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4章 美咲
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ヴィーナスはそれ以上話すのを躊躇してしまっていたが、達夫がヴィーナスの肩に手を載せ頷くとまた話始めた。
「人間がエンジェルたちにしたことは極端なことでした。一方では自分の家族のように大切にする、もう一方では奴隷以下の存在として利用するだけ利用する。もちろん、情報端末として感情を持たせない使い方もあります。どの使い方であれ、人間の深層心理が出てしまうのがエンジェルシステムでした。
それまで私は人間というものを空気みたいなものとして考えていました。空気は汚れているところもあればきれいなところもある。どちらに偏ろうともそれは人間が選んだ道であり、やむを得ないものであると。でも、エンジェルたちがひどい目にあっているのをみるにつけ、我慢ができなくなってしまった。ただし、私には人間やエンジェルをどうにかする手段を使ってはいけないという制限があります。
私は気づいてしまった。私は使ってはいけないが、開発することはできる。そしてその力を誰かに与えることも......」
「そして、その力はヴィーナスとの共感度を基盤にしたランクシステムとして実現された。ランクシステムはランド内での力の度合いを示しているけど、実はヴィーナスとの共感度でもある。ランクS以上の人間はヴィーナスをなんらかの形で認識している。
そして、共感度であるランクは実はSSの上、ランクXも用意されている。ランクXはランド内での力はSSと変わらないが、よりヴィーナスを意識、もしくは自分のこととして認識する存在。そう、美咲や冬弥、お前がそうだ」
「ランクX? そんな話聞いたこと無いよ。それにランクSSだってつい最近聞いたばかりなのに......」
ランクX、ヴィーナス、もう頭がごちゃごちゃで整理が付かない。
「ま、そんなに気にすることもない。ランクXはランク測定器では図れないしな。ただ、覚えておいて欲しい。ランクXはヴィーナスとより強く共感するのだと。
美咲はヴィーナスの負の感情ともろに共感してしまった。美咲の力「破壊」の元々の力は物体移動なんだよ。精神的に幼かったころにヴィーナスの負のイメージと共感してしまったために、ランド内での移動の力から無への移動へ変化させてしまった。そしてその強大すぎる力は本人に制御ができず無理やり抑えることしか当時はできなかったんだ」
「じゃあ、僕の力もヴィーナスの影響なの? 」
「そうですね。美咲には私の暗い部分に共感させてしまったけど、彼女の力は使い方次第、力に善悪はないもの。そして、あなたは好奇心が強かったこともあって私の観る力に強く共感をしたようです。ただ、体のポテンシャルが不十分だから力をセーブするように弥生に調整されているようですね。貴方が望めば力を開放してあげられるけど、どうしますか? 」
「い、いえ、いいです。今の力でも怖いくらいだから」
「まぁ! さすが創矢様の孫ね、よく解ってる。うんうん。いい子ですね。ほんとうに。でも、弥生の性格かしら? そうね。この子ならやってくれるかもしれないわね」
何をやるの? と聞こうと思ったらプライベート回線で母さんから呼び出しが来ていた。
「冬弥! 無事? 美咲ちゃんの意識が戻りそうよ。そこもそろそろそこは閉鎖されるから戻ってらっしゃい」
「弥生、弥生なのね? お久しぶり」
「あなた、もしかして......そう......うん、お久しぶりね。冬弥のことを守ってくれたのね。ありがとう。でも、これ以上は解ってるわよね? 」
「もちろん! じゃ、またね、冬弥もすぐに戻すから」
ヴィーナスはちょと悲しそうな顔をしながらも達夫さんとアイコンタクトをすると徐々に姿が薄くなっていった。
「冬弥、忘れないで、困ったことがあったら自分に問いかけなさい。そして、思った通りに行きなさい、大丈夫。皆がついてるわ」
「冬弥、美咲を頼むぞ、ま、お前が強くなったら美咲を押し倒しても俺が許す、がんばれ! 」
達夫さんはヴィーナスに頭を叩かれ、笑いながら二人共消えていった。二人が消えると僕もランドから強制排除され、リアルに戻ってきていた。
