バトル・オブ・シティ

如月久

文字の大きさ
62 / 85
突破口

3.援軍続々

しおりを挟む
 電話を切ってすぐにジャニスが報告した。カナが知らせてきた街は、2つあった。1つは現在の人口が69万人で、鉄道の大きな駅を中心に物流拠点として発展した「レールウエイズ」という街だった。旅客用の大きな駅には、特急から普通電車までさまざまな車両が出入りしていた。そこから2駅ほど行くと、背後に巨大な貨物ヤードを擁する貨物駅があり、その近くには問屋街や市場が広がっていた。
「これは『鉄ちゃん』の街ね」
 ジャニスは苦笑した。
「物資の輸送ではもの凄い能力を持っているよ。ここと手を結べたら、同盟国は潤うと思う」
 もう1つの街は、化学工業が異様に発展していた。街の一角には、さほど大きくはないが、多種多彩な工場や研究所が何百という数で林立し、訳の分からない化学薬品を大量に製造していた。人口は55万人で、「セントラル・シティ」に昇格したばかりだが、市の財政は裕福だった。この化学工場群がかなりの額の税金を納めているに違いない。
「俺たちがやったことと、ある意味では同じことをした街だ」
 リョウは思わず感心した。このゲームは、新しい分野を開拓した街ほど爆発的に発展するようになっている。化学工業で伸びたこの街は、他のプレーヤーがほとんど試さなかった分野の産業を集約的に発展させることで、この方面の需要をほぼ独占し、大きくなってきたのだ。
「ネオジムYAG、五酸化ニオブ、硝酸イソソルビド…。ちんぷんかんぷんだわ。この街を作った人、相当化学に詳しいわね」
「俺もさっぱりだよ、でも、こういう専門家がいるのは心強い。意外なところで、力を発揮してくれるかもしれない」

 ジャニスは早速、カナに教えてもらったメルアドに向けてメールを発信した。すぐに返事が来るだろう。
「スポーツリーグの分と合わせると、4つか5つの協力がもらえそうだ。全部がメガロポリスに進めば、人口では『プレミアム』を上回る」
「カナはあと2つか3つは何とかなりそうだって言ってたわよ」
「それは心強い。スポーツリーグの方は、何とかなりそうかい?」
「ええ。『ポーラスターズ』と『イチロー』はやる気満々よ。時間スピードを早めて、人口を増やしてもらってる。百万人到達のタイミングを測るところまできてるわ。このほかに、今口説いているのが、『ジャイアンツ』と『タイガース』、なんだかベタなネーミングだけど。2つともかなり実力あるわよ」
 ジャニスはパソコンをリョウの方に向けた。「ジャイアンツ」はバランスの取れた街だった。行政組織が機能的に発達していて、公共事業が多彩に発注されているので、土木・建設業が成長している一方、商業やレジャーなどの三次産業も成熟していた。一言で言えば、大人の街だ。
「経済学の教科書のような街ね。これを作った人は、きっと経済学部か経営学部よ」
 ジャニスは言った。
「この街は野球がとにかく強いのよ。3年連続でリーグ優勝してるの。それとは対象的なのが『タイガース』ね」
 ジャニスの言った通り、「タイガース」は「ジャイアンツ」とは全く違う特徴を持っていた。まず、街全体がごちゃごちゃして、混沌としている。大きな工場を取り巻くように、中小の会社や工場が乱雑に立ち並び、その周辺に住宅や商店街がアメーバのように増殖していた。しっかりした行政組織を中心に、計画的に発展している「ジャイアンツ」に比べ、「タイガース」は無秩序で混乱していた。だが、街全体の活力はむしろ「ジャイアンツ」よりもあり、住民の満足度は高かった。「ジャイアンツ」よりは数が少ないものの、大きな工場のほとんどは業績が好調で、周辺の中小企業もそれに右ならえしていた。
「ここの野球場はいつも超満員よ。成績は浮き沈みが激しいけど、球団の経営状況は、常に全球団中最高よ」
「何となく魅力的な街だね。こんな街が参加してくれると、うれしいな」
「2つの街は、野球を通じたライバルだけど、対プレミアムでは考え方が一致したみたい。呉越同舟なので、ちょっと心配な面はあるけど、強力な援軍には違いないわ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

痩せたがりの姫言(ひめごと)

エフ=宝泉薫
青春
ヒロインは痩せ姫。 姫自身、あるいは周囲の人たちが密かな本音をつぶやきます。 だから「姫言」と書いてひめごと。 別サイト(カクヨム)で書いている「隠し部屋のシルフィーたち」もテイストが似ているので、混ぜることにしました。 語り手も、語られる対象も、作品ごとに異なります。

処理中です...