23 / 40
第21話 ~閑話~ イルの奮闘
しおりを挟む
ケインが莫大な借金返済を決意・奮起してからのイルはがむしゃらに勉強した。このときは小学校に入る前年だったが、知り合いからお古の教科書をかき集めて、入学する頃には、教科書は小学校の全学年分すべてを丸暗記するほどに。
入学してからのイルは、新しく学ぶものが少ない分、とにかく多くの人と接触した。同級生はもちろん、上級生や先生と沢山の会話を持つようになった。持ち前の気さくな話術と、相手の言葉をきちんと理解し相手の立場で考え、相手が返して欲しい言葉、または相手にとっての良い結果に繋がるならばと、敢えて返して欲しくない言葉を返すなど、最善を選び取る思い遣りの態度が、いつしか全校生徒と先生に浸透していくことになる。
イルはどうしてそのような行動を取り始めたのか? それは母を助けたい、実はその一点のみが中核にある。
そのためのお金を稼ぐための方法の模索、そしてそれはひとりで生み出せるものではなく、必ず他の誰かと関わっていかなければ得ることができないこと、また、ストレートに聞いても幼い子供でしかない自分には得たい情報が入ってくることはないこと、などを早期に理解したため、それならば、手間暇は掛かるけれど、多くの会話を持ち、その中から間接的にでも情報収集できるのではないか? それに他者と自分を繋ぐ会話力は、将来に渡っても大きな武器となることと、誰かが自分に話してくれる内容は、その誰かとの間の信用度により内容の濃さが変わること。即ち信用されているだけで多くのことを語ってくれやすくなる。
そしてその信用は多くの会話を重ねた先にしか得られないものであること。そういう思いに至り、将来の自分を思い描いた上での日々のルーティンとして、多くの会話を持つことを組み込むイル。
そうするうちに、自身の考える力がどんどん養われていくことと、自分の話題の振り方一つで、得られる情報も変わっていくことを体感する。
そうして、新入生のイルだったが、いつしか上級生の勉強の悩みも、こじれた男女関係 (小学生だけど)が瞬く間に解決してしまうほどの糸口となるアドバイスも、果ては若い教師の目前にある人生の分岐点の悩みなど、次から次へとなぜか解決へと導いてしまえるイルだった。
もちろん人生経験の稀薄なイルなので、教科書の中身以外でそんな解決策など知るはずはない。
しかし、多くの問題は実は悩む本人の中に隠されていることが多く、本人と同じ目線、立ち位置で、同じ深さまで潜ってモノを考え、そこにある問題が纏う情報構造を一つずつ解きほぐし、なぜ?の本質的な事柄を本人にわかりやすい表現で言葉にして返しただけなのだが、それが自ずと悩める本人に響くらしく、返して欲しかった言葉に感動し納得する、という。
仮に答えが出ないにしても、同じ深さで同調してくれる心の温かさみたいなものと、ズバッと本質を抜き出せるイルの聡明さから、その多くが厚い信頼と、もう他人とは思えないほどの親近感を抱くのだという。
そうして、イルの毎日は、人生相談のようなものを繰り返し、皆から愛される存在となっていった。
当のイルは、他の人にとってはどうでもいいような他愛ない悩みであっても、時に有用な情報が潜んでいる場合があることを、一連の活動を重ねるうちに気付いてしまう。沢山の会話の中から、お金を稼ぐための知識に繋がる情報の欠片を拾い上げては、スクラップブックに書き連ねていく。
時々、それぞれのピースがうまく重なることがある。一つ一つの中身は他愛なくても、複数が重なり合うことで、一つの情報が見えてくるのだ。
その結果が、たとえゴミ情報だったとしても、その過程は意外に愉しいものだと思えるようになってきているイルがいた。まさに諜報活動そのものとも言える見事な仕事ぶりだ。
なので、イル自身はまだ何の稼ぎも得られていないのが現状だが、このままこの国に居続けた場合、数年後にはきっと何かしらの稼ぎのメソッドを確立していそうな、そんな活動振りだった。