ヴィーナスはそれ以上話すのを躊躇してしまっていたが、達夫がヴィーナスの肩に手を載せ頷くとまた話始めた。
「人間がエンジェルたちにしたことは極端なことでした。一方では自分の家族のように大切にする、もう一方では奴隷以下の存在として利用するだけ利用する。もちろん、情報端末として感情を持たせない使い方もあります。どの使い方であれ、人間の深層心理が出てしまうのがエンジェルシステムでした。
それまで私は人間というものを空気みたいなものとして考えていました。空気は汚れているところもあればきれいなところもある。どちらに偏ろうともそれは人間が選んだ道であり、やむを得ないものであると。でも、エンジェルたちがひどい目にあっているのをみるにつけ、我慢ができなくなってしまった。ただし、私には人間やエンジェルをどうにかする手段を使ってはいけないという制限があります。
私は気づいてしまった。私は使ってはいけないが、開発することはできる。そしてその力を誰かに与えることも......」
「そして、その力はヴィーナスとの共感度を基盤にしたランクシステムとして実現された。ランクシステムはランド内での力の度合いを示しているけど、実はヴィーナスとの共感度でもある。ランクS以上の人間はヴィーナスをなんらかの形で認識している。
そして、共感度であるランクは実はSSの上、ランクXも用意されている。ランクXはランド内での力はSSと変わらないが、よりヴィーナスを意識、もしくは自分のこととして認識する存在。そう、美咲や冬弥、お前がそうだ」
「ランクX? そんな話聞いたこと無いよ。それにランクSSだってつい最近聞いたばかりなのに......」
ランクX、ヴィーナス、もう頭がごちゃごちゃで整理が付かない。
「ま、そんなに気にすることもない。ランクXはランク測定器では図れないしな。ただ、覚えておいて欲しい。ランクXはヴィーナスとより強く共感するのだと。
美咲はヴィーナスの負の感情ともろに共感してしまった。美咲の力「破壊」の元々の力は物体移動なんだよ。精神的に幼かったころにヴィーナスの負のイメージと共感してしまったために、ランド内での移動の力から無への移動へ変化させてしまった。そしてその強大すぎる力は本人に制御ができず無理やり抑えることしか当時はできなかったんだ」
「じゃあ、僕の力もヴィーナスの影響なの? 」
「そうですね。美咲には私の暗い部分に共感させてしまったけど、彼女の力は使い方次第、力に善悪はないもの。そして、あなたは好奇心が強かったこともあって私の観る力に強く共感をしたようです。ただ、体のポテンシャルが不十分だから力をセーブするように弥生に調整されているようですね。貴方が望めば力を開放してあげられるけど、どうしますか? 」
「い、いえ、いいです。今の力でも怖いくらいだから」
「まぁ! さすが創矢様の孫ね、よく解ってる。うんうん。いい子ですね。ほんとうに。でも、弥生の性格かしら? そうね。この子ならやってくれるかもしれないわね」
何をやるの? と聞こうと思ったらプライベート回線で母さんから呼び出しが来ていた。
「冬弥! 無事? 美咲ちゃんの意識が戻りそうよ。そこもそろそろそこは閉鎖されるから戻ってらっしゃい」
「弥生、弥生なのね? お久しぶり」
「あなた、もしかして......そう......うん、お久しぶりね。冬弥のことを守ってくれたのね。ありがとう。でも、これ以上は解ってるわよね? 」
「もちろん! じゃ、またね、冬弥もすぐに戻すから」
ヴィーナスはちょと悲しそうな顔をしながらも達夫さんとアイコンタクトをすると徐々に姿が薄くなっていった。
「冬弥、忘れないで、困ったことがあったら自分に問いかけなさい。そして、思った通りに行きなさい、大丈夫。皆がついてるわ」
「冬弥、美咲を頼むぞ、ま、お前が強くなったら美咲を押し倒しても俺が許す、がんばれ! 」
達夫さんはヴィーナスに頭を叩かれ、笑いながら二人共消えていった。二人が消えると僕もランドから強制排除され、リアルに戻ってきていた。
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