バトル・オブ・シティ

如月久

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シティ

4.アナザー・シティ

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「シティ昇格も、ヨッシーが初めてだったんじゃないのか」
「俺もそれを目指したけど、ダメだった。もう3人いるよ、俺の先に。1人は昨日シティに昇格した、今はもう20万を超えてる。あとの2人は、今日なったばかりで、俺と規模はほとんど同レベルだよ。みんな、シティに上がるだけあって、いろいろ考えてる。面白い街ばかりだよ。20万の都市は、臨海都市さ。港を整備して、ウオーターフロントにコンビナートを造ってる。来年、フェリーも就航する。もちろん漁業も盛んで、漁師町もちゃんとあるんだ。悔しいけど、今の時点で、あの街のオリジナリティにはかなわない」
 ヨッシーは悔しそうに言った。
「海か、面白そうだな。今の町がダメになったら、挑戦してみたいな」
「もう1人、俺の3時間くらい前にシティになった奴の街は、学園都市だ。履歴を見たんだけど、人口が2万人台のころに、最初の大学を誘致して、今では大学が3つに、専門学校が2つある。学生だけで人口2万人を超えてるんだ。学生だから直接の税収はほとんどないけど、大学の周りにハイテク関係の企業が貼りついていて、そこが結構な収入源になっているようだ。いわゆる産学共同路線だな」
「働く場所があれば、学生も街に定着するんじゃないのか」
「その通りさ。そいつの街は、市民の平均年齢が際立って低い。多分、大学を卒業した奴が街に残って、結婚して、子供をたくさん作っているんだろう。幼稚園や小学校、中学校をたくさん運営しなきゃならないんで、経費はかかるけど、老人が少ないから医療費は低く抑えている。うまく釣り合っているよ」
「もう1人のシティはどんな感じだい?」
「うん、それが、今イチ良く分からないんだ。なんでシティになれたのかが。街のタイプは極めて一般的。商業、工業の構成バランスは優れていると思うけど、これといった目立ったところもないし。一見して本当に普通の街だよ。強いてあげれば、最大の企業の業種が変わっているということかな」
「業種?」
「そう、コールセンターなんだ。通販なんかの注文を電話やネットで受ける専門の会社さ。そこは社員が千人以上いる。でも、その10社で人口十万に届いたとは思えない。それに、その街はすごく財政状況がいいんだ。何より借金が少ない」
「隠れた大企業でもあるんじゃないか?」
「分からない。詳しく調べてみないとな…。でも、今はそんな時間がないんだ。とりあえず、一刻も早くカジノの認可を取り付けないと。このままだと、高速インターと空港の借金で潰れちまう」
「街が大きくなると、いろいろと大変だな。俺はのんびりとやるよ。ジャニスにも『単位落とすわよ』って怒られたし…。さっき電話あったんだ」
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