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しおりを挟む父イスマエルの言葉の通り、アディリナは食事会の次の日に11年ぶりに本宮へと移り住んだ。
本宮へ移ることになった際に、アディリナは今まで仕えてくれた離宮の使用人たちも共に本宮へ移ることを望んだ。
離宮にいた使用人たちは、リチャードと同じように優れた人材ではなかった。直接接する事はなくとも、呪いの影響が少なからずある離宮に、身分の低さや様々な要因で、体よく厄介払いされてきた者たちの方が多かった。
だからこそリチャードと同様に呪いが解けたアディリナが本宮に戻る際に、まさか自分たちが共に行けるとは思ってもいなかったのだ。
今までどこからも厄介払いされ、存在を忘れられていたかのような離宮にいた。
しかし今はどうだ。
王の寵愛を受けるアディリナの元に仕える、この上ない恵まれた環境へと一変した。
疎まれてきた離宮の使用人たちは、たちまちに皆が羨む立場となったのだ。
そんな使用人たちが揃ってアディリナに感謝の言葉を告げても、アディリナは穏やかに微笑むだけ。
「皆にこれからも変わらずに傍にいてほしかったのです。」
王の寵愛を受けても、一切驕り高ぶる事なく、変わらずに優しく微笑む主人に彼らが夢中にならないはずがなかった。
アディリナが行うのは母と同じように、自身のために働いてくれる者たちに感謝し、慈しみ愛し、癒し、その心を自身で埋めることだけ
ただそれだけである。
――――――――――――――――――――――――
アディリナに与えられた部屋は、母フェリシナとかつて暮らした部屋だった。
部屋の壁紙も、家具も何もかもあの頃のままであった。
生前フェリシナが好きであった、部屋の窓から見える庭の風景も、身に付けていたドレスも。
11年前からこの部屋は時を止めていたのだ。
それはフェリシナを想うイスマエルによるものだ。
イスマエルはアディリナの小さな願いを聞き受け、国王である多忙な中、時間を見つけてはアディリナと共に過ごした。
アディリナは理解している。
父は自身の中の母を見ていることを。
だからこそイスマエルがアディリナの元に訪れる時に、フェリシナの着ていたドレスを身につけていると、イスマエルは一層喜んだ。
本人も気づいていない壊れかけたイスマエルの心の中では、フェリシナへの愛とアディリナへの愛は、深く深く混ざり合ってしまっていた。
アディリナはそれに気づかないフリをして、微笑むだけだ。
「お父様、大好きです。」
―父が自分を愛してくれている事に変わりはないのだから―
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