Heavens Gate

酸性元素

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地獄編

二重反転②

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……ここは。
少年時代、母と過ごした部屋。
「レド……お母さんちょっと具合悪いみたい。買い物行って来てくんない?」
「…うん。」
静かに僕は答える。そうだ、この辺りから母の具合が悪くなったんだ。本来なら病院にでも行くんだろうが、医療費が高すぎて中々行くことができなかったんだ。その為に魔導士を志したんだっけ。
幼き頃の僕は家の扉を開け、買い物に出ていった。
「本当に…馬鹿な子…。アンタのせいでアタシの人生めちゃくちゃよ。……死ねばいいのに。」
寝そべる母が突如漏らしたセリフに、思わず背筋が凍りついた。そうだ、この時の母の独り言を僕は聞いていたんだ。
忘れ物を取りに戻って、それで扉を開けそうになった瞬間に。
「…惨めだねえ、本当に。人間って愚かじゃない?」
何処からか声が聞こえる。
そうだ、こんな事を言われるのは妥当だろう。実際僕が家族を壊したんだから。
「ヘンに行動しようとするからこうなるんだよ。君、真性のばかだよ。」
それはそうだろう、この声の主が人間そのものを主語にするのも分かる。
だが……
僕は台所にある包丁を手に取ると、母の心臓部に突き刺した。
「な…?!グアアアアアア!」
母が聞いたこともない低い声で喘ぎ始め、やがてあの魔族の姿に変わった。
「君がどんなに揺さぶろうが、僕の信念は変わらない。どうあれ、僕はこの運命に満足してるんだ。」
「テメエ…イカれてんのか!」
「そうだと思うよ。」

『ねえ…なんで僕の名前はレドなの?』
『ああ…なんて言うか…父さんはいろいろ失敗ばっかでさ。その度挫折して、それで今があるわけ。レドって言うのはやり直すって意味なんだよ。何度失敗してもやり直して欲しいからその名前な訳。分かった?』
「あの日僕が名前をつけられた日から、僕は最後まで進み続けなきゃ行けないんだ…」
突如、周囲の視界が歪み始める。
「な…?!何が起きて…あ、ああ…ああああああ!」

デニングの精神に、レドの意識が逆流する。
なんだ、この無機質な精神は。まるで作り物……

景色は、突如魔族の暮らす村に切り替わった。
僕はずっと嘘つきだった。毎日嘘ばっかりついて、周りの人たちを笑わせていたんだ。
でも、そんな嘘が突然嫌いになった。
魔族の徴兵。
僕には当時、幼馴染がいた。彼女まで連れて行かれそうで、それで嘘をついた。他にはいない、って。

その結果がこれだ。村人全滅。逆らうものは全て死。それが魔族の鉄則だ。
僕の中に、今まで沸いたことのない感情が迸った。
政府を恨む気持ち、そして自分を恨む気持ち。
そして、徴兵に来た奴らを全員殺した。
問題はその後。魔能力を珍しがった政府に捉えられ、実験、拷問の日々。それが数年続いた。
それでやっとこさ逃げ出したけど、結局行く当てもなかった。
そんな中、彼と出会ったんだ。
もし、もし失った皆んなを、あの娘を復活させられるなら…そう思っていた。
のに………

「なんだ、おとなしく従わなかったのは君の方じゃないか。」
目を覚ましたレドは、倒れたまま動かないデニングを見下ろしてそう言った。
『え?どういう事?いきなり起き上がって…』
「ああ…彼が僕の深層心理に入ってたので逆に乗っ取って植物状態にしました。」
『ええ…怖っ!』
「後は上の皆さん次第ですが…」

「ふぅ……」
ノーマンは放たれたレーザーを盾で上に弾くと、両手に握っていた刀で、戦闘機を切り裂いた。
「クッソ痛えぞの野郎……!」
未だ体から炭の取れないジハイドは、下にある塔を睨みつける。
「どうしたものか……」
アンは頭を悩ませる。
「突破は難しーんじゃーねの?俺が特攻した所でまた消し炭だろうしよー。」
「無人機の癖に人が乗ってるみたいに統率が取れてる…こっちの戦闘機は5台…難しいね…」
「……!おいおい…マジか……!」
ノーマンは攻撃の手を止め、地上の塔へと視線を移した。
すると、塔の上部が変形し、無数の砲台へと姿を変え始める。
「やばい……!この魔力量は……!」
放出された砲撃は、四方八方から彼らを囲い込んだ。
それに続けて戦闘機は、その隙間を埋めるようにレーザーを照射する。
「あ……死ん……」
アンが死を悟ったその瞬間、突如何者かの魔力攻撃が、彼らの間に割って入った。
「天の波動.陸土の螺旋.飛来せよ-金洸波状乱舞スクランブル.インフレーション!」
数十発にも及ぶ金色の魔法攻撃が、戦闘機を次々と破壊していく。
「1000万…持ってきやがれ!」
アンドレアは戦闘機に乗り込むと、数十台もの砲台を生成し、塔に向けて放射した。
「にゃるほど……随分なやり手があるらしいがにゃ…残念ながらまだまだだにゃ!」
ジャニスはそれを上回るほどの砲撃を放射し、未だ上空にいる彼らにカメラを回した。
「いない……?まさか戦闘機を捨てたのか?!」

一同は勢いよく落下していた。
「なるほどなるほど…パラシュート無しスカイダイビングとは随分斬新じゃねえか!」
そう言って、ジハイドはアンドレアを笑った。
「悪い、攻撃の瞬間にしか隙はねえと思ったんだが……あまり隙にならなかったらしい。」
「アタシの魔能力で……」
「いや、このまま行こう!」
「おい!ノーマン!砲台出せるか?!」
「はあ?!撃ち合いじゃ勝てないってわかってるでしょ?!大体そっちもお金あるんですか!」
「俺を信じろ!」
アンドレアとの暫くの沈黙の後、ノーマンは砲台を生成した。
「にゃははは!最後の足掻きかにゃ!じゃあたっぷり返すナゴォ!」
ジャニス100台にも及ぶ砲台を装填すると、一同に照準を合わせる。
「………?!君は……!」
「発射しろ!ノーマン!」
「成程、めちゃくちゃだ!発射!」
一筋の砲撃が放たれる。
「さよならニャン。」
地面を揺るがすほどの砲撃が一斉に放たれた。
が、放たれた筈のそれは、突如現れた巨大な何者かに全て打ち消された。
「は……?あれは…まさか……!」
持ちうる限りの無数の動物の情報を全身に纏った何者が、勢いよく塔に激突した。
「オーガスタスぅ……!裏切りやがったなああああ!」
砲台ごと塔の上部は破壊され、その隙間からノーマンたちは侵入し、監視室のボタンを押した。

「よし………ほら、行こう。」
レドは開いた扉から塔に侵入する。
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