再び君に出会うために

naomikoryo

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本編

偽装カップル

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結局、太一も急いで来たわけで、勉強道具など一切持って来ず、探索が終わるとさっさと帰ることになった。
探索も10分ほどで切り上げて、この辺の地図をコピーして、すでに探索した場所の確認をした。
貴子も表面には出さないがテンションは駄々下がりで、早く家に帰ってワタに詰め寄りたい気持ちでいた。
まぁ、自分の中にいるのだから実際はそんな事は出来ないけれど。
「なかなか見つからないわねぇ。」
大きな溜息のあと、貴子が言った。
「もう消えてしまっている、っていうのが一番マズイんだけどな。」
「そうねぇ・・・・・・それだと、今までは良いとしても、これからも無駄骨になってしまうし・・・・」
「俺らだけじゃ生き返らすのは無理なんだよな?」
(太一がどうという以前に、生命と物理エネルギーの発生係数が不足しているから・・・)
「あ~・・・・そのエネルギー不足を補う別の方法は無いんだよな?」
(ないね。)
「でも、消えてしまっているとしても・・・・・そうなのか、そうじゃないのか知る手段は無いの?」
(う~~~ん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
図書館の横の小さな公園にあるベンチの前まで来たので、二人はどちらからともなく座った。

貴子:「・・・・・太一の体力がもっと増えれば、探索距離は伸びるのかしら?」
スサ:(勿論)
太一:「それをいうなら、貴子の体力も増えれば貴子の膨張も・・・」
貴子:「増幅でしょ!人を風船みたいに・・・」
太一:「あっ・・・・・・そう、それ。」
貴子:「そうなの?」
ワタ:(それもあると思うわ)
貴子:「じゃあ、来週末は何か、それも取り入れましょう。」
太一:「それって?」
貴子:「運動よ!」
太一:「あ~・・・・・・・・・・ジョギングとか?」
貴子:「う~~~ん・・・・・・・・・・」
スサ:(俺たちも何かしたいな!)
太一:「スサが自分達も何かしたいって。」
ワタ:(いいわね~!・・・・・・・私たち自身の体力向上も必要よ)
貴子:「使うのは私の身体じゃないの!」
太一:「そういえば・・・・・・貴子ってテニスしてたんじゃなかったっけ?」
貴子:「もう引退したわ。」
太一:「引退って、秋じゃないの?」
貴子:「こんな小さな学校でやってたって試合で勝てるわけじゃないからね・・・・・・・っていうか部員足らなくて春に廃部になったわよ・・・・女子部は。」
太一:「あ~、それで女子の姿が無かったのか!」
太一はお助けマンとして春にテニス部へ何度か顔を出したことがあったが、女子の姿が無くて不思議に思っていた。
ただ、それをあからさまに尋ねるのも恥ずかしくて、結局誰からも聞く事は無くそのうち陸上部のお助けマンが忙しくなってしまったのだ。

貴子:「でも、ただ走るよりはそれもいいわね。」
太一:「じゃあ、運動公園に行ってみるか。」
スサ:(あの観覧車のあったとこ!?)
ワタ:(あの観覧車のあったとこ!?)
二人?は同時に言った。
太一と貴子も、
「観覧車は乗らない!」
と、同時に言った。


