悪役令嬢が攻略対象ではないオレに夢中なのだが?!

naomikoryo

文字の大きさ
39 / 136

第38話『数式で土を救え!』【カイとルーティアの夏休み編⑦】

しおりを挟む
 翌朝、カイは公爵邸から農園へと戻ってきた。
 ルーティアと兄二人、それに領民たちが揃って待っている。
 畑の真ん中には大きな板とチョーク。教師スタイルの準備万端だ。

 「さて。今日は“土の授業”や」

 「授業……?」
 「ワイは教師やからな。みんな生徒やと思て聞いてや」

 農民たちは顔を見合わせたが、やがて真剣な眼差しを向けた。

 カイは土を一掴みし、魔法薬師が用意した瓶を取り出した。
 中身は特殊な薬草液で、土に混ぜると酸性かアルカリ性かによって色が変わる。

 「まずはpHチェックや。酸性に傾いとったら赤、アルカリ性やったら青になる」
 土を入れると液は赤みを帯びた。

 「ほらな。酸性寄りや。作物が弱ってる原因のひとつやで」

 農民たちは目を丸くする。
 「……色で分かるなんて!」
 「先生は魔法薬師でもあられるのか?」
 「ちゃうちゃう。ちょっと科学的な遊びや」

 カイは板に式を書き始める。

 収穫量=aN+bP+cK+dH2O

 「N=窒素、P=リン、K=カリウム。植物に必要な三大栄養素や。
 それと水の量がバランス取れて初めて実りになる」

 「おおお……」
 農民たちが感嘆の声を上げる。

 「いまの畑は窒素ばっかりで、リンとカリウムが足りてへん。だから葉っぱばっかり茂って実がつかんのや」

 農民たちは顔を見合わせた。
 「確かに、葉はよく伸びるが実が小さい……」
 「なるほど……!」

 カイは肥料の袋を三つ並べた。
 一つには窒素多めの堆肥、二つ目は骨粉(リン)、三つ目は灰(カリウム)。

 「これを1:1:1の比率で混ぜて撒く。さらに水を均等に行き渡らせる仕組みを作るんや」

 「比率……そんな単純なことで?」
 「せや。単純やからこそ強い。数学も農業もバランスが命や」

 試しに一角の畑に肥料を撒き、井戸から水を引いて丁寧に撒水する。
 さらにカイは魔法で小さな水路を掘り、土に浸透するよう調整した。

 「これで一週間ほど待てば変化が出るはずや」

 農民たちは半信半疑で頷いた。

◆◇◆

 それから一週間後――。

 農園に戻った一同が目にしたのは、青々と育った作物だった。
 以前は小さな実しかつかなかった苗に、大ぶりのトマトや茄子が鈴なりになっている。

 「な、なんだこれは!」
 「収穫量が倍以上になってる……!」

 農民たちは歓声を上げ、カイのもとに駆け寄った。

 「先生! あなたは畑を救ってくださった!」
 「これで冬も越せる……!」

 ルーティアがカイの腕に抱きつき、きらきらと目を輝かせた。
 「旦那様! やっぱり領地を救うのはあなたですわ!」
 「奥様認定やめぇ! ワイはただの数学教師や!」

 兄ヴィルヘルムは深く頷き、真剣な眼差しを向けた。
 「クロス殿。戦で剣を振るうより、百倍価値のある働きだ」
 ユリウスも笑う。
 「領地にとって、あなたはすでに英雄だ」

 「英雄ちゃう、ただの教師や!」

 農民の一人が声を張り上げた。
 「バンザイ! クロス婿殿!」

 「婿殿言うなーー!!!」

 だが、農民たちは口々に「婿殿!」「婿殿!」と叫び、拍手喝采。
 ルーティアはさらにご満悦で、カイの腕にぎゅっと抱きついて離さなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

処理中です...