再び君に出会うために

naomikoryo

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本編

果報者

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月曜日の中学校舎は朝から大騒ぎだった。
特に3年生の教室では、あの『小宮貴子』に彼氏が出来た、しかも1学年下のあの『神山太一』だと

あちこちから情報が飛び交った。
太一も3時限目が終わった休み時間から、クラスメートからの質問攻めにあった。
ただ、男子連中はやっかみに似た軽い冷やかしのようなもので、あっという間に、
「いいなぁ~、年上の姉さん女房かぁ~」
「あっという間に大人の階段を突っ走るんだろうなぁ~」
と言いながら、勝手にテンション駄々下がり状態になっていった。
この日、ショックで早退した男子生徒は10人以上いたとかいないとか。
その点女子達は、
「あんな大人っぽい綺麗な人が何でこんなのを?」
「何か弱みを握られてるんじゃないかしら?」
「これのどこに魅力を?」
と、日頃アホな事ばかり言ったりしたりしている太一に疑問しか持てずにいた。
「・・・美智子は知ってるのかしら?」
と、やはり昔からの幼馴染な近藤静香がポツリと言ったのを気にはしたが、太一はもう腹をくくった

いた。
もし美智子が聞いてきても、例の生き返りの話はしないでおこうと考えていた。
ただ美智子から話しかけられることも2学年になってクラスが変わってからはほとんど無かった。
これについても、別段美智子から何か話をしてくる事は無いと思った。
それに、おそらく夕べ健に言ったことを明日香経由で聞くだろうと。
昨日、手を繋いだまま神社の階段まで送りながら大体の口裏は合わせたので、その内容になるが。

太一からどうのこうのと言うのは今までからしても不自然だから、貴子からモーションをかけた、と

いうことにした。
二人とも保育園の頃からの仲だから、小さい頃の約束を忘れずにいた貴子が、中学卒業を前に気持ち

にけじめを付ける為に言った告白めいたものに太一が答えたと。
何なら、嫌いなわけは無いのだから少し付き合ってみなさい、と言われ付き合い始めたぐらいでもい

いわよ、というのを太一は了承した。
少し情けない気もするが、実際その手の事は考えるだけ無駄な太一なので、非常にありがたい提案だ

った。
ただあの時・・・
「あったりまえだろ!嫌いなわけねぇじゃん・・・・・っていうか、むしろ俺も好きだから、でいい

んじゃねぇ?」
と言った言葉に、
「い、いいのよ!・・・・・・・それだと・・・・・・・・・・・あとで・・・・・・・」
貴子がぼそぼそ言って、そうではない方が良いと言うのだ。
(別に俺から告白した、でもいいんだけどな・・・・・)
そうは思ったがそんな貴子の様子から、それ以上口にする事はしなかった。

太一は結局、昼休みも放課後になってもあちこちからの質問攻めに合う事となった。
ただ、上級生でも太一が手伝っている運動部の人たちはかなり穏やかムードで、やはりただの興味本

位でちょっと聞きたいだけのようだった。
太一も答えてるうちに、やはり『自分も好きだから』というワードが抑えきれずに言ってしまい、
「どういうとこが好きなんだ?」
という質問もかなりされてしまった。
最初は悩みこそしたが、結局、
「気が強いけど、基本は甘ったれなとこ。」
とか、
「姉御肌のくせに寂しがりやなとこ。」
と、本当に昔から思っていることを言うことにした。

ようやく放課後二人になれたのはもう下校10分前だった。
「・・・今日はもう帰りましょ。」
という貴子に、
「そうだな・・・・・・・・送りながら、ちょっとだけ探索しておく?」
「・・・・・・いや、あんた・・太一も疲れてるみたいだし・・・・・・」
「・・・とりあえず、図書委員も電気消したくてソワソワしてるみたいだから行こっか。」
「そうね。」
二人で校舎を出て歩き始めると、やはりあちこちの運動部の連中がこちらを見てこそこそ言っている


すれ違う見知らぬ生徒達の視線も刺さっていた。
「あ~~、みんなハイキックしてしまいたい!」
貴子がイラっとした顔で呟いたので、
「付き合うことにしてしまおうって言ったのは貴子だろ?」
「だって、こんなに面倒だなんて・・・・・」
「まぁ、すぐほとぼりも覚めるよ。」
「そうだけど・・・・・」
「こうして二人でいるのも、みんなにも当たり前に見えるようになるよ。」
太一が屈託の無い笑顔で言った。
「それとも・・・・・・・貴子はほんとは嫌だった?」
「そ、そんなわけないじゃん!」
「じゃあ、いいじゃん。」
「・・・・・・・・・相変わらずの超プラス思考ねぇ~。」
軽く溜息をつきながら言った。
「溜息をつくと、幸せが逃げちゃうよ。」
太一がふっと言ったので、
「何か見たの?」
「うん、夕べ、何たらサスペンスってやつ!・・・・・・・・・なんか、こう、最後に必ず犯人は崖

に来るやつ。」
ニコニコ顔で話し始めた。
「あ~、あの手ね。」
「こう、男と女の欲望がぐちゃぐちゃに入り乱れて・・・・・」
「それは?」
「健が言ってた!」
「全く・・・・・・・・そんなの見たってあんたには大して分からないでしょう?」
「甘いな、貴子!」
「えっ?」
「俺だって、数日だけど貴子とこうしていたことで成長したのさ。」
「ふ~ん。」
「クラスの連中は今後俺の事を『恋愛マスター』と呼ぶらしいぜ。」
「・・・・・・・・・・」
「それに、どうやら俺はこの街で一番の果報者らしいぜ。」
「果報者って・・・・・・・・意味知ってる?」
「ヒーローってことだろ?」
「・・幸せ者ってこと・・・・・・タナボタ系の・・・・・」
「いいじゃん!」
太一は嬉しそうに言った。
「それってどうして言われてるか・・・・・・・まぁ・・・・・いいわね。」
貴子は面倒になった。
「貴子と付き合ってるのが幸せ者ってことなんかな?」
「そうそう、そういう言われ方よ?」
「それでいいじゃん!」
「えっ?」
「こんな綺麗な貴子と手を繋いだり、おにぎり作ってもらったり・・・・・・幸せなんじゃね?」
「は?・・なんで・・・・そんな・・・・・ストレートな・・・・・・・」
貴子の頬が少し赤く染まった。
それで、困ってしまって、ちょっと眉間にしわが寄ってしまった。
すると更に、
「ほらほら、そんな恐い顔しない・・・折角の綺麗な顔が台無しだよ。」
軽く手を繋いできてそう言った。
「・・・・・あんた・・・・・・それもドラマの影響でしょう?」
貴子は繋がれた手をギュッと握り締めながら、真っ赤な顔で太一を睨みつけて言った。
「うん。」
太一の目は夕日が映り込み、きらきら輝いているようだった。
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