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一章 一ノ瀬兄弟
夜の長電話
しおりを挟む一ノ瀬航は車を駐車場に停めて、家の窓を見上げた。
誰もいないので電気はついていない。出張で他県に来ていて一人暮らしだから、当たり前。疲れた身体を引きずって階段を上って、鍵を開ける。靴を適当に脱いで、電子レンジで冷凍パスタを温める。
部屋の電気をつけた。部屋の壁に義弟・凛の写真が貼ってある。
「ただいま、凛……お兄ちゃん、今日も疲れたよ……」
壁で楽しそうに微笑む凛の写真に、こつんとおでこを当てる。今日も凛は、可愛い。とっても、とっても、可愛い。
パスタのソースが服についたら嫌だから、家用の服に着替えて、ジャケットをハンガーにかける。お気に入りのスーツ、着心地の良いドレスシャツ、凛からもらった大事なネクタイ。
電子レンジが鳴った。スマホも鳴った。画面を見ると、凛からの電話だった。即座に出る。
『えへへ、お兄ちゃん……ねえ、今何してるの?』
「今からごはんだよ。凛は?」
『んんー……何でもない。ごはん邪魔したくないから、切るね』
「ごはんなんてどうでもいいよ。僕は何よりも凛の方が大事」
本気でそう言ったら、冗談だと思われたようで凛がふふふ、と笑った。航はパスタをレンジから持ってきてテーブルに置いて、ソファに座る。
「ねえ、カメラつけて。顔見たい」
『…………うん』
ぱっと画面が明るくなって、枕に顔を埋める凛が映った。長いまつ毛、とろんととろけたたれ目。口元のほくろ。心なしか顔が赤い。少し見える上半身は前開きのパジャマを着ている。一見普通に寝転がっているだけ。でも、兄弟だから分かる。
「凛、今エッチな事してるの?」
『な、な、な、なんで!?』
「絶対してるよね。はい、下半身も映して」
『ううー……ひ、ひかないでお兄ちゃん!』
凛がほっぺたを膨らませて頬を赤く染めながら、スマホを持って下半身を映す。案の定、いやらしい恰好をしている。今日の下着はフロント部分に穴が開いたように縫われたビキニである。後ろは普通なのに、前は丸出し。凛の性器は少しふっくらとしていて、ぷるぷると震えながら布団にこすりつけられていた。
「可愛いよ、凛」
『あっ……そ、そんな事言われたら……!』
「いいよ。お兄ちゃん、ご飯を食べながら凛のオナニー見てあげる」
航はスマホをまっすぐ見つめる。凛が恥ずかしそうに目をそらす。それでも見つめる。凛の手が性器を握り、ふにふにと触る。息遣いがどんどん荒くなっていく。
航はパスタをフォークで巻き取って口に運んだ。赤いソースがついて舐められる指、唇を舐めとる舌、麺を噛む前歯。何だかとても性的に見えた。
凛の手が一生懸命上下に動いて、性器をこする。瞳がとろんとして、はふ、はふ、とひと際荒い息が漏れる。それを航はじっと見ていた。
「あれ、お兄ちゃんまだ食べてるのに一人でいっちゃうの?」
『だ、だって……でちゃう。あん、お兄ちゃんの食べる所、えっち……』
「普通に食べてるだけだよ。あー、残念。お兄ちゃん、ごはん食べたら凛を見ながらしようと思ってたんだけどな……」
『うううー、我慢する! お兄ちゃんと一緒にしたい……』
凛は涙目で枕に頬ずりをする。死ぬほど可愛かった。本当はもう今にも出てしまいそうなのに、一緒にしたくて我慢する凛。健気な凛、可愛い凛。
『ねえ、お兄ちゃん……キスして……』
凛がうつ伏せになって、スマホに顔を近づけた。目を閉じて、だんだん近寄ってきて、スマホの画面に唇が押し当てられた。航もそこにそっと唇を当てた。スマホの画面のガラスは、少し冷たくて無機質だった。
遠く離れた所にいる、大好きなあの子とキスをしている。正直食べた直後に自慰をするのはきついけれど、それだけで航もできそうな気がしていた。
「凛を抱きしめたいな。背中に手を回して、ぎゅ、ってしたい……」
『俺も……お兄ちゃんに頭撫でてもらって、キスして……えっちな事したい……』
「……凛」
『お兄ちゃんがいないと、さびしい』
枕に顔を埋めて、凛はぽつりとそう言った。少しだけ肩が震えていた。本当は今にも抱きしめてその背を撫でたい。大丈夫だよって言いながら頭を撫でたい。でも、遠くにいるのだ。そんな事できるわけがなかった。手を伸ばしても、届かない。絶対、届かない。
「凛、なるべく早く帰ってくるから、待ってて。何とかならないか会社にずっと聞いてるんだけど、なかなか戻れないんだ……」
『ううん、あんまり無理しないで。迷惑かかっちゃう……俺、ちゃんと待ってるよ。だから、だから……』
凛が枕から顔を上げた。涙が頬を星のように流れていく。航の胸がきゅん、と締めつけられる。悲しくて切なくて、でも興奮した。凛が、僕の事を考えて、泣いている……!
我ながら最低だな、と思いつつ性器を下着から出して扱く。まるで凛の泣き顔で自慰をしているようだった。
「凛……お待たせ。一緒にしよっか」
『うん……お兄ちゃん、あのね……だいすき……!』
凛はうつぶせのまま、性器をシーツにこすりつけて、左手の人差し指と中指を体内に挿れた。くにくに、と前立腺をこすりながら、腰を動かす。右手は性器を握りしめ、上下にこする。それを見ていたら航もたまらなくなる。まるで、一緒に握りながら扱きあっているみたいだった。
「凛、イくよ……」
『んっ、んっ、イこ……いっしょにイこぉ……!』
ビクンと凛の身体が震えて、ぴゅっぴゅ、と精液が顔に飛ぶ。航もまたスマホの画面に精液を盛大にかけてしまった。
『わ、顔にかかった……って、お兄ちゃんスマホに出したの!? すごい……画面どろどろで何も見えないよ』
「……凛の顔にぶっかけちゃった」
『も、もう! お兄ちゃんったら!!』
ウェットティッシュでぬぐうと、精液の隙間から頬を膨らませる凛の顔が見えた。全部ふき取って、ティッシュで仕上げ磨きをすると、やっと凛が全部映った。やっぱり凛は今日もとっても可愛い。明日もきっと可愛いよ。
そこからお風呂実況・歯磨き実況をして、トイレ実況をしようとしたら凛が恥ずかしがったので一旦棚の上にスマホを置いて待ってもらう。パジャマに着替えて、ベッドに入った。
冷たいシーツに身体を横たえて、その横にスマホを置く。真っ暗な部屋、うすぼんやりとした明かりの中、微笑む凛が映っていた。
『なんか一緒に眠ってるみたいだね』
「そうだね」
『ふふ、お兄ちゃん……すき……』
航は目を閉じる。凛の声を聞いていると、本当に隣に凛がいるみたいだった。手を繋いで、一緒に寝ているような、そんな気がした。
いつしか本当に二人は眠りに落ちて……一ノ瀬兄弟の夜の長電話は終わった。
夜の空にミレーが描いたような碇星が光っていた。
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