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しおりを挟む目を覚ました
いつもと変わらない静まりかえった離宮
変わらない孤独な部屋の中
朝、目を覚ますということは当然のようにいつもあることで、この11年何も変わらないというのに。
鉛のように重かった身体が嘘のように軽い。
何年も締め切ったままのカーテンから少し漏れる光ですら、嫌悪感を抱き、気持ちの悪いものだったはずが、その気を全く感じられない。
立ち上がる気力すら湧かなかったはずなのに。
恐る恐るベットから立ち上がり、窓辺へと足を踏み出す。
両手でカーテンを掴み、一つ息を吐き出した。
鬱々とした絶望を感じず、掴む両手に力が入る。
いつもの朝じゃない…
カーテンを一気に開け放ち、窓から降り注ぐ太陽の光をその身に浴びたのだ。
―――――――――――――――――――――
大海を超えて、東国へ位置するイヴァノフ王国。
第65代国王イスマエル・ル・イヴァノフの娘。
イヴァノフ王国の姫であるアディリナ・ル・イヴァノフは幼少の頃、その身に大きな呪いを受けたのだ。
その呪いは肉体の生命力を奪う妖花が咲く呪いで、呪いを受けたアディリナはもちろんのこと、その体に触れたものの生命力まで吸い取る恐ろしい呪いであった。
国一番の魔術師でも解くことができなかった。
そのため、アディリナはその呪いを受けた4歳の頃から11年間ずっと離宮に幽閉されてきたのだ。
―――――――――――――――――――――
『コンコンコン』
ドアをノックする音が部屋の中に響く。
「おはようございます、アディリナ様。」
いつも通りのはずなのに。今日はよく耳に通る。
ドアを隔てて声がした。
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