37 / 64
第5章:拡張する日常、揺らぐ境界
第7話:再契約とその先
しおりを挟む
「再契約、したいです」
その言葉が会議室の空気を変えたのは、土曜の午後だった。
LinkLine準本部――都心のレンタルオフィスの一角。
集まっていたのは、いつもの四人と支援班の未紗、
そして――候補者のひとり、佐伯すみれ(さえき・すみれ)、23歳。
小柄で、猫背気味の身体に控えめな声。
でもその瞳は、まっすぐだった。
「……どうして、そう思ったの?」
ミユキが静かに問いかける。
すみれは、一度唇を噛んで、それから答えた。
「私、最初は“魔法がある”って知っただけでびっくりして、
LinkLineのことも“すごい人たち”って思ってました。
でも、活動記録とか、皆さんの書いたガイドライン読んで……
“これ、ちゃんと守らなきゃ、誰か壊れるんだ”って、わかって」
まどかがそっと頷く。
「うん。魔法って、そういうもんだよね」
「でも、私……ずっと、“誰かを助けたい”って思ってた。
友達が心を閉ざしたときとか、
家族が何も言わずに我慢してるのに気づいたときとか。
ただの言葉じゃ、届かない時がある。
だから――
“私にできる魔法があるなら、それを使いたい”って、思ったんです」
アイナがそっと目を伏せる。
「その覚悟は、軽くないよ。
一度再契約したら、もう“ただの人”には戻れない。
何かを守るたびに、自分の一部が削られていく。
それでも、やる?」
すみれは、はっきりとうなずいた。
「はい。私は、“魔法を持つ自分”で生きたいです」
その夜、LinkLineは臨時ミーティングを開いた。
再契約の承認権限はない。
でも、LinkLineは“推薦状”を出せる。
その一筆があれば、都市魔力調整課が再契約を審査する。
「どうする?」
ナナが静かに口を開いた。
「私は……まだ少し引っかかってる。
彼女、若すぎる。
この年齢で“覚悟”とか言われると、昔の自分を思い出してしまう」
「わかるよ」
ミユキは頷いた。
「でも……私たちが“覚悟を判断する側”になっていいのかな。
私はあの子の言葉を聞いて、思ったんだ。
“覚悟があるかどうか”じゃなくて、
“その覚悟に、寄り添えるかどうか”なんだって」
「つまり……?」
「私たちが問われてるのは、“彼女に魔法を持たせるか”じゃなくて――
“彼女が魔法を持ったとき、ちゃんと支えられるか”ってことだよ」
沈黙。
やがて、まどかが小さく微笑んだ。
「なら、私は支える側にいるよ。
だって私も、昔“支えてもらった”から」
アイナも、そっと頷いた。
「彼女の魔法が、誰かの救いになるなら――
その一歩は、ここから始まっていい」
ナナはしばらく黙ってから、ついと目をそらすように言った。
「……責任、取るわよ。
これが、私たちの選んだ未来なら」
ミユキは、小さく笑った。
「じゃあ――推薦、出そう」
数日後。
すみれの再契約は正式に承認された。
魔法核の色は、柔らかな赤。
共鳴属性は「共感」。
都市における感情災害に“感受と緩和”をもたらす、支援特化型の新タイプだった。
LinkLineに、**初の“次世代再契約者”**が誕生した。
それは、制度でも奇跡でもなく――
“意志”が作り出した、小さな未来だった。
ミユキはその夜、LinkLineのチャットにひとことだけ残した。
「私たちの剣は、誰かの言葉を届かせるためにある。
戦う魔法じゃなく、生きる魔法を、今ここに。」
新しい時代の一歩は、確かに、ここに刻まれた。
その言葉が会議室の空気を変えたのは、土曜の午後だった。
LinkLine準本部――都心のレンタルオフィスの一角。
集まっていたのは、いつもの四人と支援班の未紗、
そして――候補者のひとり、佐伯すみれ(さえき・すみれ)、23歳。
小柄で、猫背気味の身体に控えめな声。
でもその瞳は、まっすぐだった。
「……どうして、そう思ったの?」
ミユキが静かに問いかける。
すみれは、一度唇を噛んで、それから答えた。
「私、最初は“魔法がある”って知っただけでびっくりして、
LinkLineのことも“すごい人たち”って思ってました。
でも、活動記録とか、皆さんの書いたガイドライン読んで……
“これ、ちゃんと守らなきゃ、誰か壊れるんだ”って、わかって」
まどかがそっと頷く。
「うん。魔法って、そういうもんだよね」
「でも、私……ずっと、“誰かを助けたい”って思ってた。
友達が心を閉ざしたときとか、
家族が何も言わずに我慢してるのに気づいたときとか。
ただの言葉じゃ、届かない時がある。
だから――
“私にできる魔法があるなら、それを使いたい”って、思ったんです」
アイナがそっと目を伏せる。
「その覚悟は、軽くないよ。
一度再契約したら、もう“ただの人”には戻れない。
何かを守るたびに、自分の一部が削られていく。
それでも、やる?」
すみれは、はっきりとうなずいた。
「はい。私は、“魔法を持つ自分”で生きたいです」
その夜、LinkLineは臨時ミーティングを開いた。
再契約の承認権限はない。
でも、LinkLineは“推薦状”を出せる。
その一筆があれば、都市魔力調整課が再契約を審査する。
「どうする?」
ナナが静かに口を開いた。
「私は……まだ少し引っかかってる。
彼女、若すぎる。
この年齢で“覚悟”とか言われると、昔の自分を思い出してしまう」
「わかるよ」
ミユキは頷いた。
「でも……私たちが“覚悟を判断する側”になっていいのかな。
