悪役令嬢が攻略対象ではないオレに夢中なのだが?!

naomikoryo

文字の大きさ
64 / 136

第63話『護衛たちの素顔』【魔族姫編③】

しおりを挟む
 模擬戦から数日が経った。
 クロス組の一年生二十名はすっかり学園の生活に溶け込み……いや、溶け込みすぎていた。

「先生ー! 屋台、最高でした!」
「見てください、この串焼き! 香辛料が効いてて……!」
「ほれほれ先生も一口!」

 昼休み、校庭の隅でわいわい騒ぐ一年生たち。
 手に持っているのは、揃いの串焼き。香りが校庭に広がり、通りすがる生徒まで鼻をひくつかせている。

「お前ら……授業の合間に買い食いすんな言うたやろ。」
「だって! あの屋台のおばさん、先生の名前出したら“まけといたるわ”って!」
「ワイの名前、勝手に値切りに使うなや!」
「でも先生、値切り交渉の達人って有名ですよ?」
「有名になっても得するんワイやなくてお前らやろが!」

 カイが頭を抱える横で、二年生たちはくすくす笑っていた。

◆◇◆

 次の日は料理実習だった。

「今日はスープを作ってもらうで。材料はシンプルや。焦がすなよ。」
 そう言って材料を配ったカイだったが、五分後には教室の窓を全開にしていた。

「先生ー! こっち、すごい色になりました!」
「これ、飲めるんですか!?」
「お前ら……なんでスープが虹色になんねん!」
「香辛料を全部入れたら美味しくなるかと思って!」
「ちゃう! 足し算と料理は違う!」

 鍋から立ち上る怪しい湯気に、隣のクラスの教師が飛び込んでくる。
「カイ先生!? 爆発音がしたが!?」
「気にせんでええ! ちょっと派手な調理や!」
「派手にもほどがあるだろう!」

 大騒ぎの末、食べられるスープが完成したのは結局カイの班だけだった。
 それでも一年生たちは楽しそうに笑っている。

◆◇◆

 週末。
 自由時間に一年生たちは街へ繰り出した。

「先生ー! 劇場って最高ですね!」
「涙が止まらん……!」
「これが“悲恋の舞台”かぁ……。」

 演目が終わった後、彼らは目を真っ赤にして帰ってきた。
 その夜の食堂は、感想会で大盛り上がりだった。

「……お前らリリシアの護衛ちゃうんか?」
 カイが呆れて尋ねると、にやりと笑って答える。
「護衛もしますよ! でも学園生活を楽しまないと!」
「楽しむ方が本業になっとるやないか!」

 けれど彼らの底力は隠せなかった。
 翌週の体術の授業では、教師たちが一瞬で降参した。

「ちょ、ちょっと待て! その跳躍、見たことないぞ!」
「筋力の数値がおかしい……!」
「カイ先生! 彼ら、一体何者ですか!?」

「……元気な新入生や。それ以上は詮索無用。」
 カイは涼しい顔で返したが、内心では首をひねっていた。
(……どう見ても普通やない。せやけど本人らは気付いてへん。ほんまに不思議やな。)

◆◇◆

 放課後。
 掃除の時間になると、一年生たちはやけに張り切っていた。

「先生ー! 廊下、磨き上げました!」
「床、ぴかぴかです!」
「見てください! 鏡みたいでしょ!」

 カイが歩くと靴底がきゅっきゅっと鳴るほどだ。
 通りかかった二年生が滑って転びそうになる。

「……磨きすぎや。ほどほどにせぇ。」
「だって、楽しいんですもん!」
「お前ら……ほんま、何しに来たんやろな……。」

 だが、そんな彼らの態度に少しずつ変化が出始めていた。
 模擬戦を見て以来、リリシアだけでなく護衛の生徒たちも、カイを見る目が変わっていたのだ。

「先生、質問いいですか?」
「この式、どうしてこう簡単に解けるんです?」
「先生って、本気出したらどこまで強いんです?」

 問いの一つひとつに、かすかな敬意が混じる。
 もともと自由気ままな彼らが、自分より強いと悟った相手に自然と従うように。

 カイは頭をかきながら、飴玉を一つ差し出した。
「ほれ、質問の答えはアメちゃんや。甘いもん食ってから考えぇ。」
「は、はい!」

 にこにこと飴を受け取る一年生たちを見て、ルーティアが呆れ顔で囁いた。
「旦那様、完全に懐かれてますわね。」
「いや、犬ちゃうねんから……。」

 けれど確かに、その瞳には忠犬のような光が宿り始めていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

処理中です...