105 / 133
剣豪編
無力と孤独
しおりを挟む
「こいつはどういうことだよ全く…」
ケインはソファに倒れるように座り込んだ。
「失踪…と取って良いでしょうね。」
レドは俯きながら言う。
「一体どこに?なんの目的で失踪したっていうんだい?」
沈黙が走った。当然である。彼女が旅立つ瞬間など、誰1人として目撃来ていないのだから。
「俺が思うに…」
「玄式花織はウチが預かった。」
「!!」
シャーロットが口を開こうとしたその瞬間、突如窓ぎわから声が発せられた。
「テメェ…!」
ケインは刀を抜こうとする。だが、それをレドは引き止めた。
「なるほど…玄式家の人間…と言ったところでしょうか。」
「正解…っちゃ正解だが、俺は正確にゃあ玄式家の人間じゃない。とりあえずこれ以上は話せない。
お前らが動けば玄式花織の命はない。良いな?」
「……」
ケインは、風に靡く窓のカーテンからチラつく影をじっと見つめた。
「お前…忍者か。」
「ご名答だぜ、黒式ケイン。元分家の男。
…とにかく、これ以上手出しはしないように、な。それ以上関わろうものならウチも容赦はしない。」
そう言うと、窓際の人影はスッと消えていった。
「………」
ケイン達は、暫くその場に立ち尽くしていた。
「おー花織ちゃん!おっきなったなあ!」
着物を着た男は、部屋で1人正座する花織にしゃがみ、話しかける。
「……」
彼女は沈黙を守り続けていた。
「おい、貞能。」
黒髭を生やした男は、貞能という男の肩を掴んだ。
「わかっとります、羽咲さん。ほな、行きましょか。」
貞能は立ち上がると、花織のいた部屋を後にした。
「おい、花織。ここに戻ってきた以上は後戻りはできんぞ。」
羽咲は花織の方を向かず、貞能の背中を眺めながら淡々と言い放つ。
「わかっております、お父様。」
花織はただそれだけ返すと立ち上がり、羽咲の後についていった。
大広間の襖を開けると、そこには数100人を超える彼らの部下が待ち構えていた。
「さて……諸君、良くぞ集まってくれた。」
羽咲は正座すると、一堂に向けて話し始める。
「……」
誰1人として声を発することなく、彼の話に耳を傾けていた。
「我々玄式家はこの10年で衰退した。政界からは追い出され、挙句分家の悪行により規模が半数にまで縮小した。
だが今回、我々はそれを取り戻す。
天叢雲剣を、ここで生成するのだ!」
おおおおお!と周囲から歓声が上がる。
その中で、1人の魔族は沈黙を貫いていた。
「明日、早急に取り掛かる。ドラゴンクロウの警戒は怠たるな。」
「…おい。」
沈黙を貫いていた魔族が口を開いた。
「如何致しましたか?」
羽咲は先ほどと打って変わって遜った口調へと切り替える。
「俺は黒式ケインとは戦えるのか?……でなければ交渉は決裂だぞ?」
「勿論ですとも。黒式ケインとの戦いは貴方に任せます。
宮本武蔵殿。」
「…一つ、良いでしょうか?」
部下の1人が手を挙げる。
「どうした?述べてみよ。」
羽咲はその質問を許可する。
「こい…この方は魔族なのでは?どうして…」
「馬鹿者が!名を聞かなかったのか?かの大剣豪、宮本武蔵だ!」
「し、しかし宮本武蔵が魔族というのはどうにも…剣豪と呼ぶには…」
「貴様…」
羽咲は刀を抜く。
だが、次の瞬間、彼が引き抜いた筈の刀の刀身が、全て跡形もなく切り落とされた。まるで一瞬のうちに風化してしまったかのように。
「……!」
羽咲の額から汗が垂れる。これを喰らっていたら、どうなっていたと言うのだ。
「…よい、鎮まれ。不要な争いは好まん。」
武蔵の言葉に気押され、羽咲はゆっくり座り直した。
「では…屋敷の外の護衛にはハンゾウ部隊についてもらう。ハンゾウ、頼むぞ。」
「御意。」
ハンゾウと呼ばれた巨漢の男は、表情を一才変えることなく答える。
「そして護衛は、白金と玄式の計300名の護衛をつかせる。
貞能、指揮はそちらに任せた。」
「あいあい、了解しやした。」
気軽な態度で貞能は返した。
「それでは、明日まで英気を養うように。」
「はっ!」
一同は大広間を後にする。
「では花織様、こちらへ。」
忍者は花織を立ち上がらせ、地下室へと案内した。
「明日までここで待機していてください。では。」
指示通り、花織は牢屋の中へと入る。
忍者はそう言い残すと消えていった。
「花織ちゃあん、会いたかったでえ。」
牢屋の中で壁を見つめていた花織の元に、貞能が現れる。
「……何か。」
「そない緊張せんでもええやーん!元許嫁やろ、俺ら。」
「はあ…」
「んで……向こうでの暮らし…どないやったん?」
「………」
「ええやんええやん少しくらい!俺って口硬いんやんか、一瞬でええから!