私はあの子の言葉を聞いて、思ったんだ。
“覚悟があるかどうか”じゃなくて、
“その覚悟に、寄り添えるかどうか”なんだって」
「つまり……?」
「私たちが問われてるのは、“彼女に魔法を持たせるか”じゃなくて――
“彼女が魔法を持ったとき、ちゃんと支えられるか”ってことだよ」
沈黙。
やがて、まどかが小さく微笑んだ。
「なら、私は支える側にいるよ。
だって私も、昔“支えてもらった”から」
アイナも、そっと頷いた。
「彼女の魔法が、誰かの救いになるなら――
その一歩は、ここから始まっていい」
ナナはしばらく黙ってから、ついと目をそらすように言った。
「……責任、取るわよ。
これが、私たちの選んだ未来なら」
ミユキは、小さく笑った。
「じゃあ――推薦、出そう」
数日後。
すみれの再契約は正式に承認された。
魔法核の色は、柔らかな赤。
共鳴属性は「共感」。
都市における感情災害に“感受と緩和”をもたらす、支援特化型の新タイプだった。
LinkLineに、**初の“次世代再契約者”**が誕生した。
それは、制度でも奇跡でもなく――
“意志”が作り出した、小さな未来だった。
ミユキはその夜、LinkLineのチャットにひとことだけ残した。
「私たちの剣は、誰かの言葉を届かせるためにある。
戦う魔法じゃなく、生きる魔法を、今ここに。」
新しい時代の一歩は、確かに、ここに刻まれた。
0
あなたにおすすめの小説
結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~
馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」
入社した会社の社長に
息子と結婚するように言われて
「ま、なぶくん……」
指示された家で出迎えてくれたのは
ずっとずっと好きだった初恋相手だった。
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
ちょっぴり照れ屋な新人保険師
鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno-
×
俺様なイケメン副社長
遊佐 学 -Manabu Yusa-
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
「これからよろくね、ちとせ」
ずっと人生を諦めてたちとせにとって
これは好きな人と幸せになれる
大大大チャンス到来!
「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」
この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。
「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」
自分の立場しか考えてなくて
いつだってそこに愛はないんだと
覚悟して臨んだ結婚生活
「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」
「あいつと仲良くするのはやめろ」
「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」
好きじゃないって言うくせに
いつだって、強引で、惑わせてくる。
「かわいい、ちとせ」
溺れる日はすぐそこかもしれない
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
俺様なイケメン副社長と
そんな彼がずっとすきなウブな女の子
愛が本物になる日は……
Chivalry - 異国のサムライ達 -
稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)
ファンタジー
シヴァリー(Chivalry)、それは主に騎士道を指し、時に武士道としても使われる言葉である。騎士道と武士道、両者はどこか似ている。強い精神をその根底に感じる。だが、士道は魔法使いが支配する世界でも通用するのだろうか?
これは魔法というものが絶対的な価値を持つ理不尽な世界で、士道を歩んだ者達の物語であり、その中でもアランという男の生き様に主眼を置いた大器晩成なる物語である。(他サイトとの重複投稿です。また、画像は全て配布サイトの規約に従って使用しています)
Husband's secret (夫の秘密)
設楽理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
恋と首輪
山猫
恋愛
日本屈指の名門・城聖高校には、生徒たちが逆らえない“首輪制度”が存在する。
絶対的支配者・東雲財閥の御曹司、東雲 蓮の「選んだ者」は、卒業まで彼の命令に従わなければならない――。
地味で目立たぬ存在だった月宮みゆは、なぜかその“首輪”に選ばれてしまう。
冷酷非情と思っていた蓮の、誰にも見せない孤独と優しさに触れた時、みゆの心は静かに揺れはじめる。
「おめでとう、今日から君は俺の所有物だ。」
イケメン財閥御曹司
東雲 蓮
×
「私はあなたが嫌いです。」
訳あり平凡女子
月宮 みゆ
愛とか恋なんて馬鹿らしい。 愚かな感情だ。
訳ありのふたりが、偽りだらけの学園で紡ぐカーストラブ。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる