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しおりを挟む少女は伸ばされた手を掴まないイスマエルを不思議に思い、首を傾げる。
そして不安そうに、片手を繋いでいるフェリシナの方を見上げた。
フェリシナは少女と視線を合わせ、微笑む。
そして少し強引にイスマエルの手首を掴んで、少女の手に近づける。
イスマエルは思う。
強引な女だと。
「さあ、早く手をとってくださいな。」
このままでは埒があかないと思い、渋々少女の手を軽く握る。
しかしその手を少女はぎゅっと握りしめる。
自分より圧倒的に小さい少女の手に内心驚いていた。
「さあ!3人でエマちゃんのお母さんを探そうね」
そう言って、フェリシナは意気揚々と歩き出す。
――――――――――――――――――――――――
それから3人は少女が通ったという道を歩き始めた。
どこも祭りで賑わっており、道には人が溢れていた。
段々と探しているうちに、少女の母親を探してはいるが、少女もフェリシナも祭りの催しに目を取られ始めていることに気づいた。
「…おい。母親を探さなくて良いのか?」
そうイスマエルが2人に問いかけるのは3度目だ。
その言葉少女とフェリシナは顔を合わせる。
「そうねっ、さっきからごめんなさい。」
「でもお兄ちゃんもさっきと同じセリフ3回目だね。」
そう言って2人は何が面白いのかクスクス笑い合う。
「…何がそう面白いんだ?」
イスマエルには2人がなぜ笑い合っているのか分からなかった。
3人は再び、街の中を探し歩き始めた。
その時、少女の足が止まる。
それに2人は気付き、同じく足を止めた。
イスマエルは、急に少女が足を止めたことが不思議だった。
「どうした?」
「あっ、あのねエマね、足が疲れちゃったの」
そう言って、2人の手を繋いだまま、しゃがみ込む。
かれこれずっと街の中を歩きぱなしだったのだ。少女の足では疲れてしまって当然だろう。
「じゃあ、あそこのベンチで少し休もっか。」
フェリシナは噴水の周りに設置してあるベンチを指さす。
「うんっ!」
ベンチに少女を座らせると、フェリシナは立ち上がり2人に声をかける。
「なんかお姉ちゃんお腹すいちゃった!エマちゃんはお腹すいてない?」
穏やかな声でフェリシナは少女に尋ねる。
少女は一度自分の右手をお腹に当てて、答える。
「エマもお腹すいちゃった…」
「それじゃあ私そこの露店で何か買ってくるわね。エマちゃんをお願いね。」
「…ああ。」
そう言い、イスマエルに少女を任せ、露店へと行こうとするが、ハッとしたように再び振り向き直した。
「ねえ、私あなたのお名前まだ聞いてなかったわ!びっくりね、こんなに一緒にいたのに。」
そう言って、クスクスと自分の言動に可笑しそうに笑った。
「私はフェリシナよ。あなたは?」
「……エルだ」
イスマエルは立場上本名を名乗るわけにはいかず、咄嗟に自分の愛称を名乗る。
今はもう誰も呼ぶことのない幼い頃母から呼ばれたイスマエルのかつての愛称である。
偽名なら何でもいい筈なのに、なぜか咄嗟にもう呼ばれることのない愛称を名乗ってしまった。
―なぜだ、一体どうして?―
「エルねっ。じゃあエル、エマちゃんをお願いね!」
そう言って満面の笑みを浮かべたフェリシナがベンチを離れる。
美しい女だと思っていた
自身の名を呼んで微笑む姿は、更に美しく見えた
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