美しきモノの目覚め

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「陛下」

マリアンヌ王妃の咎めるような呼び声に、イスマエルはアディリナの頬から名残惜しげに手を離し、自席へとついた。

そしてイスマエルが席につくのを確認すると、他の家族たちも席へと座る。
全員が座ると、卓へ次々と料理が運び込まれた。


「イヴァノフ神の祝福を」
イスマエルはグラスを高く掲げた後、グラスに口をつける。

それに続いて皆が同様の言葉を繰り返し、グラスを高く掲げた後口をつけた。
その後はそれぞれの前に置かれる食事へと口をつけ始めた。

「皆に紹介しよう。第六王女アディリナである。アディリナは11年ぶりに王家へと戻ってきたのだ、皆気を配ってやってほしい」

国王イスマエルの聞いたことのない娘を気遣うそんな言葉に動揺しながらも、各々頷くしかなかった。

普段は食事の際に口を開くことのないイスマエルはさらに続ける。


「アディリナよ、呪いが解けたのだ。これからは本宮へ移るようすぐに手配しよう」

「お父様、ありがとうございます。」
アディリナは父からの破格の待遇に嬉しそうに微笑んだ。

それを見て、満足そうにイスマエルは頷いた。






――――――――――――――――――――――――






「陛下、次期に控えます武術大会にカールも参加致します」

第二妃であるイーダは空気を変えるようにイスマエルへと声をかける。

「ふむ、今年は記念すべき300回目の大会であるな。その大会で王家の者が優れた結果を残すことができれば、王家の威信を皆に見せることができるであろう」

「ええ、カールは剣術の才が優れております。王家のためにこの力はとても役に立つでしょう」

第二妃イーダが微笑む。

イーダは第二妃であるが、隣国の王女であった。
世継ぎを産む、そう教え込まれて生きてきた。
自身の子供の優秀さを次期王とするために訴えるのは当然であった。

「私も今回の大会はとても大事な意味を持つものだと存じます。セドリックも今回の大会に参加しますの」

マリアンヌ王妃が、それを聞いて黙っているはずがなかった。

マリアンヌはイヴァノフ王国で最も力のある公爵家の一人娘であり、王の妻となるために育てられてきた。
数いるイスマエルの妻の中でも筆頭の王妃であり、強力な後ろ盾をもち、そう簡単に崩せる相手ではない。

今回も第二妃イーダの考えを予測し、カールの活躍を阻止すべく、自身の息子、第一継承権を持つセドリックを参加させる事を決めていたのだ。


「セドリック、カールよ、王家の威信をかけ、不甲斐ない闘いを見せるでないぞ」

イスマエルは鋭い視線を2人に向ける。

「「承知致しました、父上」」

2人の息子たちの声が揃って聞こえた。






――――――――――――――――――――――――






その後は、静かに食事会が終わった。
イスマエルが席を立ったのと合わせて、全員が立ち上がり部屋を後にする。


部屋から出たアディリナに、ドアの前に控えていたリチャードが心配そうに駆け寄った。

「…アディリナ様、大丈夫ですか?」

リチャードは部屋の前で控えていた間ずっと気にかけてくれていたのだろう。曇った顔に疲労が見えた。

自分を気遣ってくれる優しいリチャードの様子にアディリナは不謹慎だが、心が温まった。

「リチャード卿、私は大丈夫です。心配してくれてありがとう」

アディリナの様子にリチャードは少し安心したように表情を和らげた。


「この後、お父様に呼ばれているの。一緒に来てくれる?」

その言葉を聞き、リチャードは驚愕の表情を浮かべたが、頷くしかなかった。
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