その時、
健  :「やっぱ、兄ちゃんか!」
図書館の方から歩いてくる二人組の男の方が言った。
太一 :「お~、健か。」
明日香:「こんにちわ。」
太一 :「こんにちわ。明日香ちゃん、久しぶりだね。」
貴子 :「二人とも、こんにちわ。」
健は少し驚いた顔をした。
明日香:「貴子ねぇちゃん!!」
貴子 :「ウフフ。」
健  :「えっ?・・・・・・・・本当だ、貴子ねぇちゃんじゃないか!」
健はあちこち貴子を見て言った。
太一 :「・・・・・・・・・・あ~・・・・・・・・・」
貴子 :「お久しぶりね!」
太一 :「・・・・・小柳ルミ子かっていうの・・・・・・」
太一の母ちゃんは寄り合いのカラオケでこの歌を歌うのが好きなので覚えていた。
貴子 :「あんたも古いわねぇ・・・・・・・フフフ。」
貴子が太一に笑いながら言っているのを不思議そうに見つめて、
健  :「もしかして・・・・・・・・・・・ふたり・・・・・」
太一はハッとして、
「違う違う・・・・・そんなんじゃないんだよ。」
と慌てて言った。
貴子 :「そうそう・・・・・・・ちょっと、お、お互いに用事があって・・・・・ね?」
貴子も太一に相槌を求めた。
明日香:「ふ~ん。」
健  :「・・・・・・・・・・・」
太一 :「そんなことより、お前達は何してるんだ?」
健  :「図書館でテスト勉強。」
太一 :「しれっと言うな!」
健  :「兄ちゃん達は?」
太一 :「俺が勉強なんかするわけないだろ!」
健  :「じゃあ・・・」
太一 :「俺は・・・・・走ってたんだよ、図書館の周りを!・・・・・・・・・そんでさっき貴子に会って・・・・・」
健  :「・・・・・・いや、しばらく前から兄ちゃんに似た人いるなぁ~って言ってたんだよな?」
健は太一に冷たい目線を送っている。
それでいて明日香に意見を求めた。
明日香:「う・・・うん。・・・・・・・・・・・何か、笑い声が騒がしいねぇっていって、誰だろうと見てみたら・・・」
太一 :「・・・・・・見てみたら?」
貴子 :「・・・・・・・・・・・・」
健  :「手つないで、いちゃいちゃしてるカップルで。」
太一 :「ほ、、、ほう・・・・・」
健と明日香は太一と貴子の姿をまじまじと見て、
健  :「に、兄ちゃん達だよな?」
太一 :「ち、ち、違うな!・・・・・・・なぁ、あ・・・・あれだ・・・・・・あれ。」
思いっきり慌てた様子の太一に向かって溜息をつくと、
貴子 :「そう!私たち、付き合ってるの。」
と貴子がさらっと言った。
健  :「やっぱ、そうなんじゃん!」
明日香:「すご~い、貴子ねぇ!」
明日香は貴子が潔くスパッと言ったことにひどく感心してるようで、胸の辺りで両手を握っている。
太一 :「ばっ、何を、お前・・・」
太一は更に慌てている。
貴子 :「あんたたちもいつも仲良くっていいことだね。」
と二人に微笑んで言った。
明日香:「はい!」
貴子 :「まぁ~細かい事はまたそのうちってことで・・・・・」
健  :「あっ、そうですね。」
太一 :「何がそうですねなんだ?」
貴子 :「まぁまぁ・・・・・・若い二人の邪魔をしてもね。」
貴子が太一をなだめるように言った。
太一 :「はぁ~??」
太一以外はみな和気藹々とした感じで、
健  :「それじゃ、兄ちゃん・・・・・・帰ってからな。」
と言って、二人は歩き去った。

太一は健が見えなくなると、
「な、何であんなこと言ったんだ?」
とちょっと強めに詰め寄った。
「いいじゃない!・・・・・・どうせ、事が済めば、私たちのことはみんな無かったことになるんだから!」
「え?」
「本当に私たちがこれから付き合ったとしても、美智子のお父さんが・・・・・っていうか、宇宙人たちの記憶を消すときに、みんな消えるのよ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
(いつの間にか貴子は少し涙声になっている、気がする)
「それに、この先もこんな風に二人で行動するなら・・・・・・・もう、いちいち疑われて弁解するのも面倒じゃない!」
「・・・・・・・・・まぁ・・・・・・・・・それも確かに・・・・・・・・・」
実際、太一はクラスの男子どもからも上級生の女と放課後も良く一緒にいるけど付き合ってるのか、と聞かれていた。
その度、色々と理由をつけて否定はしているが面倒ではある。
又、明日から学校に行けば、何度か聞かれることになるのは分かっていた。
貴子もそうなのか、と太一は思った。
「そ・・・・・それで・・・・・貴子に、め、迷惑がかかるんじゃなければ・・・・・」
「もうとっくにかかってるんだから、いいの!・・・・・・・・・・それに、美智子の為でしょ!」
「・・・・・うん。」
「もう、私は明日から誰かに聞かれたら、面倒だから、そうよって言っとくからね。」
「あっ・・・・・そ、そう・・・・・・」
「その上で、細かいことをごちゃごちゃ聞いてきたら、あんたに聞いてって言うからね!」
「え~!」
「そのくらいはやりなさいよ!・・・・・・・・・私はあんたのために協力してるんだから!」
「あんたのため?」
「い、いえ・・・美智子・・・美智子の為よ!!美智子の為のあんたの策略を手伝ってるって言う意味よ!」
貴子は少し支離滅裂になりかけているが鈍感な太一は、
「そ、そうだよな。・・・・・・・・うん、わかった!」
と言った。
「とにかく、明日の放課後はこれからの体力作りなんかの計画もしなくちゃね。」
「そ、そうだな。」
「週末のテニスコートの予約はしておくから、道具の用意はしておいてね。」
「わかった。」
「じゃ、帰りましょ!」
「あ、うん。」

少し歩いて、
「はい。」
と貴子は左手を太一の方へ近づけた。
「え?」
「歩きながら、もう少し探索してみましょ。」
「あ、あぁ・・・・・」
「もう、いいじゃない!・・・・・ほら!」
「・・・・・・・よし!」

手を繋いだ二人の影法師が図書館の方へ伸びていた。
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