……答える気ぃないんか。つくづく釣れない女やの。ええわ、取り敢えずは。俺のこと、嫌いか?」
「……正直、好きではありません。」
「しょーじきやなあほんま!そう言うとこ好きやでぇ、花織ちゃん。でもな、俺のものにならん女に価値なんて無いねん。」
貞能はそう言い残すと、花織の前から姿を消した。
「…………」
花織はギリ、と唇を噛んだ。
誰か、私を助けて欲しい。そう微かに願う気はあった。
だが、その感情は一瞬にして自己嫌悪にかき消された。
ケインはソファに倒れるように座り込んだ。
「失踪…と取って良いでしょうね。」
レドは俯きながら言う。
「一体どこに?なんの目的で失踪したっていうんだい?」
沈黙が走った。当然である。彼女が旅立つ瞬間など、誰1人として目撃来ていないのだから。
「俺が思うに…」
「玄式花織はウチが預かった。」
「!!」
シャーロットが口を開こうとしたその瞬間、突如窓ぎわから声が発せられた。
「テメェ…!」
ケインは刀を抜こうとする。だが、それをレドは引き止めた。
「なるほど…玄式家の人間…と言ったところでしょうか。」
「正解…っちゃ正解だが、俺は正確にゃあ玄式家の人間じゃない。とりあえずこれ以上は話せない。
お前らが動けば玄式花織の命はない。良いな?」
「……」
ケインは、風に靡く窓のカーテンからチラつく影をじっと見つめた。
「お前…忍者か。」
「ご名答だぜ、黒式ケイン。元分家の男。
…とにかく、これ以上手出しはしないように、な。それ以上関わろうものならウチも容赦はしない。」
そう言うと、窓際の人影はスッと消えていった。
「………」
ケイン達は、暫くその場に立ち尽くしていた。
「おー花織ちゃん!おっきなったなあ!」
着物を着た男は、部屋で1人正座する花織にしゃがみ、話しかける。
「……」
彼女は沈黙を守り続けていた。
「おい、貞能。」
黒髭を生やした男は、貞能という男の肩を掴んだ。
「わかっとります、羽咲さん。ほな、行きましょか。」
貞能は立ち上がると、花織のいた部屋を後にした。
「おい、花織。ここに戻ってきた以上は後戻りはできんぞ。」
羽咲は花織の方を向かず、貞能の背中を眺めながら淡々と言い放つ。
「わかっております、お父様。」
花織はただそれだけ返すと立ち上がり、羽咲の後についていった。
大広間の襖を開けると、そこには数100人を超える彼らの部下が待ち構えていた。
「さて……諸君、良くぞ集まってくれた。」
羽咲は正座すると、一堂に向けて話し始める。
「……」
誰1人として声を発することなく、彼の話に耳を傾けていた。
「我々玄式家はこの10年で衰退した。政界からは追い出され、挙句分家の悪行により規模が半数にまで縮小した。
だが今回、我々はそれを取り戻す。
天叢雲剣を、ここで生成するのだ!」
おおおおお!と周囲から歓声が上がる。
その中で、1人の魔族は沈黙を貫いていた。
「明日、早急に取り掛かる。ドラゴンクロウの警戒は怠たるな。」
「…おい。」
沈黙を貫いていた魔族が口を開いた。
「如何致しましたか?」
羽咲は先ほどと打って変わって遜った口調へと切り替える。
「俺は黒式ケインとは戦えるのか?……でなければ交渉は決裂だぞ?」
「勿論ですとも。黒式ケインとの戦いは貴方に任せます。
宮本武蔵殿。」
「…一つ、良いでしょうか?」
部下の1人が手を挙げる。
「どうした?述べてみよ。」
羽咲はその質問を許可する。
「こい…この方は魔族なのでは?どうして…」
「馬鹿者が!名を聞かなかったのか?かの大剣豪、宮本武蔵だ!」
「し、しかし宮本武蔵が魔族というのはどうにも…剣豪と呼ぶには…」
「貴様…」
羽咲は刀を抜く。
だが、次の瞬間、彼が引き抜いた筈の刀の刀身が、全て跡形もなく切り落とされた。まるで一瞬のうちに風化してしまったかのように。
「……!」
羽咲の額から汗が垂れる。これを喰らっていたら、どうなっていたと言うのだ。
「…よい、鎮まれ。不要な争いは好まん。」
武蔵の言葉に気押され、羽咲はゆっくり座り直した。
「では…屋敷の外の護衛にはハンゾウ部隊についてもらう。ハンゾウ、頼むぞ。」
「御意。」
ハンゾウと呼ばれた巨漢の男は、表情を一才変えることなく答える。
「そして護衛は、白金と玄式の計300名の護衛をつかせる。
貞能、指揮はそちらに任せた。」
「あいあい、了解しやした。」
気軽な態度で貞能は返した。
「それでは、明日まで英気を養うように。」
「はっ!」
一同は大広間を後にする。
「では花織様、こちらへ。」
忍者は花織を立ち上がらせ、地下室へと案内した。
「明日までここで待機していてください。では。」
指示通り、花織は牢屋の中へと入る。
忍者はそう言い残すと消えていった。
「花織ちゃあん、会いたかったでえ。」
牢屋の中で壁を見つめていた花織の元に、貞能が現れる。
「……何か。」
「そない緊張せんでもええやーん!元許嫁やろ、俺ら。」
「はあ…」
「んで……向こうでの暮らし…どないやったん?」
「………」
「ええやんええやん少しくらい!俺って口硬いんやんか、一瞬でええから!
……答える気ぃないんか。つくづく釣れない女やの。ええわ、取り敢えずは。俺のこと、嫌いか?」
「……正直、好きではありません。」
「しょーじきやなあほんま!そう言うとこ好きやでぇ、花織ちゃん。でもな、俺のものにならん女に価値なんて無いねん。」
貞能はそう言い残すと、花織の前から姿を消した。
「…………」
花織はギリ、と唇を噛んだ。
誰か、私を助けて欲しい。そう微かに願う気はあった。
だが、その感情は一瞬にして自己嫌悪にかき消された。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる