Heavens Gate

酸性元素

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終末編

決戦前夜

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ドレイクは、布に包まれた何かをケインに差し出す。
「これは……!」
「玄式花織の残した魔眼だ。これを、お前に移植する。」
「!」
ウジャトの魔眼…本来介入不可能なものにも介入できる能力を持つ。
「…そー言うことかよ。」
ケインはポツリと呟く。ケインの魔能力である、特異点の操作。それは魔殲があるからこそ本格的に操作ができているのであって、それ無しでは一部しか行使できない。だが、ウジャトの魔眼を持ってすれば、魔殲無しでも特異点に好きに干渉ができる。即ち無限の魔力と無限の空間を手にする。
「……これの移植が成功すれば、間違いなくお前は最強の存在へと変わるだろう。それこそシャーロットを超えるほどの、な。
……どうする?」
「少し…考えさせてくれ。」
最強の存在、といえば聞こえはいいが、それは即ち、シャーロットと同様に孤高を歩む事となる。孤立を嫌う彼にとって、それは死よりも恐ろしかった。何より、自身の仲間の力を得ると言うのだ。そう簡単に決められるはずが無い。
「……なあ、ケイン。」
外の景色を眺めていたケインの隣に、ジハイドが座る。
「なんだよ。」
「お前、俺を殺してくれるって約束したよな?」
「した覚えはねーよ馬鹿。……まあ、いつかは殺してやる。」
「へっへっへ…そうか、ありがとうな。だが俺は思ったんだ。こうやって、共に戦って死ぬのも悪くねえ死に方だってな。まあ、何が言いてえのかっつーと……お前は1人じゃねえ、どんな死に様でも、お前についてきた仲間たちは死んじゃいねえのさ。だから今更孤独を恐れるな。」
「…ありがとよ、ちょっと楽んなったわ。」
「どーも。……ちょっとついて来い。」
「ああ?またかよー…」
「いーからいーから。」
ジハイドはケインの手を引き、避難所へと足を踏み入れる。
「これは……」
そこには、魔族と人達が共に暮らしていた。まるで、種族の差などないように。
「アレ以来、互いに協力し合いたいっつー魔族も増えたのさ。」
「でも魔族が人間の物を使ったら壊れるんじゃ…」
「ああ、そこは心配いらん。ケビンが残した技術でな、防壁と似た魔力構造のコーティングを物に施す。そうする事で壊れるのを防いでるのさ。
よーオッサン元気かい?」
近くに座り込んでいた魔族の1人に、ジハイドは話しかける。
「ああ、君か。そちらの方は……ケインと言ったかな?話は聞いているよ。守ってくれて助かった。」
憎悪の表情を魔族が負けないことに、ケインは困惑していた。
「ああ…不思議だって顔だね。うん…私もどうしてこんなに穏やかなのか、わからないよ。シーラって言う娘があそこにいるだろう?彼女、率先して私たちの仲を取り持ってくれてね……それでいざ人間と協力してみたら、ね。……もうあの生活には戻れないよ。」
穏やかな顔で、魔族は言う。
「そうか……あの娘が…」
ケインはシーラの方を向く。彼女の周囲にいる人間や魔族は、とても楽しそうな表情をしている。
「それに、ね。分かってしまったんだ。我々は元は人と同じ。ならば歩むべきだと。もちろんそう考えない人もいるが、少なくとも私はそう考えてる。」
「………」
同じ、なのだろうか。何も変わらない訳ではない。だが、本質は同じ。それこそが人と魔族の根幹であるのかもしれない、とケインは思う。
「酒ないのか酒ー!」
奥にいた魔族の1人が叫ぶ。
「避難所にあるわけねーだろ!」
「あるんだな、これが。」
人間の1人が大量のビール瓶を出す。
「おおおおおおお!」
「よっしゃあ飲み合いじゃあ!」
何やらわちゃわちゃと、彼らは飲み合いを始める。
「わ、私も…」
「シーラちゃんはダメ。」
シーラから魔族は瓶を奪い取った。彼女は渋々、指を咥えて見ているしかできない。
「よっしゃケイン!俺たちも行こうぜ!」
「おいおい…世界が滅ぶ3日前だってのに…まあいいや。」
ジハイドに手を引かれるままに、その日は酒をひたすらに飲んだ。アルコールで記憶が飛んだが為に、何も覚えちゃいないが、ただ楽しかった事だけは覚えている。

