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第一章 【2人の兄編】
料理長さんとのお話
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僕は、今まででの出来事を出来るだけ細かく話した。レイヴン兄さんにキスされたこと、前世や人格についてグレン兄さんに相談したこと、レイヴン兄さんに色々されたこと。もちろん兄さんに色々された部分だけは掻い摘んで話した。
話が進むに連れ、段々と難しい顔になって行く料理長さんをみるのは少し怖かった。
幻滅されるとか、ふしだらだとか思われるのが怖かった。
「……それで今朝起きたら自分の部屋にいて、起きたらお腹が空いたのでここに来たんです。これで、僕のお話は終わりです」
話が終わると、料理長さんはさらに難しい顔をした。何かを考えている仕草をとって数秒はかなり長い時間に思えた。
そして、ようやく口を開き、出て来た言葉に僕は驚愕した。
「一体何に悩んでいるのか、よく解らないのですが……」
「……え?」
「要するに、レイヴン様とノエル様は両思いと言う事でいいのですよね? さすがに兄弟という壁は高いとは思いますが、特に禁止されているわけでもないですし、兄弟姉妹で結婚する例もあります。なので特に問題はないと思います」
「いや、そこもそうなんですけど、というか別に両思いとか恋愛的な感情は僕にはないですし……じゃなくて、僕はノエルとは違う人格なんですよ?」
「……思ったのですが、ノエル様……いえ、前世のあなたは少し人格というものに固執しすぎていませんか? 人はそれぞれの人格を持っておりますが、時とともに変わって行きます。始めは仲の良かった夫婦が老いて行くうちにいがみ合うようになるようなものです。レイヴン様にとっては、それが早いか遅いかの違いではないでしょうか。人格は違えども、共に過ごした記憶は残っているのですから」
そして料理長さんは再び僕に笑顔を向けた。
その瞬間、僕の中で何かが弾け飛び、解放されるような感覚が全身を襲った。
一人寂しい密室のドアを開けられたような、そんな感覚。
ドアの向こうから伸びる手はとても暖かく、優しく僕の手を掴み引っ張り出してくれたんだ。
「……ありがとうございます、料理長さん。僕、わかった気がします」
いつの間にか溢れ出た涙をぬぐい、鼻声ながらに感謝の言葉を伝えた。
「いえ、お役に立てて何よりです」
そう言って僕の頭を優しく撫でた。柔らかく温かいその手のひらは、僕にこの上ない安心感を与えてくれた。
「さ、早く食べてください! 温かいうちに食べないと、勿体無いですよ」
「はい! いただきます!」
話が進むに連れ、段々と難しい顔になって行く料理長さんをみるのは少し怖かった。
幻滅されるとか、ふしだらだとか思われるのが怖かった。
「……それで今朝起きたら自分の部屋にいて、起きたらお腹が空いたのでここに来たんです。これで、僕のお話は終わりです」
話が終わると、料理長さんはさらに難しい顔をした。何かを考えている仕草をとって数秒はかなり長い時間に思えた。
そして、ようやく口を開き、出て来た言葉に僕は驚愕した。
「一体何に悩んでいるのか、よく解らないのですが……」
「……え?」
「要するに、レイヴン様とノエル様は両思いと言う事でいいのですよね? さすがに兄弟という壁は高いとは思いますが、特に禁止されているわけでもないですし、兄弟姉妹で結婚する例もあります。なので特に問題はないと思います」
「いや、そこもそうなんですけど、というか別に両思いとか恋愛的な感情は僕にはないですし……じゃなくて、僕はノエルとは違う人格なんですよ?」
「……思ったのですが、ノエル様……いえ、前世のあなたは少し人格というものに固執しすぎていませんか? 人はそれぞれの人格を持っておりますが、時とともに変わって行きます。始めは仲の良かった夫婦が老いて行くうちにいがみ合うようになるようなものです。レイヴン様にとっては、それが早いか遅いかの違いではないでしょうか。人格は違えども、共に過ごした記憶は残っているのですから」
そして料理長さんは再び僕に笑顔を向けた。
その瞬間、僕の中で何かが弾け飛び、解放されるような感覚が全身を襲った。
一人寂しい密室のドアを開けられたような、そんな感覚。
ドアの向こうから伸びる手はとても暖かく、優しく僕の手を掴み引っ張り出してくれたんだ。
「……ありがとうございます、料理長さん。僕、わかった気がします」
いつの間にか溢れ出た涙をぬぐい、鼻声ながらに感謝の言葉を伝えた。
「いえ、お役に立てて何よりです」
そう言って僕の頭を優しく撫でた。柔らかく温かいその手のひらは、僕にこの上ない安心感を与えてくれた。
「さ、早く食べてください! 温かいうちに食べないと、勿体無いですよ」
「はい! いただきます!」
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