44 / 64
第6章:都市の深層
第6話:異界定着装置(アーカイヴ)の核心
しおりを挟む
金曜日の朝。
LinkLine本部に一本の警報が届いた。
《警告:都市地下第六層にて異常魔力循環を確認。
定点観測装置より、定常魔力圧の400%増加を検知》
「異界の再拡張……?」
ミユキがスクリーンの地図を睨む。
「違う。これは、“発信型”の魔力だ。
中心から放射されてる」
「まるで、何かが“感情そのもの”を街に送り出してるみたい……」
まどかが端末を覗き込む。
ユリの分析が続く。
《発信源特定:地下第六層・保管指定区域【コアセクション-B】
対象物:“記録装置_ARK-β型”》
アイナが表情を凍らせた。
「まさか、“ARK”がまだ動いてたなんて……!」
かつて、魔法庁の末期。
異界災害の発生を“感情起因”で記録・予測するため、開発された記録装置があった。
それが、《ARK(アーカイヴ・リソース・キープ)》。
全ての“未昇華感情”をデータとして保存し、
異界化した記録の再生を可能にする“再現型感情構築装置”。
本来は「過去の教訓を後世に残す」ためのものだった。
だが、使い方を誤れば――それは“災害を再生する兵器”にもなり得る。
LinkLineは即時出動を決定。
地下第六層――その最奥。
冷却停止したはずの区画で、巨大な球体が淡く脈動していた。
それが、《ARK》。
かつて数百体に及ぶ魔法少女の戦闘記録、感情記録、契約情報を“記憶”として封じ込めた装置。
今そのコアは、勝手に過去の記録を“起動”していた。
まどかが身を震わせる。
「見て……映ってるの、全部“過去の災害”だよ……!」
球体の表面に浮かぶホログラムには、
かつての戦い、怒り、絶望、咆哮――
“魔法少女たちが壊れていった記憶”が断続的に再生されていた。
ナナがきつく叫ぶ。
「ARKが暴走してる……!
“忘れてはいけない”っていう使命感が、
“過去を繰り返すことで記憶させようとする”機構にすり替わってる!」
「記録が、再現になってる……!」
アイナが叫ぶ。
「でも、それじゃ誰も救えない!」
ミユキが剣を抜く。
「止める。過去を“燃料”にして動く記録装置なんて、
私たちの魔法じゃない!」
剣を携え、LinkLineは《ARK》のコアに接触を試みた。
球体は反応し、空間が捻じれ始める。
かつての魔法少女たちの“痛みの幻影”が具現化し、彼女たちに襲いかかる。
ナナの蔦が幻影を捕らえ、アイナの結界が仲間を守る。
ミユキは剣を振り、次々と現れる「かつての記録たち」を断ち切っていく。
「……これが、“残された声”の最期の叫びなの?」
まどかの手が震える。
「違う。“助けてほしい”んじゃない。
“忘れられたくない”って、そう言ってる……!」
ミユキが声を張る。
「ユリ、停止方法を!」
《コア接続を切るには、“新しい記録”を上書きする必要があります。
ただし、“現在進行形の魔法”であることが条件です》
「なら――やる!」
つかさとすみれが、ノートを掲げる。
「私たちは、“記録されなかった感情”を書き続ける。
忘れられた契約を、今ここに“再び書き直す”!」
ノートが開かれ、言葉が刻まれる。
それは制度に乗らない。
でも、確かに“生きている魔法”だった。
“ここにいた”
“名前がなかった”
“それでも、誰かの光になりたかった”
ARKの光が、一瞬だけ静止する。
そして、ゆっくりと沈黙した。
ユリが告げる。
《停止を確認。暴走モードから“安定保存モード”へ移行。
記録装置ARKは、今後“自動再生”を行わない設定に書き換えられました》
施設からの帰路。
ミユキはふと空を見上げた。
「記録って、残すだけじゃダメなんだね。
“思い出す”って行為も、魔法のうちなんだ」
「でも、“思い出しすぎても”人は壊れる」
ナナがぼそりと返す。
「だから……必要なんだ、“今の言葉”が」
まどかが呟いた。
剣でもなく、制度でもなく、
ただ、「思いを残す」という魔法の形。
それが今、LinkLineにとって最も必要な魔法だった。
LinkLine本部に一本の警報が届いた。
《警告:都市地下第六層にて異常魔力循環を確認。
定点観測装置より、定常魔力圧の400%増加を検知》
「異界の再拡張……?」
ミユキがスクリーンの地図を睨む。
「違う。これは、“発信型”の魔力だ。
中心から放射されてる」
「まるで、何かが“感情そのもの”を街に送り出してるみたい……」
まどかが端末を覗き込む。
ユリの分析が続く。
《発信源特定:地下第六層・保管指定区域【コアセクション-B】
対象物:“記録装置_ARK-β型”》
アイナが表情を凍らせた。
「まさか、“ARK”がまだ動いてたなんて……!」
かつて、魔法庁の末期。
異界災害の発生を“感情起因”で記録・予測するため、開発された記録装置があった。
それが、《ARK(アーカイヴ・リソース・キープ)》。
全ての“未昇華感情”をデータとして保存し、
異界化した記録の再生を可能にする“再現型感情構築装置”。
本来は「過去の教訓を後世に残す」ためのものだった。
だが、使い方を誤れば――それは“災害を再生する兵器”にもなり得る。
LinkLineは即時出動を決定。
地下第六層――その最奥。
冷却停止したはずの区画で、巨大な球体が淡く脈動していた。
それが、《ARK》。
かつて数百体に及ぶ魔法少女の戦闘記録、感情記録、契約情報を“記憶”として封じ込めた装置。
今そのコアは、勝手に過去の記録を“起動”していた。
まどかが身を震わせる。
「見て……映ってるの、全部“過去の災害”だよ……!」
球体の表面に浮かぶホログラムには、
かつての戦い、怒り、絶望、咆哮――
“魔法少女たちが壊れていった記憶”が断続的に再生されていた。
ナナがきつく叫ぶ。
「ARKが暴走してる……!
“忘れてはいけない”っていう使命感が、
“過去を繰り返すことで記憶させようとする”機構にすり替わってる!」
「記録が、再現になってる……!」
アイナが叫ぶ。
「でも、それじゃ誰も救えない!」
ミユキが剣を抜く。
「止める。過去を“燃料”にして動く記録装置なんて、
私たちの魔法じゃない!」
剣を携え、LinkLineは《ARK》のコアに接触を試みた。
球体は反応し、空間が捻じれ始める。
かつての魔法少女たちの“痛みの幻影”が具現化し、彼女たちに襲いかかる。
ナナの蔦が幻影を捕らえ、アイナの結界が仲間を守る。
ミユキは剣を振り、次々と現れる「かつての記録たち」を断ち切っていく。
「……これが、“残された声”の最期の叫びなの?」
まどかの手が震える。
「違う。“助けてほしい”んじゃない。
“忘れられたくない”って、そう言ってる……!」
ミユキが声を張る。
「ユリ、停止方法を!」
《コア接続を切るには、“新しい記録”を上書きする必要があります。
ただし、“現在進行形の魔法”であることが条件です》
「なら――やる!」
つかさとすみれが、ノートを掲げる。
「私たちは、“記録されなかった感情”を書き続ける。
忘れられた契約を、今ここに“再び書き直す”!」
ノートが開かれ、言葉が刻まれる。
それは制度に乗らない。
でも、確かに“生きている魔法”だった。
“ここにいた”
“名前がなかった”
“それでも、誰かの光になりたかった”
ARKの光が、一瞬だけ静止する。
そして、ゆっくりと沈黙した。
ユリが告げる。
《停止を確認。暴走モードから“安定保存モード”へ移行。
記録装置ARKは、今後“自動再生”を行わない設定に書き換えられました》
施設からの帰路。
ミユキはふと空を見上げた。
「記録って、残すだけじゃダメなんだね。
“思い出す”って行為も、魔法のうちなんだ」
「でも、“思い出しすぎても”人は壊れる」
ナナがぼそりと返す。
「だから……必要なんだ、“今の言葉”が」
まどかが呟いた。
剣でもなく、制度でもなく、
ただ、「思いを残す」という魔法の形。
それが今、LinkLineにとって最も必要な魔法だった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
後宮なりきり夫婦録
石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」
「はあ……?」
雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。
あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。
空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。
かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。
影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。
サイトより転載になります。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる