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◆11 強者には中々勝てない
しおりを挟むパーティーという貴族達の集まりに参加するのは、憑依後初めての経験だ。ダンテの記憶でも、最後まで会場に残っていたパーティーは両親がいた時だけだ。
引きこもりもあって貴族達との交流などは全然してこなかった。だが、公爵という爵位を持っているし、これから領地経営や事業を進めるにあたって必要なものだと思っている。だからここで人脈を作っておくのもいいかもしれない。
とはいえ、ダンテのこの噂と今までの事を考えると周りは話しづらいだろう。俺から話しかけるしかない、という事か。
さて、どうしたものか。
「あらあら、こんなところでブルフォード公爵とお会いできるなんて思ってもみませんでしたわ」
いきなり声をかけられたかと思うと……相手はメドアス夫人だった。この人には以前話しかけられた事がある。ダンテの記憶からすると、この人は言い方は悪いが胸糞悪く癪に障る面倒臭い人らしい。もちろんダンテ本人は声をかけられてもガン無視で去っていったが。
この人の噂は、興味のないなダンテですら耳に入ってくるくらいだ。夫人は旦那がいるにもかかわらず気に入った男性を落としまくってるらしい。まごう事なく不倫である。
挨拶をするといきなり近づいてきては俺の腕に抱き着いてくる。以前は睨みつけてスルーされたが、前と違った俺のこの対応に目を付けたらしい。完全に俺をロックオンしたようだ。おっきな胸をむぎゅっと押し付けやがって。そんなものは興味がないのだが。俺はゲイなんでね。
「とっても素敵な瞳……今まで隠れていたのが勿体ないくらいですわ」
「……お褒めいただき光栄です」
「ねぇ公爵様? 私、もっと公爵様とお話したいですわ。勿論……」
耳元で囁こうとしていた夫人を避けた。そんな誘惑、他の男共には効果的だったとしても、俺には効かないぞ。
「そういえば、貴方の夫であるメドアス伯爵殿は最近新しい商品を出したと聞いています。ロゼワイン、でしたよね。メドアス伯爵殿の作るワインは一流ですからね。つい私もロゼワインを購入してしまいましたよ、ははっ」
遮って旦那の話を持ち出し、話してる最中に手を外した。そのせいで夫人は不満気な顔を浮かべている。近くにいると夫人の香水が鼻につくな。俺の苦手な香りだ。これだと絶対服にまで付いただろ、最悪だ。
「伯爵は今どちらに?」
「……お忙しい身ですので、今日は私だけですの。だから、一人だと寂しくって……もしよかったら……」
「そうですか、実に残念です。伯爵と話が出来るのではないかと期待をしていたのですがね」
「……」
不満気な顔が怒っているように見えてくるが、放ったらかしにしている旦那の話を持ってきたのだから怒るに決まっている。それに、これは遠回しで旦那を放ったらかしにしてお前は何をしてるんだ、という意味にもなる。それは彼女にも十分伝わったようだ。
ではこれで失礼、と戦場から離脱……するはずだったが、今度はまた女性がやって来た。
「ごきげんよう、ブルフォード卿」
「……ご機嫌麗しゅう」
まさかのとあるご夫人だ。名前は聞いたことがあるが、交流はない。俺の事を知っていて話しかけてきたのだから、何か奥がありそうだが……
「今夜のパーティーはブルフォード卿もご招待されているとお聞きしましたの。パーティーではお会いする機会は全然ございませんでしたから、もしお会い出来たらお話したいと思っていましたのよ」
「そうでしたか」
そりゃそうだろうな。そもそもパーティーに行ってなかったんだから。
だが、何故だろうか。これは逃げられそうにないなと悟ってしまったのは。俺を見据えるこの視線か。逃がさんぞとでも言っているように見える。
「今度、仲の良いご夫人達とお茶会を開こうと思っていますの。公爵様も一緒にいかがです?」
「私が参加するとご迷惑が掛かってしまいますから、ご遠慮させてください」
「そんなことございませんわ。ぜひ公爵様のお話を聞きたいですわ」
「ご夫人達の中に未婚の男が一人いると、旦那さんが嫉妬してしまいますよ」
「でしたら、ウチの旦那も一緒に参加させましょうか。それなら問題ありませんわよね?」
……これは、断れないな。何自分の旦那を勝手に連れてこようとしてるんだよ。
「ね?」
「……分かりました」
笑顔を浮かべ俺を見る視線。絶対に断るなという眼光を光らせるご夫人に、最初から俺には勝機など微塵もなかったようだ。
「はぁぁぁぁぁぁ……」
やる、と脱いだ上着を御者に渡し、早々に馬車に乗り込んだ。苦手な香水の匂いで気分が悪くなっていたから、十分に匂いが付いてしまった上着を馬車の中に持ってくるのは嫌だったんだが……邪魔だったか。すまん。
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