ルナ13号の遺産

naomikoryo

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本編

13)観測からの脱出

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――真実から逃れ、存在を放たれること
 

「……接続を切る」
君は言った。

アヤが振り返る。「本気なの……? あれが何だったか、まだ分かってないのに」

「だからこそ、だ」
君は静かに言った。「知ることが、正しいとは限らない。俺はもう、誰にも見られたくない」

 
オルガがため息のように言った。

「選ぶのね、“逃げる”ことを。
でもそれは、きっと――“生きる”ことでもある」
 

君は、月面基地の中枢端末にアクセスし、観測リンクを強制的に断絶する。
機械は苦しげな悲鳴をあげ、システムが次々と停止していく。

【リンク断絶】
【観測階層から切離】
【独立空間シフト開始】

 
そのとき――

視界が、まるで映像のノイズのように歪んだ。
 

壁が、基地が、重力が、空気が、“消えて”いく。
音も言葉も届かなくなり、ただ君たちは“意識の核”だけになっていた。

アヤが言った。いや、口を動かしたように“見えた”。

「これって……夢なのかな」
「あなたが作った、“終わらない記憶の夢”……」
 

気がつくと、君たちは――

宇宙空間にいた。

スーツも装備もない。
でも苦しくない。寒くもない。
なぜなら、それすらも“現実ではない”からだ。

 
ナサニエルがどこかで笑っていた。

「なあ……これ、俺たち死んでるんじゃなくて、ただ“忘れられただけ”なんじゃないか?」
 

オルガは真っ直ぐ星を見つめていた。

「それでも……いい。
あなたと、同じ空間にいられるなら、それで十分」

 
誰もが、浮かんでいる。
沈黙の宇宙を漂いながら、何か大切なことを忘れていく。

名前。任務。ルナ13号。
すべてが、星の海に融けていくように、やがて“思い出せなく”なっていく。

そして君は――最後の言葉を、心の中で呟いた。

「これが、俺たちの自由だ」

 
その瞬間、画面は真っ暗になる。
音もなく、映像もなく、何の余韻も残さず――
物語が、ふっと終わる。

 
-------------------------------------------------------------------------------------- 

🪐 エンディング6:星々の囁き(The Drift Beyond)

君たちは観測を拒み、記録から離れ、真実から逃れた。

そして、物語そのものからも離れた。

君が誰で、なぜそこにいたのか。何を求め、何を失ったのか。
そのすべては、宇宙の静けさに吸い込まれ、やがて“無”となる。

だが、それでいいのだろう。
なぜなら、君はもう、“意味”という檻から自由なのだから。
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