魔法少女は会社員

naomikoryo

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第5章:拡張する日常、揺らぐ境界

第2話:認められた組織、揺らぐ内部

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水曜日の午後、LinkLine本部――といっても、それはただのレンタル会議室だったが――に、一本の書類が届いた。

A4三枚綴りの公文書。
最上段にはこう記されていた。

【都市魔力災害対応支援団体・準登録認定通知書】
発行者:東京都魔力対策調整課

「……ついに来たね」

ミユキはその書面を机に置いたまま、椅子に背を預けた。

「“仮認可”から“準登録”に昇格。つまりこれで、
私たちは都の“認知下”に入ったってわけね」

アイナがファイルをめくりながら言った。

「うれしいような、面倒くさいような……」

ナナがつぶやく。

「“自由な立場”でいられたのって、本当に一瞬だったわけね」

「でも、必要な流れでもあるわ」

まどかが言った。

「この街で、本気で“魔法”を運用するなら、
行政との関係は避けられない。
避けて通ると、また“制度の外”に落ちる」

ミユキは頷き、机の上に指を滑らせた。

「――問題は、ここからだよ。
“形”を得た以上、今度は“中身”を問われる」

その夜、Slackに似たLinkLineの専用チャットにて、全メンバーに通達が飛んだ。

【通達】LinkLineは東京都より「都市魔力災害対応支援団体」として準登録されました。
今後、外部機関との協力が円滑になる一方、一定の情報公開義務や活動報告が求められます。

最初に反応したのは、支援班の未紗だった。

……すごいです。ここまで来るなんて。
一利用者として、本当に心強いです。

続いて数名の協力者たちも喜びのコメントを寄せた。
だが、その後、ひとつの投稿が空気を変えた。

山吹ナナ:
本音を言えば、私はあまりうれしくない。

数秒の静寂。

ミユキ:
理由、聞いてもいい?

ナナ:
うん。
私は、LinkLineが“制度に寄る”ことに強く懐疑的なの。
あの頃の制度が何を生んだか、忘れてない。
それに、行政の下に入ると、
いずれ“人選”にも手を出される。
再契約者の選定すら、“国の目”で決まるようになる。

アイナ:
わかる。でも現実問題、“制度と離れすぎると支援も回らない”。
誰かが倒れても、医療も情報も保障されない。

ナナ:
じゃあ、それを“国に求める”の?
自分たちで作ろうとは思わないの?

まどかが、小さくコメントを入れる。

まどか:
自分たちで制度を作るのって、
それこそ、すごく“責任が重い”ことだと思う。
多分……怖いよ。
間違えたら、誰かがまた壊れる。

ナナの返信はなかった。

ミユキは、ひとつ深呼吸をして、こう書き込んだ。

ミユキ:
正直に言えば、私も迷ってる。
でも、“中から変えられるかもしれない”と思った。
外にいて叫び続けるより、
中に入って、書類にサインするほうが効く時代になってきた。
それって、魔法じゃなくて、“言葉”の戦い方なんだよね。

そこに、ユリが通知を割って入れた。

ユリ:
都内魔力異常報告件数:前月比128%増加
特に“公共施設での不可視干渉”が拡大傾向
つまり、“誰かが動かないと”もう間に合わない

ミユキは、モニターの明かりの下で、しばらく思案した。

(これは、たぶん“戦い方の再編”なんだ)

LinkLineは、剣だけではなく、
申請書と覚書、説明会と報告義務の中でも“戦う”組織になった。

それを受け入れられるかどうか――
メンバー一人ひとりにとって、それが次の課題だった。

翌日。
まどかとミユキは、オフィス街近くのカフェで再会した。

「ねえ……組織って、どこから“壊れ始める”と思う?」

まどかが言った。

ミユキは少し考えてから答える。

「“理想が共有できなくなったとき”かな。
でも、壊すことが悪いとも限らないよ。
一度壊さないと、次の形にできないこともある」

「そっか……それなら、
たぶん私、まだここにいたい」

「うん。私も」

ミユキはそう言って、まどかのコーヒーにミルクを足した。

「この一杯に、ちゃんと意味を込めて飲んで。
それが今、私たちの“戦い方”なんだから」

まどかは笑った。

“剣のない魔法”が、今、静かに戦いを始めていた。

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