聖域を守る少女

可憐

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旅の理由

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 リックはゆっくりと語り始めた。
 自分が街に木を売りに行こうとしたら聖域の水を狙う複数人の男たちに襲われ大怪我をして連れていかれたこと。
 そこで自分を助けるために聖域を守るアビィという子に聖域の中で治療してもらったこと。
 アビィのことを聞いて助けたいと気持ちが湧き、今こうしてアビィを聖域から解放するために旅をすることにしたこと。
 旅をして次の日にはアン達と出会ったこと。

 リックが語り終わって顔をあげるとアンもリーンも驚いた顔をしていた。
 リックは、なぜ驚くのかと一瞬思ったが聖域に入ったのは自分1人だけだとアビィ達は言っていて、助けたいと思ったのも呪いのせいで誰1人と思わなかったのに自分だけだと聞いたのでそれは驚くかと呑気に思っていた。

「ねぇ、リック……その話し誰かに話した?」
「いや、アン達が初めてだよ。街のおじさんとかには自分旅って言ったし」
「そう……なら大丈夫かな」

 そうポツリとアンは呟いたがその呟きはリックには聞こえてないようだった。
 リーンはリックの話を聞いたと同時に立ち上がる。

「リーン?」
「……外の様子を見てくる」

 そう言ってリーンは外へと出ていった。
 リックは何か不味いこと言ったかな?と不安になったがアンに大丈夫よって言われ少し安心する。

「さぁご飯作らないとね。リックも食べていってね」
「いや、そこまで世話になる訳には……」
「遠慮しないで食べていって」

 アンが言うとリックはじゃあ……と食べることにして、リックはせめて……と思い、先程捕まえて捌いたウサギ肉を渡す。

「いいの?これは貴方の食料でしょう?」
「タダで食べる訳にはいかないからさ。良かったら使って」
「そう?わかった……じゃあ、このお肉でシチューにしましょうか」

 リックはシチューと聞くとぐうと盛大にお腹が鳴った。
 アンはそんなリックにふふっと小さく笑い、笑われたリックは恥ずかしく顔を赤くして俯いた。

「お腹が空いたのね。早く作るわね」
「あ……あぁ」

 アンはさっそくエプロンをして材料を用意する。
 玉ねぎ、じゃがいも、人参、ウサギ肉、ミルク、キノコなど。
 野菜を切り煮込む。
 徐々に出来上がっていくとたちまち美味しそうないい匂いが漂ってきた。

「もう少しで出来るわよ」
「あぁ」

 最後にミルクを入れてシチューが完成。
 アンは出来たシチューをお皿に盛り、テーブルに置くと外にいるリーンを呼びに行く。

「リーン、ご飯出来たから一緒に食べましょ」
「……分かった」

 アンとリーンが家の中に入り、椅子に座る。

「さぁ、食べましょ」
「いただきます」

 リック達はシチューを食べる。
 リックは1口食べると、あまりの美味しさに感動した。
 今までで1番美味しいシチューだった。

「アン、このシチュー美味しいよ」
「ありがとう」

 リックは勢いで、2杯もおかわりしてしまった。

「ご馳走様でした。美味しかった、ありがとう、アン」
「いいえ、どういたしまして」

 ふとリックは窓を見るとすでに夜になっていて真っ暗になっていた。
 アンもそれに気づき、席を立つ。

「布団の用意してくるわね」
「あ……何から何まですまない。ありがとう……代わりに皿を洗うよ」
「あら、大丈夫よ……でも、そうしてくれたら助かるわ」

 アンは布団の用意してる間にリックは皿を洗う。
 皿を洗ってるとリーンが横に立つ。

「洗ったら渡せ。拭くから」
「わかった」

 リックは丁寧に皿を洗い、洗い終わるとリーンに渡す。
 その光景を布団の用意を終えたアンが見て、ニコッと笑った。

「リック、リーン。ありがとう……布団の用意が終わったからそろそろ寝ましょうか」

 部屋に入ると2つのベットと布団が並べてあり、リックは布団に入る。
 ふかふかの布団に気持ちよくてリックは今すぐにでも寝てしまいそうだった。

「電気消すわね」

 アンは電気を消す。

「リック、リーン。おやすみなさい」
「おやすみ……アン、リーン」
「……おやすみ」

 こうして3人は眠りについた。 
 
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