Heavens Gate

酸性元素

文字の大きさ
58 / 133
シャーロット編

アイ、キボウ、セイギ

しおりを挟む
「はあ…!はあ…!はあ…!」
ケインは剣を弾く。
グウェルガンドとの戦いがなければとっくにやられていただろう。
「フン!」
死霊の騎士は、正面から剣を振る。不意打ちも何もない。だが単純に突破ができない。グウェルガンドは厄介さの面が強かったが、今回の場合はただシンプルに強い。
再生能力は殆どなく、いちいち核を探す必要も当然ない。
だが反撃どころか防御もままならない。
重力で5倍以上の重力をかけているにもかかわらず、殆ど速さが変わらないのだ。
『なんで素の剣戟があの魔族超えてんだよ!クソッタレ!』
距離を取らざるを得ない。
「クッソ……名のある騎士とかそんなレベルじゃねぇだろお前…」
「名のある騎士…か。そんなものではない。私の死霊の騎士と言う名は女王様に与えられたもの。…私自身は騎士とは思っていない。ただの堕ちた使者だ。」
騎士はロングソードを捨て、腰についた剣を引き抜いた。
「何だ…?!このドス黒い魔力は…」
ケインは自身を守るように剣を構え、魔能力で防御壁を展開した。
不動の邪聖剣アロンダイト!」
王剣エクスカリバーの姉妹剣の一つとされ、圧倒的な頑丈さを誇る剣。そしてそれの使い手と言えば……
「名乗ろう。我が名はランスロット。」
円卓の騎士最強と謳われ、後の不貞により聖剣であったアロンダイトを魔性剣にまで堕とした者。
「…ダメだ。勝てる気がしねえ。」
苦笑いと同時に、ケインは壁に叩きつけられ、意識を失った。

「あああああ!」
これで38体目。ドラゴンの首が落ちていく。
「玄式氏…!休みたまえ!これ以上は君に限界が…」
「はあ…はあ…!知るかそんなもの!」
39体目。体中が悲鳴を上げる。
「ふぅ…ふぅ…ふぅ…!」
半分は切った。後はもう一度繰り返せば良い。
しかし、彼女が剣を向けた相手は、竜ではなかった。正確には、人の形をした竜だったのだ。
「末恐ろしい人間だ…本当に。だがやはり、野蛮で下等としか言えぬ。」
それは空中で人差し指を動かした。
その瞬間、花織の腹部は十字に切り裂かれ、腑は宙に飛び立った。
「竜人族じゃない……これは人間体のドラゴン.ゾンビだ…!流石に興味深くないぞ…」
クレアは言葉を詰まらせた。まさか、1体だけじゃないのか?
「3体……だと…?!馬鹿げてる……これじゃ先月のアレ以上の脅威じゃないか…!」

「終わりだ…少年よ。首をここで捧げよ。」
ゆっくりと、確実に、騎士はケインに近づいていく。
だが、後ろからの声で彼の足は止まった。
「待った待った!もう少しだけ時間を潰そうぜ?」
「誰だ?貴様は。」
「ノーマン。ただのノーマンさ。」
そう言い切る頃には、彼の剣は騎士の喉元へ迫っていた。
「!」
だがしかし、彼もまた規格外。ゼロ距離に限りなく近いその攻撃を、即座に剣で受け止めたのだ。
「なるほどね…おい!ケイン君!聞こえるかい?!」
ケインはゆっくりと目を覚ました。
「う…貴方は…」
「君を助けにきた。コイツをさっさとやっちゃおうぜ!」
「なんなんスかその軽いノリ……やってやんよこの野郎!」
会話など殆どした事の無かった両者は、あっさりと打ち解け合った。挟み込む形で、両者は騎士を睨む。
そして3人は、殆ど同時に動き出した。


「特殊精鋭部隊、ヘルガ.ブラートフィッシュ。及び他の支援部隊。ただいま到着いたしました。到着が遅れた事をここに深く謝罪いたします。」
「15分で来れれば上出来だよ。……しかし君たちか。」
「休暇中で最も近かったので。」
ヘルガは表情を変えず、淡々と説明した。
「とにかくアレ、やれるかい?」
「ええ、やろうと思えば。」

「舐めるなよ…人間があ!」
「こちらのセリフだ絶滅種。食物連鎖のピラミッドの頂点が今誰なのか、ここで貴様に教えてやる。」
ヘルガは銃のトリガーを装填し、そう言い放った。


「……!」
雪崩れ込んだ記憶から一時切り離されたシャーロットに、強烈な頭痛が走る。
「……貴様の中に眠る記憶が我の力で呼応したのじゃな。だがそんな事はどうでもいい。」
ヴァイオレットの血液が宙を舞う。
たがもはやそれは血液ではなかった。
赤黒いと言う要素を除いてしまえば原型はなく、あらゆるものを吹き飛ばす大魔法である。
「ぐっ…!」
シャーロットは魔能力を構える。
互いの魔法は、時空を歪めていく。
「君臨せしは終末の彼方.荒地を覆う炎天の果て.踊り狂え-」
ヴァイオレットは詠唱を開始した。シャーロットもほぼ同時に、詠唱を開始する。
さあ、女神の栄光をデーヴィー.マーノートミヤ!」
今、神々の終焉をデーヴィー.マーノートミヤ!」
黄色の閃光、黒い波動。互いは空中でぶつかり合う。光速に限りなく近いスピードでの拮抗により、時空の歪みが加速する。
城の内部の重力が弱まり、周囲の瓦礫が宙に浮き始める。
何処かも分からない空間の穴が、それらを次々と吸い込んでいく。それでも2人は攻撃をやめない。
すでに周囲の熱は数万度を超え、時速2000kmにも及ぶ強烈な風が吹いている。本来ならば世界が滅ぶほどの威力。しかし元の時空間から切り離された今、その常識は意味をなさないのだ。
だが、だがついに拮抗は終わりを告げた。魔法が相手を貫いた。
貫かれたのは、シャーロットだった。
「当然だ、何も背負わぬ貴様に勝算などありはしない。」
「……!」
体を再生させる。脳の一部が壊れ、記憶が消滅した。
シャーロットは再び魔力を装填する。最早それらしい理由はない。とにかく喰らいつくしかない、と言う単純な思考だった。
「……馬鹿者が!」
より大きな魔法が、ヴァイオレットから放たれる。

記憶が再び流れ込んだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

忘れ去られた婚約者

かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』 甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。 レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。 恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。 サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!? ※他のサイトにも掲載しています。 毎日更新です。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...