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シティ
5.ジャニスの気持ち
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「そうか、ジャニスが心配してたか。当然だよな」
「え?」
ヨッシーは電話口の向こうで微笑んだようだ。
「お前、こういうことは鈍感だからな。ジャニスはお前のことが好きなんだよ」
「何だよ、それ」
「入学した時から、ずっとだよ。お前が気付いてないだけだ」
「でも、みんなでいるのが楽しそうだぜ」
「この前、新歓コンパの2次会で、ジャニスが潰れただろう」
「ああ、そんなこともあったな」
ゼミの教授が担当する1年生のクラスの新歓コンパに参加したとき、ジャニスが珍しく深酒して、2次会でついにう立てなくなった。介抱しながらアパートまで背負っていったのが、リョウとヨッシーだった。
「あの時、あいつ、泣きながら、お前のことばっかり話してたぞ。『リョウはバカだ』とか『あんなに物分かりの悪い奴はいないとか』『大嫌い』とか。まるで壊れたレコーダーのようだった」
「それは、俺が嫌いということじゃないのか。悪口ばかりだろう」
「その場にいれば分かるさ。言葉の中身は悪口でも、本心は逆だ。俺にはジャニスの言葉が、全部反対の意味に聞こえたけどな。それに、酔っ払ってお前のことで愚痴を聞かされたのは、一度や二度じゃない。あいつはああ見えても照れ屋だから、本当のことが言えないんだよ。多分、他も奴にも言ってない。俺にだけかもしれない。お前、少しは思い当たる節があるんだろう」
言われなくても、リョウには分かっていた。ジャニスが自分に好意を持っていることを。だが、自分がそれを受け入れる態度を見せてしまったら、ヨッシーも含めた俺たちの仲間のバランスが崩れてしまう。リョウは、ヨッシーやジャニスたちみんなと過ごす時間を気に入っていた。ジャニスのことは嫌いじゃない。どちらかと言えば、好きだと思う。だが、今の仲間たちという枠からはみ出て、ジャニスと2人になってしまうことで、今の貴重な場所を失いたくないのだ。
「ま、ゲームは小休止して、ジャニスのご機嫌をとっておくことだな。その役目は、俺では務まらない。リョウだけに可能な任務だよ」
ヨッシーはそう言って、電話を切った。
「え?」
ヨッシーは電話口の向こうで微笑んだようだ。
「お前、こういうことは鈍感だからな。ジャニスはお前のことが好きなんだよ」
「何だよ、それ」
「入学した時から、ずっとだよ。お前が気付いてないだけだ」
「でも、みんなでいるのが楽しそうだぜ」
「この前、新歓コンパの2次会で、ジャニスが潰れただろう」
「ああ、そんなこともあったな」
ゼミの教授が担当する1年生のクラスの新歓コンパに参加したとき、ジャニスが珍しく深酒して、2次会でついにう立てなくなった。介抱しながらアパートまで背負っていったのが、リョウとヨッシーだった。
「あの時、あいつ、泣きながら、お前のことばっかり話してたぞ。『リョウはバカだ』とか『あんなに物分かりの悪い奴はいないとか』『大嫌い』とか。まるで壊れたレコーダーのようだった」
「それは、俺が嫌いということじゃないのか。悪口ばかりだろう」
「その場にいれば分かるさ。言葉の中身は悪口でも、本心は逆だ。俺にはジャニスの言葉が、全部反対の意味に聞こえたけどな。それに、酔っ払ってお前のことで愚痴を聞かされたのは、一度や二度じゃない。あいつはああ見えても照れ屋だから、本当のことが言えないんだよ。多分、他も奴にも言ってない。俺にだけかもしれない。お前、少しは思い当たる節があるんだろう」
言われなくても、リョウには分かっていた。ジャニスが自分に好意を持っていることを。だが、自分がそれを受け入れる態度を見せてしまったら、ヨッシーも含めた俺たちの仲間のバランスが崩れてしまう。リョウは、ヨッシーやジャニスたちみんなと過ごす時間を気に入っていた。ジャニスのことは嫌いじゃない。どちらかと言えば、好きだと思う。だが、今の仲間たちという枠からはみ出て、ジャニスと2人になってしまうことで、今の貴重な場所を失いたくないのだ。
「ま、ゲームは小休止して、ジャニスのご機嫌をとっておくことだな。その役目は、俺では務まらない。リョウだけに可能な任務だよ」
ヨッシーはそう言って、電話を切った。
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