聖域を守る少女

敵襲

それは突然だった。
　アン、リック、リーンが眠りにつき、まだ朝日も登らない真夜中のことだった。
　アンが何かに気づきハッと起きると既にリーンも起き上がっていた。
　
「アン」
「えぇ、分かってるわ。結界が破られた」
「アンはここにいろ」

　そう言ってリーンはそばに置いてあった刀を取り、外に出る。
　アンは寝ているリックの所へと行く。
　どうやらまだ夢の中のようだった……起こそうか迷ったがまだ結界を破った者が何者か分からないし、リーンが様子を見て来ている。
　何かあったら連絡してくるだろうと思い、とりあえず、まだ起こさないで様子を見ることにした。

　しばらく経ったがリーンから連絡が来ない……どうしたのかとアンは外に様子を見ようと玄関に向かうところだった。
　ドンッと凄い音が辺りに響き、アンは音がした外へと急いで出る。
　するとそこには様子を見に行ったリーンが何者かと戦っていた。

「リーン！！」
「アン！逃げろ！」

　リーンが叫ぶ。
　だが、敵が早かった……敵がアンに切りかかろうとする。
　アンは思わず目を瞑ってしまった……その時だった。

「アン！！」

　声の主はリックだった。
　手を引っ張られギリギリ、アンは切られずにすむが、アンはリックと一緒後ろへと倒れ込んでしまった。
　敵は止まらずアンに切りかかろうとすると思わずリックはアンを守ろうと前へと出るがそれでも敵は構わず、そのまま刀を振り下ろそうとする。

　殺られる！！

　そう思ったリックだが、寸前にリーンが息を切らしながら敵の刀を受け止める。

「ちっ……」

　敵が舌打ちをする。
　リックはその場に尻もちを着いた状態で呆然としているとリーンがリックに話しかける。

「リック、アンを連れて出来るだけ遠くに逃げてくれ」
「え……でも、リーンはどうするんだ！？」

　なんでこうなっているのか分からないが、今の状況はアンは今、目の前にいる人物に命を狙われていて、リーンがその人物と戦っているのが分かる。
　見た限りでは相手はフードを被っていて表情は見えないが、ただならぬ雰囲気を持っていて、素人でも強いと分かる。

「リーン……」
「必ず後で行きます」

　リーンはそう言う。
　アンは不安だったがきっとリーンなら大丈夫だと言い聞かせる。

「……約束よ、必ず後で来てね」
「はい」

　リーンが返事をすると同時にアンがリックの手を取り走り出す。
　リックはいきなり手を握られ、驚いている間にアンに引っ張られる形で走り出す。
リーンは2人が走り出したのを確認して前にいる敵に向かっていく。

「それで逃がしたつもりか？私の他にもう1人、あの2人を追いかけて行った奴がいるのは気づいてるよな？」
「あぁ……」

　リーンは最初からこの結界の中に入ってきたのが2人組だと気づいていた。
　だが、今の自分の力では恐らく目の前の敵で精一杯だろう……。
　上手くあの場所へと行ければ逃げ切れるはず……リーンはどうか無事でたどり着いて欲しいと願いながら敵へと向かっていく。
　
　その頃、アンとリックは森の中を走っていた。
　リックはよく分からないままアンの後を追いかけるように走る。
　そしてアンもまた2人組だと気づいていて、だからこそアンはあの場所へと向かっていた。
　森の中では結界を何重にも掛けてあるため、自分達の場所を感知するには時間がかかるだろう……しかしいずれは見つかる……アンは後ろから着いてきてるリックを気にしながら走り続けた。