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「あの、ヨハンお兄様…。ここの部分がどうしても理解できなくて…」
アディリナは今自身が開いているページをヨハンの方へ向ける。
ヨハンはその開かれてるページへと目を向け、少し考えて口を開いた。
「…ふむ。その部分は確かにその本では詳しく解説されていないな。ちょっと待ってろ。」
そしてヨハンは席を立ったが、少し待っていると2冊の本を持ってきた。
「その部分に対しては、この本の方が詳しく書かれている。逆に全体を一貫してみるのならば、こっちの方がいいだろう。」
持ってきた2冊の本をアディリナへと差し出す。
アディリナは嬉しそうに顔に笑みをうかべ、本を受け取った。
「ヨハンお兄様、ありがとうございます!」
やはりヨハンにはなぜアディリナが嬉しそうに笑うのか分からなかった。
「そうだ、ヨハンお兄様!」
しばらくヨハンが持ってきてくれた本を静かに読んでいたアディリナが思いついた様にヨハンに声をかけた。
「今日は特別なお菓子がありますの!あの時や今日のお礼とはなりませんが、お兄様もぜひご一緒してはくださいませんか…?」
アディリナは名案だと思いついて明るく声を発したのはいいが、段々と自分の誘いが断られるのではないかと思ったのか徐々に不安気に言葉を続けた。
そしてヨハンを不安そうに見つめる。
やはり、分からない。
どうして父の寵愛を受けた幸福な妹が、王位にも近くない、愛想も良くない、関わったって何の得もない自分を誘うのかが。
「ヨハン殿下、ぜひ我が主アディリナ様のお誘いを受けてくださいます様お願い致します。アディリナ様にお仕えする我々にあの時の感謝を少しでも良いのです。お伝えできる機会をくださいませんでしょうか?」
事故の日から、書庫へも同行する様になり、少し離れた場所にいたリチャードが主を助ける様に言葉を発した。
もちろんあの書庫での事故を聞き、アディリナに仕える者達は、かけがえのない主人を救ってくれたヨハン殿下に御礼をしたいと思う気持ちがあったが、何より主人の悲しむ顔を見たくなかった。
護衛騎士であるが国有数の公爵家の者であるリチャード、そして王である父の寵愛を受ける妹のアディリナの誘いを断るほど、ヨハンは愚かではない。
「…俺は甘いものはあまり好きではない…」
そういうヨハンの小さな声を、やはりアディリナは聞いていた。
「ありがとうございます、お兄様!大丈夫です、私の侍女のマーサは紅茶淹れるのも得意なんですっ。」
アディリナが自身に伝えてくる言葉も態度も、微笑みも。
わからない。
ヨハンはやはり分からない。
しかし、ヨハンの中にあった、アディリナに対する警戒心や不信感、そんなものはすでに消え失せていた
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