バトル・オブ・シティ

如月久

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牙をむくメガロポリス

3.景気パラメーター

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 リョウは再び、ゲームのルールを記したページに戻った。このゲームの凄いところは、ルールが日々微妙に進化していくことだ。街づくりの基本的な方法も、最初は「補助事業」と「起債」くらいしかなかったが、ヨッシーが獲得したカジノのように「特区」として、それまでにない新しい事業を提案することもできるようになったことで、街づくりのバリエーションは事実上無限となった。自分の事業アイデアがゲーム管理者に認められれば、街のアイテムを自由に増やしていけるのだ。

そして、この日、ゲームにはまた新たなルールが加わった。更新時間を見ると、今日の午前零時に追加されていた。
<ゲーム全体の制御に、景気パラメーターを付加します。各プレーヤーの進める街づくり事業が、『シティ』全体を支配する景気動向に影響されるようになります。景気指標として、公定歩合と株価指数、消費者物価指数を新たに表示します。各プレーヤーは、この指標を参考にして、取り組む事業やプロジェクトを検討、選択して下さい>

 ますますゲームは複雑怪奇になった。現在の指標を見てみると、公定歩合は1%を切り、消費者物価や株価指数も低迷している。どうやら経済はデフレ状態のようだ。株価のチャートをみると、ここ1年はほとんど下がりっ放しだった。
 だが、リョウはふと思った。ヨッシーの街が、「プレミアム」との差を詰めることができているのは、これが原因ではないか、と。景気が上向きの時は、「プレミアム」のようにインフラが整っていて、モノや人が派手に動くところに金が集まるが、景気が下り坂になると、今度は巨大な施設が足かせとなる。大規模な港湾やトラックヤードも、モノが動かなければ無用の長物だ。逆にヨッシーの街は、レジャーやギャンブルで交流人口を稼いで、税収を獲得する作戦をとっている。これは意外に不況に強いかもしれない。特に、ギャンブルは…。
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