12 / 84
12
しおりを挟む「陛下」
マリアンヌ王妃の咎めるような呼び声に、イスマエルはアディリナの頬から名残惜しげに手を離し、自席へとついた。
そしてイスマエルが席につくのを確認すると、他の家族たちも席へと座る。
全員が座ると、卓へ次々と料理が運び込まれた。
「イヴァノフ神の祝福を」
イスマエルはグラスを高く掲げた後、グラスに口をつける。
それに続いて皆が同様の言葉を繰り返し、グラスを高く掲げた後口をつけた。
その後はそれぞれの前に置かれる食事へと口をつけ始めた。
「皆に紹介しよう。第六王女アディリナである。アディリナは11年ぶりに王家へと戻ってきたのだ、皆気を配ってやってほしい」
国王イスマエルの聞いたことのない娘を気遣うそんな言葉に動揺しながらも、各々頷くしかなかった。
普段は食事の際に口を開くことのないイスマエルはさらに続ける。
「アディリナよ、呪いが解けたのだ。これからは本宮へ移るようすぐに手配しよう」
「お父様、ありがとうございます。」
アディリナは父からの破格の待遇に嬉しそうに微笑んだ。
それを見て、満足そうにイスマエルは頷いた。
――――――――――――――――――――――――
「陛下、次期に控えます武術大会にカールも参加致します」
第二妃であるイーダは空気を変えるようにイスマエルへと声をかける。
「ふむ、今年は記念すべき300回目の大会であるな。その大会で王家の者が優れた結果を残すことができれば、王家の威信を皆に見せることができるであろう」
「ええ、カールは剣術の才が優れております。王家のためにこの力はとても役に立つでしょう」
第二妃イーダが微笑む。
イーダは第二妃であるが、隣国の王女であった。
世継ぎを産む、そう教え込まれて生きてきた。
自身の子供の優秀さを次期王とするために訴えるのは当然であった。
「私も今回の大会はとても大事な意味を持つものだと存じます。セドリックも今回の大会に参加しますの」
マリアンヌ王妃が、それを聞いて黙っているはずがなかった。
マリアンヌはイヴァノフ王国で最も力のある公爵家の一人娘であり、王の妻となるために育てられてきた。
数いるイスマエルの妻の中でも筆頭の王妃であり、強力な後ろ盾をもち、そう簡単に崩せる相手ではない。
今回も第二妃イーダの考えを予測し、カールの活躍を阻止すべく、自身の息子、第一継承権を持つセドリックを参加させる事を決めていたのだ。
「セドリック、カールよ、王家の威信をかけ、不甲斐ない闘いを見せるでないぞ」
イスマエルは鋭い視線を2人に向ける。
「「承知致しました、父上」」
2人の息子たちの声が揃って聞こえた。
――――――――――――――――――――――――
その後は、静かに食事会が終わった。
イスマエルが席を立ったのと合わせて、全員が立ち上がり部屋を後にする。
部屋から出たアディリナに、ドアの前に控えていたリチャードが心配そうに駆け寄った。
「…アディリナ様、大丈夫ですか?」
リチャードは部屋の前で控えていた間ずっと気にかけてくれていたのだろう。曇った顔に疲労が見えた。
自分を気遣ってくれる優しいリチャードの様子にアディリナは不謹慎だが、心が温まった。
「リチャード卿、私は大丈夫です。心配してくれてありがとう」
アディリナの様子にリチャードは少し安心したように表情を和らげた。
「この後、お父様に呼ばれているの。一緒に来てくれる?」
その言葉を聞き、リチャードは驚愕の表情を浮かべたが、頷くしかなかった。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜
具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」
居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。
幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。
そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。
しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。
そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。
盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。
※表紙はAIです
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
能天気な私は今日も愛される
具なっしー
恋愛
日本でJKライフを謳歌していた凪紗は遅刻しそうになって全力疾走してたらトラックとバコーン衝突して死んじゃったー。そんで、神様とお話しして、目が覚めたら男女比50:1の世界に転生してたー!この世界では女性は宝物のように扱われ猿のようにやりたい放題の女性ばっかり!?そんな中、凪紗ことポピーは日本の常識があるから、天使だ!天使だ!と溺愛されている。この世界と日本のギャップに苦しみながらも、楽観的で能天気な性格で周りに心配される女の子のおはなし。
はじめて小説を書くので誤字とか色々拙いところが多いと思いますが優しく見てくれたら嬉しいです。自分で読みたいのをかいてみます。残酷な描写とかシリアスが苦手なのでかかないです。定番な展開が続きます。飽き性なので褒めてくれたら続くと思いますよろしくお願いします。
※表紙はAI画像です
転生先は男女比50:1の世界!?
4036(シクミロ)
恋愛
男女比50:1の世界に転生した少女。
「まさか、男女比がおかしな世界とは・・・」
デブで自己中心的な女性が多い世界で、ひとり異質な少女は・・
どうなる!?学園生活!!
転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜
具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、
前世の記憶を取り戻す。
前世は日本の女子学生。
家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、
息苦しい毎日を過ごしていた。
ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。
転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。
女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。
だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、
横暴さを誇るのが「普通」だった。
けれどベアトリーチェは違う。
前世で身につけた「空気を読む力」と、
本を愛する静かな心を持っていた。
そんな彼女には二人の婚約者がいる。
――父違いの、血を分けた兄たち。
彼らは溺愛どころではなく、
「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。
ベアトリーチェは戸惑いながらも、
この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。
※表紙はAI画像です
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる