『ナザレ』のサラ

第ニ章 工業都市《ムジカ・ジェノマーナス》

『炎帝』

酒場『楽酔亭』


ジェノマーナスの中でも最も人、アンドロイドの行き交いが激しい酒場だ。


ジェノマーナスは３人を案内し、４人は席に着いた。


隣から注文の声が聞こえる。


「親父、こっちハイオクくれ！」


「俺はレギュラー！」


「俺はディーゼル！」



「何だよお前ディーゼルなんか飲むのか！？
調子悪くなんないのかよ！？」


「しょうがないだろ。俺はこう見えてもかなり前の旧型だ。壱番街、弐番街に至っては出入りすら出来ないからな。」



ラッドは何の酒を頼んだのか気になりメシュ・ガーデンに尋ねた。


「あいつらが飲んでるのは何の酒だ？」


「フフフ、あれは酒ではない。燃料だ。太古の昔に使われていたガソリンというものだ。今は太陽光で動くアンドロイドが主流だ。しかもほんの少しの光でしばらくは動ける。昔は燃費が悪かったみたいだな。」


「人間が呑める酒はあるのかい？」


ラッドは心配そうに尋ねた。


「当然だ。ここには人も来るからな。アンドロイドしかいないということはない。少しはいるだろう。」


と言うと、メシュ・ガーデンは人かロボットかを見分けながらザッと酒場の中を見回した。


すると、途中でメシュ・ガーデンの動きが止まった。


(何だあいつは？赤いオーラを出している。見た事が無い。何者だ？)


隅で１人呑んでいる人間がいた。清潔感の無い格好をしているが、雰囲気のある男だ。メシュ・ガーデンが見えるオーラがその人間は赤く光っているのだ。


その男の元へ１人の人間がやってきた。


「ロン様、そろそろお時間です。屋敷に戻りましょう。」


ロンと呼ばれた男が口を開いた。

「先程、アンドロイドが１体と人間が３人入ってきた。何者か調べとけ。」


ロンと呼ばれた男は部下と思われる従者に言うと店を出て行った。


そしてその内の１人がサラ達を発見し、質問をしてきた。


「お前達、何者だ？このジェノマーナスに何をしに来た？『炎帝』ロン・マー様がお聞きになっている。」


「『炎帝』だと！？あの男が！？」


メシュ・ガーデンは名前は知っている感じだった。


「誰なんですか？」


サラが尋ねる。


「このジェノマーナスの裏社会を仕切っていると言われるマフィアのボスだ。俺も初めて見た。『炎帝』と呼ばれ、炎の剣技を使うと言う。」


「剣技使い！？」


サラは剣技使いを仲間にしたがっていた。剣技使いと聞いて高揚している。


「剣技は剣技でも拳の拳だ。拳技らしい。」


「格闘家か？だが、腰に剣も差してたぞ？」


ゲンはロンが差していた剣に興味があったようだ。



「何しに来たと聞いている！」


従者は自分の質問を無視されていたため怒鳴り声で再度質問してきた。


「あなた方のボスにお話しがあります。案内して下さい。」



サラは『炎帝』ロン・マーに会うことにした。