悪役令嬢が攻略対象ではないオレに夢中なのだが?!

naomikoryo

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第85話『十九の守護者』【陰謀と真実の序曲編⑤】

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 草原に焦げ跡の匂いが漂う中、クロス組は短い休息を取っていた。
 仮面の男たちは一度退いたが、気配はまだ空に残っている。
 風の流れがざわつき、どこかで再び牙を研いでいるのが分かる。

「旦那様、まだ来ますわね。」
 紅剣を肩に担ぎながら、ルーティアがきっぱりと言い切った。

「せやな。今のは試し斬りや。本番はこれからや。」
 カイは草にチョークで印を刻みながら、平然とした口調で返す。
「せやから――今日こそ、護衛団の十八番を見せる番やで。」

「はい、先生!」
 護衛団十九人の声が重なった。

◆◇◆

 黒い霧が地面から噴き出し、再び仮面の男たちが現れる。
 今度は数が多い。十、二十……三十を超えている。

「数で押す気か!」
 ルーティアが紅剣を抜き払う。

「せやけど、こっちも十九おるで。」
 カイは笑った。
「――護衛団、出番や!」

 最初に動いたのはツェイル。
「俺が先導する!」
 影のように地を滑り、敵の背後に一瞬で回り込む。
 仮面の一人を斬り伏せ、そのまま戻ってきた。

 次にカサ。
「幻膜、二重。」
 目に見えない壁が空気に重なり、敵同士の動きを錯覚させる。
 仮面の二人が互いを味方と思って剣を交え、勝手に転げた。

 双子のキルとカルは声を揃えた。
「兄者!」「弟よ!」
「せやな!」
 左右から敵を挟み、同じ角度で斬り込む。
 その見事な連携に、敵はあっという間に倒された。

 メリルは瓶を振りかけながら叫ぶ。
「補給物資、投入!」
 白い煙が立ち、仮面の男がくしゃみを連発する。
「はっ……っくしょん! はっ……!」
 ルーティアが剣の柄でその後頭部を軽く叩き、黙らせた。

 そして――ゴルム。
 彼は両腕を大きく広げ、まるで大扉のように立った。
「通行止めや。」
 仮面の男が槍を突き出すが、面に触れた瞬間、角が滑って横に逸れる。
「アカン。」
 短い言葉と共に、敵の槍は地に突き刺さった。
 その隙に後衛の生徒たちが魔法を撃ち込み、敵を薙ぎ払う。

 リリシアはその様子を見て息を呑んだ。
(十九人……誰も欠けない。これが、守るということ。)

 彼女の胸に熱いものがこみ上げる。
 自分が“守られる側”に立っていることが、もどかしく、同時に誇らしい。

◆◇◆

 敵は数を減らし、次第に後退を始めた。
 だがその時、一際大きな仮面の男が前に進み出た。
 黒い槍を振るい、声を張り上げる。

「我らは……の時代を終わらせる! 新たな秩序の礎として、姫をいただく!」

「……時代を終わらせる?」
 ルーティアが驚きに目を見開いた。
「何を言ってますの……?」

 仮面の男は答えず、槍を振りかぶる。
 だが、次の瞬間。

「アカン。」
 カイの一言で、槍の魔法陣がばらばらに崩れた。
「式が雑や。もう一回教科書からやり直しやな。」

 敵は苦々しい声をあげ、黒い霧となって姿を消した。

 静寂が戻る。
 草地には焦げ跡と、護衛団十九人の息遣いだけが残った。

「……旦那様。あれは、本当に魔王を敵に回そうとしている者たち?」
 ルーティアの声はかすかに震えていた。

「せやろな。」
 カイは空を見上げた。
「せやけど、それは次の授業や。今日はここまで。」

 護衛団は一斉に「はい、先生!」と返事をし、互いの肩を叩き合った。
 リリシアはその光景を見つめながら、胸の奥で決意を固めた。

(私も……この輪の中で、戦わなきゃ。)
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