、だからこそ――
悠真は彼女の前では、どうしてもツンデレ気味になってしまう。
(……なんか、こう、ちゃんと話したいのに、距離感バグるっちゅうか……)
(それにしても、あの子、俺のことどう思ってんのやろ)
(この前、美術室のスケッチブックに“猫とたこ焼き”描いとったの、まさかうちん家の話ちゃうよな?)
※実家が“伝説のたこ焼き一家”と呼ばれていた過去は、まだ彼女には話していない。
▶3. 放課後、突然のお誘い
放課後。鞄を閉めようとしていた悠真のもとへ、ひよりがそっとやってきた。
ひより:「……あのさ、本庄くん」
悠真:「ん?」
ひより:「今日……家、空いてる?」
悠真:「……は?」
ひより:「いや、その……。明日クリスマスで、今日は家族と過ごす日って感じじゃないかなと思って……。
もし、空いてるなら……話したいこと、あって」
(えっ……え、え、これって何のフラグ?)
(ちょ待て、落ち着け本庄。これはただの話し合いや。美術部的な会話の可能性もある。
そもそも女子が男子の家に突然来るとか、漫画か)
悠真:「……まぁ、別に。空いとるけど」
ひより:「じゃあ……行ってもいい?」
悠真:「あ、ああ……ええよ。来れば……」
(うわっ、語尾関西なりかけた!キープ標準語……!)
▶4. 本庄家・リビングにて
玄関チャイムが鳴ったのは、夕方5時前。
「ピンポーーーン♪」
母・舞子が、全力で出ていった。
舞子:「いらっしゃ~い!よう来てくれたねぇ~!寒かったやろ!?」
ひより:「あ……こんにちは。おじゃまします……」
悠真:「母さん、テンションいつもより2割増しやから気にせんでええからな」
舞子:「ちょ、あんた、制服のボタンちゃんと閉めてる!?
そんなんやったら“氷の貴公子”って呼ばれてる意味なくなるで!」
悠真:「やめろや、その名前で呼ばんといて……」
ひより:「……あっ、本当に呼ばれてるんだ……」
悠真:「ちがっ、それは誰かが勝手に言ってるだけで……」
舞子:「なぁ?なぁ?氷のくせに家ではよう喋るやろ?」
悠真:「だから言うなって!!!」
(うわ~~終わった~~家庭用モードバレた~~)
▶5. ツンデレの壁、崩れる
ひより:「……ふふっ」
悠真:「な、なにが?」
ひより:「ごめん。なんか、想像してたよりずっと……楽しそうな家だなって」
悠真:「いや、別に楽しさとかそんなんちゃうけど。普通やろ、うちん家」
ひより:「ううん。いいな。うち、兄弟もいないし、こんなに笑ってるお母さん見たことないから……」
悠真:「……」
(なんやろ、この子の“ふっ”て笑う顔、ずるい。目ぇ逸らしたくなるくせに、見てまう)
ひより:「でね、今日来たの……ただ話したいだけじゃなくて。
……ちょっと、聞いてほしいことがあって」
悠真:「……なに?」
ひより:「わたし、本庄くんのこと、もっと知りたいなって……思ってる」
悠真:「……」
ひより:「いまの“家での悠真くん”とか、意外で、すごくいいなって思って……。
だから……これからも、もっと話してもいい?」
悠真:「……そんなん、こっちが言いたいぐらいやし」
ひより:「……え?」
悠真:「あーちゃうねん、いや、ちが……あの、
お前のこと、もっと知りたいなって、うちも思っとるって話やんか……」
ひより:「……“うち”?」
悠真:「――はっ!!」
(出た!!大阪弁!!完全に“うち”って言った!!)
ひより:「……関西、出身?」
悠真:「……母さんがな。ほんで、家ん中ではもう、出まくんねん。……バレたな」
ひより:「ふふ……そっちの悠真くんも、好きだよ」
悠真:「……ずるいわ、お前」
12
あなたにおすすめの小説
包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・
希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!?
『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』
小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。
ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。
しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。
彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!?
過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。
*導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。
<表紙イラスト>
男女:わかめサロンパス様
背景:アート宇都宮様
一夜限りのお相手は
栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
誘惑の延長線上、君を囲う。
桜井 響華
恋愛
私と貴方の間には
"恋"も"愛"も存在しない。
高校の同級生が上司となって
私の前に現れただけの話。
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
Иatural+ 企画開発部部長
日下部 郁弥(30)
×
転職したてのエリアマネージャー
佐藤 琴葉(30)
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
偶然にもバーカウンターで泥酔寸前の
貴方を見つけて…
高校時代の面影がない私は…
弱っていそうな貴方を誘惑した。
:
:
♡o。+..:*
:
「本当は大好きだった……」
───そんな気持ちを隠したままに
欲に溺れ、お互いの隙間を埋める。
【誘惑の延長線上、君を囲う。】
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
兄貴がイケメンすぎる件
みららぐ
恋愛
義理の兄貴とワケあって二人暮らしをしている主人公の世奈。
しかしその兄貴がイケメンすぎるせいで、何人彼氏が出来ても兄貴に会わせた直後にその都度彼氏にフラれてしまうという事態を繰り返していた。
しかしそんな時、クラス替えの際に世奈は一人の男子生徒、翔太に一目惚れをされてしまう。
「僕と付き合って!」
そしてこれを皮切りに、ずっと冷たかった幼なじみの健からも告白を受ける。
「俺とアイツ、どっちが好きなの?」
兄貴に会わせばまた離れるかもしれない、だけど人より堂々とした性格を持つ翔太か。
それとも、兄貴のことを唯一知っているけど、なかなか素直になれない健か。
世奈が恋人として選ぶのは……どっち?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる