恋模様

naomikoryo

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木下このみ②

3:文化祭当日①

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「それではお義母さん、行って参ります!」
このみは準備万端で車に乗り込んだ。
「忘れ物はないですね?」
「はい、大丈夫です!」
「では、頑張ってらっしゃい!!」
「はい!!」
何やら意気揚々としている二人の様子に怪訝そうな顔で見つめあいながらも、運転手はこのみの乗った席のドアを閉め、お手伝いさんは車のトランクにスーツケース2個を乗せた。
「では、今日はその荷物もこのみと一緒に教室まで運んでください。」
「かしこまりました。」
運転手はお辞儀をして運転席に乗り込んだ。
(さぁ、出発を)と思いバックミラーを合わせようと覗くと、このみは更に継母の方を向いてピースサインをしていた。
(えっ?)とドアの外を見てみると継母もまたこのみにピースサインをしていた。
「それでは参りますね、お嬢様。」
とりあえず確認しながらゆっくり動き出すと、
「さぁ、頑張るわよ!!」
とこのみが大声を張り上げた。
「ど、どうしたんですか、お嬢様??だ、大丈夫でございますか?」
「何でもないわ、何でも・・・決戦前の咆哮というものよ。」
「・・・咆哮というのは、猛獣が吠えることでございますよ・・・」
「今日は私は猛獣なのです!あなたにもそんな日があったでしょう?」
バックミラー越しに物凄くまじめな顔で言われてしまい、
「そうですね・・・わたくしも若い頃は、新宿のジョニーと呼ばれ・・・・・ってそうではなく、今日は文化祭だそうでございますが、何か演劇をされるということでございますか?」
「そうね・・・演技と言えば演技ですわね。・・・そして、狩りと言えば狩りとも言えますわね。」
「え~と・・・何をおっしゃられているか若干分かりかねますが、くれぐれもあまり羽目など外されませんようにお願いいたします。」
「そうね、・・大丈夫よ!」
「・・・でも・・・」
「何?」
「奥様ととても楽しそうで、ようございました。」
「そうね、・・・今日はお義母さんとの共同戦線でもありますから、負けるわけにはいかないのよ!」
このみは鼻息を荒くしながら言った。
(何をしようとしているのか全く理解できないが、奥様と協力しているからにはそんなにおかしなことではないのだろう。・・・そうは言ってもスーツケース2個に何が入っているのやら?)
運転手は何も知らないのでそんなことを考えていた。

今日は一般公開ということもあり運転手も荷物を持ち校舎内に入ることが許された。
このみのクラスは1階の西口玄関から入ってすぐということもあり上履きを履き終えたこのみは、
「ここで大丈夫です。ありがとう。」
「しかし、教室までと・・・」
「教室まで来られると、ちょっと・・・帰りもここまで迎えに来ていただければ大丈夫です。」
「そうですね・・・かしこまりました。では、お気を付けてお持ちください。」
キャスターの付いたスーツケースなので転がしてしまうぶんにはさほど力はいらなかった。
「おはよう、このみ!・・・うわ、すっごい荷物ね。」
琴子とその仲間2人が登校してきた。
「おはよう。今日は頑張りましょうね!」
「おっと、手伝ってあげるよ!」
1つのスーツケースを運ぼうと取っ手を持ち斜めに傾けたところ少しバランスを崩してしまった。
琴子がもう一つのスーツケースを持ち、二人がそれぞれ一緒に取っ手を持ってくれた。
「さぁ、行こう!」
4人は教室に向かった。
「これにコスプレ衣装が入っているの?」
琴子が尋ねるとこのみはニヤッと笑って、
「そうよ、私は獲物を捕らえる猛獣になるのよ!」
「猛獣コスプレ??」
3人が顔を合わせて驚いたようにこのみを見た。
「ん~、まぁ、このみらしいったら・・・らしいのかな?」
「まぁ男性客を集めるのは琴子に任せておけば大丈夫よ!」
2人がそう言い、
「そうね、・・・このみは例の愛しい、・・・え~と、・・・愛しくなる予定の男の子を探すといいよ!模擬店の事はあまり考えなくても大丈夫だからね。」
「ありがとう。・・・でもサーチモード時はそんない機動力がないから店にはいるわ!」
「???」
「んと、・・・相変わらずよくわかんないけど、今日は頑張ろうね!」

教室に入るとコスプレチームの女の子たちは既に着替え始めており、教室の前の方では運営チームが準備を始めていた。
チラシ配りチームがそれぞれの配置場所を確認している横を通った時、
(そうね、チラシ配りもいいかもしれない!!)
このみはひらめき、
「私はコスプレするけど、チラシ配りがしたいわ!」
と急に大声で言ったのでクラス中がびっくりして注目したが、
「そうね、それもいいアイデアだわ!・・・良い宣伝になるかもしれない。」
「そうね、そうね。」
みんなが賛成したが、
「でも、このみで大丈夫かしら?」
という声でみんなが考え込んでしまった。
「とにかく、着替えてみてよ!」
という委員長の意見でこのみは早速着替えることになった。
「私も手伝ってあげる!」
琴子がスーツケースを開けながら笑顔で言った。
(ん、なんか犬の着ぐるみみたいなもの?・・・まぁ、しょうがないわね。このみじゃ・・・これならやっぱり店の中にはいない方がいいかもね。)

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