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第二部 一章「暗躍の魔女」
★序章★
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炎の魔銃使いクロト。風の魔銃使いイロハ。そして情報屋のネアも加わる。
ネアが持ち込んだのは南の大国『盾の国・ヴァイスレットに魔女がいる』という情報。更にその魔女から『ヴァイスレットに魔王が攻め込む』という予言。
唐突な魔女からの誘い。そして魔界では十三魔王の一体――六番席魔王セントゥールが動き出す。
盾の国で起こるは予言通りの人と魔の攻防戦。争いの火種は【厄災の姫】。
人が、魔族が、エリーにへと殺意を向けた時、世界を脅かす呪われた星が天を覆う。
王都崩壊を防ぐ一番の方法は――少女を殺すこと。
「お前が望んだのは、本当にこんな世界を壊すことかよ!」
戦火の中、クロトが選んだのは……
生き残りたくば魔王を凌ぎ、呪われた少女を止めよ。
【厄災の姫と魔銃使い】第二部 ヴァイスレット編 開幕
**********************
その時、私は夢を見た……。
夢の中の内容はその時のみで覚めたら忘れてしまう泡沫のもの。
そのせいか、夢を見ている間はそれが異常なまでに焼き付いて頭から離れられなくなる。
私の周囲には――なにもない。
けして、姿形がないというわけではなく、なにもないのと同じような光景ばかりが広がっていた。
殺風景な大地。水もなく、緑もない。荒れた荒野とも違う。土は乾ききり命を宿してなどいない。
どこまでも続く、死した大地の上で私は呆気にとられていた。
『どうして生きているの……?』
『私たちを殺すの?』
呆然とした空っぽの頭に投げかけられるのは、私を卑しく思い嫌悪する、恐れた声だ……。
姿は見えず、ただ声だけが私に投げられる。
『あの時に死んでいればよかったのに』
周囲から響く声は私の死を望んだ。
心を抉る言葉の数々に、空っぽな思考にも関わらず悲しさで涙が溢れてくる。
無だった頭の中で、なにかが蠢いて這い上がってくるようだ。
私はこの時なにを思い浮かべているの?
私はなにを考えているの?
体から力が抜け、苦しさに胸をおさえる。
私はその苦しさだけにしか気が向かず、頭の中は別で勝手な行動をしていた。
その無意識とが混ざり合った時、抑えきれない衝動が一気に私を支配していく。
――それは、否定だった。
周囲の言葉を否定した。
なぜ私が死ななければならない?
なぜ私が嫌われなければならない?
なぜ私を殺そうとする……?
その声を今すぐ止めて。
その言葉を止めて。
その嫌悪を私に向けないで。
それ以上私を壊さないで。
否定し続け、最後に放たれた言葉は何重にも重なって、私の心にとどめをさした。
『『――産まれてこなければよかったのに』』
――……。
その時、心が砕けた音が聞こえた。
脆いガラス細工を壊すように、いとも容易く行われた残酷な言葉という名の暴力。
私は直後なにかを言い返したような気がした。
なにを言ったかなど、覚えていない。それからは周囲は静かになって束の間の平穏が訪れる。
だが、壊れた心はそんなことでは癒えず、むしろ悪化させた。
死した大地を眺め、私は思いだしてしまった。
この地を作ったのは、私だ。……と。
頭の中でそれを肯定する声が響く。
私が壊した。
私が殺した。
私が否定した。
私が消した。
「やめてぇっ。私は、そんなこと……したくない。こんなこと、望んでないのにぃ」
それを私は、更に否定を重ねて耳を塞ぐ。
流れ落ちる涙は大地に付く前に掻き消えていく。
なぜこんなことになってしまったのか、と、私は天を見上げ凝視する。
空は夜でもないのに暗く、異様なものを浮かばせていた。
――黒い、七つの星……。
禍々しく輝く星は私を見下ろし、私はそれに無意識で手を伸ばした。
たぶん、助けを求めたのかもしれない。
この苦しみから解放されるための願いを私はその星に、なんの考えもなしに絶叫をあげて思いを伝えた。
ネアが持ち込んだのは南の大国『盾の国・ヴァイスレットに魔女がいる』という情報。更にその魔女から『ヴァイスレットに魔王が攻め込む』という予言。
唐突な魔女からの誘い。そして魔界では十三魔王の一体――六番席魔王セントゥールが動き出す。
盾の国で起こるは予言通りの人と魔の攻防戦。争いの火種は【厄災の姫】。
人が、魔族が、エリーにへと殺意を向けた時、世界を脅かす呪われた星が天を覆う。
王都崩壊を防ぐ一番の方法は――少女を殺すこと。
「お前が望んだのは、本当にこんな世界を壊すことかよ!」
戦火の中、クロトが選んだのは……
生き残りたくば魔王を凌ぎ、呪われた少女を止めよ。
【厄災の姫と魔銃使い】第二部 ヴァイスレット編 開幕
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その時、私は夢を見た……。
夢の中の内容はその時のみで覚めたら忘れてしまう泡沫のもの。
そのせいか、夢を見ている間はそれが異常なまでに焼き付いて頭から離れられなくなる。
私の周囲には――なにもない。
けして、姿形がないというわけではなく、なにもないのと同じような光景ばかりが広がっていた。
殺風景な大地。水もなく、緑もない。荒れた荒野とも違う。土は乾ききり命を宿してなどいない。
どこまでも続く、死した大地の上で私は呆気にとられていた。
『どうして生きているの……?』
『私たちを殺すの?』
呆然とした空っぽの頭に投げかけられるのは、私を卑しく思い嫌悪する、恐れた声だ……。
姿は見えず、ただ声だけが私に投げられる。
『あの時に死んでいればよかったのに』
周囲から響く声は私の死を望んだ。
心を抉る言葉の数々に、空っぽな思考にも関わらず悲しさで涙が溢れてくる。
無だった頭の中で、なにかが蠢いて這い上がってくるようだ。
私はこの時なにを思い浮かべているの?
私はなにを考えているの?
体から力が抜け、苦しさに胸をおさえる。
私はその苦しさだけにしか気が向かず、頭の中は別で勝手な行動をしていた。
その無意識とが混ざり合った時、抑えきれない衝動が一気に私を支配していく。
――それは、否定だった。
周囲の言葉を否定した。
なぜ私が死ななければならない?
なぜ私が嫌われなければならない?
なぜ私を殺そうとする……?
その声を今すぐ止めて。
その言葉を止めて。
その嫌悪を私に向けないで。
それ以上私を壊さないで。
否定し続け、最後に放たれた言葉は何重にも重なって、私の心にとどめをさした。
『『――産まれてこなければよかったのに』』
――……。
その時、心が砕けた音が聞こえた。
脆いガラス細工を壊すように、いとも容易く行われた残酷な言葉という名の暴力。
私は直後なにかを言い返したような気がした。
なにを言ったかなど、覚えていない。それからは周囲は静かになって束の間の平穏が訪れる。
だが、壊れた心はそんなことでは癒えず、むしろ悪化させた。
死した大地を眺め、私は思いだしてしまった。
この地を作ったのは、私だ。……と。
頭の中でそれを肯定する声が響く。
私が壊した。
私が殺した。
私が否定した。
私が消した。
「やめてぇっ。私は、そんなこと……したくない。こんなこと、望んでないのにぃ」
それを私は、更に否定を重ねて耳を塞ぐ。
流れ落ちる涙は大地に付く前に掻き消えていく。
なぜこんなことになってしまったのか、と、私は天を見上げ凝視する。
空は夜でもないのに暗く、異様なものを浮かばせていた。
――黒い、七つの星……。
禍々しく輝く星は私を見下ろし、私はそれに無意識で手を伸ばした。
たぶん、助けを求めたのかもしれない。
この苦しみから解放されるための願いを私はその星に、なんの考えもなしに絶叫をあげて思いを伝えた。
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