バトル・オブ・シティ

如月久

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突破口

4.同盟締結

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 結局、「プレミアム・シティ」との戦いに加わってくれる街は、金融で発展した「ポーラスターズ」と航空産業が発達した「イチロー」、それに「鉄ちゃん」。「鉄ちゃん」は、同じ鉄道オタクの街を3つも口説き落としてくれた。「鉄ちゃん」の仲間意識は強固だった。
 化学工業の分野をほぼ独占している「ケミカル」も心強い存在だ。彼は「プレミアム」との戦いに向けて、戦術をいろいろと提案してくれている。オーナーは恐らく、リョウやジャニスより年上の男だ。理系の高度な専門知識を有していて、人生経験も豊富だと感じられた。彼も「プレミアム」の独占主義には嫌悪感を示していた。
<あのような醜悪な街に、このゲーム世界が支配されるのは極めて不愉快。君たちが聖なる戦いを挑む勇気に敬意を表する。自分も喜んで参加したい>と書き送ってきた。
  「ジャイアンツ」と「タイガース」も参戦してくれることになった。彼らは「プレミアム」に取り立てて強い敵意は持っていなかったが、<このままだと「メガロポリス」になることはできない。新しい「メガロポリス」という舞台で、このプロ野球のリーグを楽しみたい>と、揃って参戦の意向を伝えてきた。
 プロスポーツからは、このほかに、野球で3つ、バスケットボールで2つ、アメリカンフットボールで1つが連合への加盟に同意した。プロスポーツチームを持っていること以外に、目立った特徴を持った街ではなかったが、リョウの作戦と同じく、「メガロポリス」になるまでの間に、警察組織を極限まで肥大させ、昇格後すぐにその組織を軍に変更する準備をしている。人口が多いので、強力な陸軍が作れそうだった。そのうちのいくつかの街は、現人口が20万か30万人台で、目前に迫った開戦には間に合わないが、途中から戦いに加わってくれることになった。
 短時間でこれだけを説得できたのは、奇跡に近い。ジャニスとカナが奮闘したおかげだ。ジャニスとカナが連合に加わってくれる街を探している間、リョウは同盟を承諾してくれた街のオーナーたちとメールを交換して、戦いの初期戦術を練った。少ない時間だったので、充分とは言えないかもしれないが、それでも他の街は、色々な作戦を提案してくれ、何とか戦いを維持できそうな目処が立ってきた。
 だが、他の街になるべく影響を与えないよう、リョウは「プレミアム」との戦いで矢面に立つのは、「シティ・ジャニス」ということを強調した。他の十五の街(国)は、全て「シティ・ジャニス」を守るために、側面や後方から援護してくれるというのが同盟の形だった。
「同盟国は十六。軍事力は足りないが、人口と経済ではこっちが優位だ」
 リョウが、開戦の覚悟を決めたとき、時計の針は午後5時を回っていた。「シティ・ジャニス」の人口は92万人。このままいくと、あと15分ほどで「メガロポリス」になる。
「いよいよね」
 ジャニスはそう言って、大きく深呼吸した。

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