「…俺、さ。やるよ。」
「…そうか。」
ドレイクは、ケインの回答に正そうとだけ答える。
「人と魔族が一緒な世界の方が……俺は好きだ。だからやる。……頼むぞ。」
シルビアと共に、ケインは部屋へと入っていく。
そこからは、痛みの連続だった。魔眼が侵食するか、ケインが勝つかと言うせめぎ合い。それが数時間続く事となった。
ひたすらに部屋には彼の叫び声が聞こえる。一同は、それを静かに見守る事しかできなかった。
「……よう。」
そして、ケインは部屋から姿を現した。
「成功、したんだな。」
「ああ、まあな。まだクソ痛えまんまだが。…じゃ、作戦会議を始めようぜ。」
ドレイクはコクリと頷くと、地図を卓上に大きく広げた。
「さて……恐らく現在の島は、人造人間と悪魔で大量に溢れかえっている。」
「どこから来たんだ、そいつらは?」
ジハイドはドレイクに質問する。
「以前、デウス.エクス.マキナが悪魔を召喚した、と聞く。アレと原理は同じさ。アイルアドラ…と言ったか?奴はドラリガント一族の因子実験の失敗例……即ち、人造人間と悪魔の力を色濃く受け継いでいる。そこに眠る悪魔の力を抽出したのだろう。」
「………」
シャーロットは沈黙し、過去を回想する。
数百年前、現れた無知性魔族……あれは…。
「もう分かっているな。そう、無知性魔族とは、全てその失敗例だ。数百年前の初期に現れた無知性もまた、フラメルが悪魔の因子を魔族に注入したもの。
無知性魔族の自然発生というのは、悪魔の性質が作用したものだ。元は知性を持っていたものが、別の生物として繁殖してしまった、と言ったところだな。」
「……となりゃ、魔族たちにはそれを伝えなきゃ、だな。
自分のかつて同胞だったものを殺さなきゃならないと。」
シャーロットの発言に、周囲は沈黙した。
「……私たちは、別に構わないよ。ね?クロロ。」
「ま、そうだな。」
クロロフォートとシルビアは答える。
「そうか……ありがとう。
……それじゃ、作戦だ。」
シャーロットはバン、と机を叩く。
「まず、ウジャウジャいる悪魔と人造人間をどうにかしなきゃいけない。」
「そこはアタシ達がどうにかする。…多くの魔族と人をそこに踏襲して、道を切り開くしかないからね。」
デボラ、オーガスタス、ジハイドが手を挙げる。
「わかった…で、国の中心部のここだな。」
セリアムの国土の中央部を、シャーロットは指差す。
「ここに俺とケイン、そんでもってドレイクが行く。
クロロフォートとシルビアはその周辺の雑魚狩りをしてくれ。」
「りょーかい。」
クロロとシルビアは手を挙げる。
「そして問題の中央部だが…そこは硬い壁に阻まれている。ここをどうにかしない事には……」
「俺に案がある。」
ケインが右手をあげる。
「案…と言うと、何かあんのか?」
「ええ…ありますよ。一つだけ、ね。」
その会議は、日夜と繰り広げられた。
そして次の日……
「……オホン。」
魔族と人が整列する中、台の上にケインが乗る。そこに取り付けられたマイクに一度咳をすると、彼は話し始めた。
「これから、皆さんには死んでもらいます。
恐らくこれで生き残る方々の方が少ないでしょう。
ですが、これが我々が未来に生きていくための希望、そして礎になる。だからどうか、ここで命を捨ててください。
俺に、俺たちに。命を預けて欲しい…!
たとえ死んだとしても、その死は無駄にはならない。立ち上がり、前を向け。ここで共に、先に行こうじゃないか!」
周囲から歓声が上がる。
「よくやったな、ケイン。」
シャーロットが、ケインの肩に手をかける。
「よし…じゃあ行きますか。」
そう言うと、ケインは大きく背伸びした。
「おう。」
続々と、船に乗り込んでいく。
「では……人類、そして魔族をかけた本作戦……
『魔人防衛作戦』を、今開始する!」
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