入学してからのイルは、新しく学ぶものが少ない分、とにかく多くの人と接触した。同級生はもちろん、上級生や先生と沢山の会話を持つようになった。持ち前の気さくな話術と、相手の言葉をきちんと理解し相手の立場で考え、相手が返して欲しい言葉、または相手にとっての良い結果に繋がるならばと、敢えて返して欲しくない言葉を返すなど、最善を選び取る思い遣りの態度が、いつしか全校生徒と先生に浸透していくことになる。
イルはどうしてそのような行動を取り始めたのか? それは母を助けたい、実はその一点のみが中核にある。
そのためのお金を稼ぐための方法の模索、そしてそれはひとりで生み出せるものではなく、必ず他の誰かと関わっていかなければ得ることができないこと、また、ストレートに聞いても幼い子供でしかない自分には得たい情報が入ってくることはないこと、などを早期に理解したため、それならば、手間暇は掛かるけれど、多くの会話を持ち、その中から間接的にでも情報収集できるのではないか? それに他者と自分を繋ぐ会話力は、将来に渡っても大きな武器となることと、誰かが自分に話してくれる内容は、その誰かとの間の信用度により内容の濃さが変わること。即ち信用されているだけで多くのことを語ってくれやすくなる。
そしてその信用は多くの会話を重ねた先にしか得られないものであること。そういう思いに至り、将来の自分を思い描いた上での日々のルーティンとして、多くの会話を持つことを組み込むイル。
そうするうちに、自身の考える力がどんどん養われていくことと、自分の話題の振り方一つで、得られる情報も変わっていくことを体感する。
そうして、新入生のイルだったが、いつしか上級生の勉強の悩みも、こじれた男女関係 (小学生だけど)が瞬く間に解決してしまうほどの糸口となるアドバイスも、果ては若い教師の目前にある人生の分岐点の悩みなど、次から次へとなぜか解決へと導いてしまえるイルだった。
もちろん人生経験の稀薄なイルなので、教科書の中身以外でそんな解決策など知るはずはない。
しかし、多くの問題は実は悩む本人の中に隠されていることが多く、本人と同じ目線、立ち位置で、同じ深さまで潜ってモノを考え、そこにある問題が纏う情報構造を一つずつ解きほぐし、なぜ?の本質的な事柄を本人にわかりやすい表現で言葉にして返しただけなのだが、それが自ずと悩める本人に響くらしく、返して欲しかった言葉に感動し納得する、という。
仮に答えが出ないにしても、同じ深さで同調してくれる心の温かさみたいなものと、ズバッと本質を抜き出せるイルの聡明さから、その多くが厚い信頼と、もう他人とは思えないほどの親近感を抱くのだという。
そうして、イルの毎日は、人生相談のようなものを繰り返し、皆から愛される存在となっていった。
当のイルは、他の人にとってはどうでもいいような他愛ない悩みであっても、時に有用な情報が潜んでいる場合があることを、一連の活動を重ねるうちに気付いてしまう。沢山の会話の中から、お金を稼ぐための知識に繋がる情報の欠片を拾い上げては、スクラップブックに書き連ねていく。
時々、それぞれのピースがうまく重なることがある。一つ一つの中身は他愛なくても、複数が重なり合うことで、一つの情報が見えてくるのだ。
その結果が、たとえゴミ情報だったとしても、その過程は意外に愉しいものだと思えるようになってきているイルがいた。まさに諜報活動そのものとも言える見事な仕事ぶりだ。
なので、イル自身はまだ何の稼ぎも得られていないのが現状だが、このままこの国に居続けた場合、数年後にはきっと何かしらの稼ぎのメソッドを確立していそうな、そんな活動振りだった。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
私は私で幸せになりますので
あんど もあ
ファンタジー
子爵家令嬢オーレリーの両親は、六歳年下の可憐で病弱なクラリスにかかりっきりだった。
ある日、クラリスが「オーレリーが池に落ちる夢を見た」と予言をした。
それから三年。今日オーレリーは、クラリスの予言に従い、北の果ての領地に住む伯爵令息と結婚する。
最後にオーレリーが皆に告げた真実とは。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる